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何故か王子とのデートイベントが起きました。(3)
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「ヴィオ。足元に気を付けて」
そんな絆されてしまうと定評のある笑顔で、手を差し出される。
「……ありがとうございます」
本物の王子様の定番な台詞でのエスコート、悪くない。……場所が漁船ではあるが。
「ここに座って」
リヒト王子が投網の合間の隙間を指し示す。投網に囲まれた令嬢……シュールだ。しかし、一段高くなったそこを椅子のように使えるので、確かに船の中では一番座り心地が良さそうではある。きっと王太子殿下が同乗する際にも、ここへ座られるのだろう。(令嬢の私以上にシュールである)
私は指定されたとおり、投網と仲良く同席した。
一方、リヒト王子は、船の中央付近でどっかり胡座をかいて座った。綺麗な船体ではあるが、この王子は例えイカ墨で真っ黒でも意に介しなさそうだ。それくらいナチュラルに、彼は床に直に座った。
「狙って釣るつもりなら早朝や夕方の時間帯がベストだけど、昼にまったりするのもいいよね」
「そうおっしゃるからには、ちょくちょくここへは来られているのですね」
「うん。自慢じゃないけど、僕は上手いよ?」
頻繁に城を抜け出していることを暗に指摘した私に、それをわかっているだろうにリヒト王子が気付かないふりで釣りについて返してくる。まったく自然な態度だ、違和感がない。あざと可愛いは最強だな。(二回目)
リヒト王子が、鼻歌交じりで各釣り道具の状態をチェックする。
チェックが終わり、手慣れた手つきで釣り竿に餌を取り付ける王子。擬似餌ではなく生き餌なので、うにょうにょしている。この世界での名称は知らないが、水田を豊かにする赤く糸っぽいあいつに似た虫に見える。
それ、今日の視察の間中持ち歩いていた小箱の中に入っていましたよね? どうやら私が船に乗りたい顔をしていなくても、彼的に本日は釣り日和だったようである。
膝を支えに頬杖をついて、リヒト王子の作業を眺める。と、その私に向かって彼は手にしていた釣り竿を「はい」と差し出してきた。そうしながら、彼の視線はもう一本の釣り竿に向けられている。
――待って。これ、私も釣るの?
「海に出ないでここから釣る分には小魚しか掛からないから、ヴィオでも大丈夫だと思うよ」
言いながら、やはりリヒト王子はこちらを見ていない。その台詞からも、私がここで釣り竿を受け取るのが、さも当然のように思っていることが窺える。
うにょる生き餌付きの釣り竿を前にした令嬢。この状況において、彼の考える私の戸惑った理由がどうして「私にも釣れるかしら?」の一択なのか。彼の中での私の印象は一体。
「……ありがとうございます」
何だか思うところはあるが、彼も自分の釣り竿の準備を早くしたいだろう。私は素直に受け取った。
そんな絆されてしまうと定評のある笑顔で、手を差し出される。
「……ありがとうございます」
本物の王子様の定番な台詞でのエスコート、悪くない。……場所が漁船ではあるが。
「ここに座って」
リヒト王子が投網の合間の隙間を指し示す。投網に囲まれた令嬢……シュールだ。しかし、一段高くなったそこを椅子のように使えるので、確かに船の中では一番座り心地が良さそうではある。きっと王太子殿下が同乗する際にも、ここへ座られるのだろう。(令嬢の私以上にシュールである)
私は指定されたとおり、投網と仲良く同席した。
一方、リヒト王子は、船の中央付近でどっかり胡座をかいて座った。綺麗な船体ではあるが、この王子は例えイカ墨で真っ黒でも意に介しなさそうだ。それくらいナチュラルに、彼は床に直に座った。
「狙って釣るつもりなら早朝や夕方の時間帯がベストだけど、昼にまったりするのもいいよね」
「そうおっしゃるからには、ちょくちょくここへは来られているのですね」
「うん。自慢じゃないけど、僕は上手いよ?」
頻繁に城を抜け出していることを暗に指摘した私に、それをわかっているだろうにリヒト王子が気付かないふりで釣りについて返してくる。まったく自然な態度だ、違和感がない。あざと可愛いは最強だな。(二回目)
リヒト王子が、鼻歌交じりで各釣り道具の状態をチェックする。
チェックが終わり、手慣れた手つきで釣り竿に餌を取り付ける王子。擬似餌ではなく生き餌なので、うにょうにょしている。この世界での名称は知らないが、水田を豊かにする赤く糸っぽいあいつに似た虫に見える。
それ、今日の視察の間中持ち歩いていた小箱の中に入っていましたよね? どうやら私が船に乗りたい顔をしていなくても、彼的に本日は釣り日和だったようである。
膝を支えに頬杖をついて、リヒト王子の作業を眺める。と、その私に向かって彼は手にしていた釣り竿を「はい」と差し出してきた。そうしながら、彼の視線はもう一本の釣り竿に向けられている。
――待って。これ、私も釣るの?
「海に出ないでここから釣る分には小魚しか掛からないから、ヴィオでも大丈夫だと思うよ」
言いながら、やはりリヒト王子はこちらを見ていない。その台詞からも、私がここで釣り竿を受け取るのが、さも当然のように思っていることが窺える。
うにょる生き餌付きの釣り竿を前にした令嬢。この状況において、彼の考える私の戸惑った理由がどうして「私にも釣れるかしら?」の一択なのか。彼の中での私の印象は一体。
「……ありがとうございます」
何だか思うところはあるが、彼も自分の釣り竿の準備を早くしたいだろう。私は素直に受け取った。
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