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竜殺しの剣(4)
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(前は、このことは墓場まで持って行く秘密にしようと思ってたけど……)
ジクジクとするこの胸の痛みは、きっと無視してはいけない。
「……私の世界には、自分が勇者になって魔物を倒すゲームがあったんです」
速くなる鼓動を感じながら、口にする。
「私もそれをやってました……それも、数多く」
私はギルの反応に注意を払って、
「ああ」
だから彼がポンッと手を打った音に、ついビクリと身体を震わせてしまった。
「それでサラは触媒と聞いてすぐピンと来たし、冒険者ギルドの存在もパッと出て来たのか」
しかしギルの口調は、随分と軽いノリで。しかも純粋に感心した的な言い方で……あれ? 思ってた反応と違う。
「えっと……ギルは、私がそういうゲームをしていても、何とも思わない……の?」
恐る恐る、聞いてみる。藪蛇かもしれないが、気になってしまう。
けれどギルは「ん?」と、わかっていないような返事をして。そして彼は少し間が空いてから、「あっ」と声を上げた。
「何だ、そんなことを気にしていたのか。別にゲームでそうしていたからって、咎めやしないさ。こっちでも盤上の駒を取る奴があるが、あれは人間同士の殺し合いを模して作られているらしい。だからといって、そのゲームが好きな奴が殺人狂ってわけじゃない」
ギルの片手が、私の頭をポンポンと撫でる。
私は横向きに座り直して、彼を見上げた。
言葉通りの、まったく気にした素振りのないギルの顔がそこにあった。
(またギルは、そんなあっけらかんと言って、私を救うんだ)
カルガディウムで、私を好きだと言ってくれたときのことを思い出す。
そう言ってもらって、心から嬉しかったこと。
それから、
「好き」
ギルにそう、伝えたいと思ったこと。
「え?」
「ギルが、好きです」
ギルの肩に手を掛け、私は背を伸ばして彼にキスをした。
「!?」
ギルが目を丸くて、
驚いたせいか仰け反って、
そして――
ガタターンッ
「きゃっ」
彼は椅子から転げ落ちた。
「痛た……自分の重力操作し忘れた」
「だ、大丈夫ですか?」
私の下敷きになったギルが、寝そべったまま自分の肩を摩る。派手な音がした割りに、私には僅かの衝撃も無かった。彼が重力操作してくれたおかげらしい。
「サラからされると思わなくて、びっくりした」
「!」
さっきは丸くしていた、深い青の瞳が細められる。
見慣れない、彼の笑顔を見下ろすという状況に、私は自分の今の状態に気付いた。
(お、押し倒してる、私!)
慌てて退こうとして、けれどそれを腰に回されたままだったギルの手に妨害される。
「あの、ギル……あ」
もう片方の彼の手が私の頭の後ろに回って、それは私を真下にある彼の顔に引き寄せた。
ふっと、触れるだけのキスをする。
「さっきの、もう一回言って。サラ」
近過ぎて、表情が見えないギルが囁く。
「ギルが、好き」
けれど、私もギルも、お互いどんな顔をしているのか、知っているような気がした。
「ありがとう。俺も、サラが好きだ……」
ジクジクとするこの胸の痛みは、きっと無視してはいけない。
「……私の世界には、自分が勇者になって魔物を倒すゲームがあったんです」
速くなる鼓動を感じながら、口にする。
「私もそれをやってました……それも、数多く」
私はギルの反応に注意を払って、
「ああ」
だから彼がポンッと手を打った音に、ついビクリと身体を震わせてしまった。
「それでサラは触媒と聞いてすぐピンと来たし、冒険者ギルドの存在もパッと出て来たのか」
しかしギルの口調は、随分と軽いノリで。しかも純粋に感心した的な言い方で……あれ? 思ってた反応と違う。
「えっと……ギルは、私がそういうゲームをしていても、何とも思わない……の?」
恐る恐る、聞いてみる。藪蛇かもしれないが、気になってしまう。
けれどギルは「ん?」と、わかっていないような返事をして。そして彼は少し間が空いてから、「あっ」と声を上げた。
「何だ、そんなことを気にしていたのか。別にゲームでそうしていたからって、咎めやしないさ。こっちでも盤上の駒を取る奴があるが、あれは人間同士の殺し合いを模して作られているらしい。だからといって、そのゲームが好きな奴が殺人狂ってわけじゃない」
ギルの片手が、私の頭をポンポンと撫でる。
私は横向きに座り直して、彼を見上げた。
言葉通りの、まったく気にした素振りのないギルの顔がそこにあった。
(またギルは、そんなあっけらかんと言って、私を救うんだ)
カルガディウムで、私を好きだと言ってくれたときのことを思い出す。
そう言ってもらって、心から嬉しかったこと。
それから、
「好き」
ギルにそう、伝えたいと思ったこと。
「え?」
「ギルが、好きです」
ギルの肩に手を掛け、私は背を伸ばして彼にキスをした。
「!?」
ギルが目を丸くて、
驚いたせいか仰け反って、
そして――
ガタターンッ
「きゃっ」
彼は椅子から転げ落ちた。
「痛た……自分の重力操作し忘れた」
「だ、大丈夫ですか?」
私の下敷きになったギルが、寝そべったまま自分の肩を摩る。派手な音がした割りに、私には僅かの衝撃も無かった。彼が重力操作してくれたおかげらしい。
「サラからされると思わなくて、びっくりした」
「!」
さっきは丸くしていた、深い青の瞳が細められる。
見慣れない、彼の笑顔を見下ろすという状況に、私は自分の今の状態に気付いた。
(お、押し倒してる、私!)
慌てて退こうとして、けれどそれを腰に回されたままだったギルの手に妨害される。
「あの、ギル……あ」
もう片方の彼の手が私の頭の後ろに回って、それは私を真下にある彼の顔に引き寄せた。
ふっと、触れるだけのキスをする。
「さっきの、もう一回言って。サラ」
近過ぎて、表情が見えないギルが囁く。
「ギルが、好き」
けれど、私もギルも、お互いどんな顔をしているのか、知っているような気がした。
「ありがとう。俺も、サラが好きだ……」
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