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ヒロインに突撃しま――されました。(1)
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昨日の港町での決意を胸に、私は学園内で『あな届』のヒロイン――モニカを探していた。
リヒト王子ルートの初回イベントは、学園の一階に集中している。私が在籍するAクラスからモニカがいるはずのDクラスまで見ても、彼女の姿は無かった。なので今は、一階にある特別教室を一つずつ見て回っているのだが……。
(見当たらない……)
ゲームでは直接的な接点のなかったヴィオレッタとモニカ。これはもしや、私も彼女と会えないのでは。
(いやいや。構内は広いから、彼女じゃなくても普段から探してる人がなかなか見つからないことはあるし)
そうだ、初回から弱気になってどうする。
終業のベルとともに探しに出たけれど、私がDクラスへ行くまでにモニカが帰宅してしまった可能性もある。同クラスの生徒に彼女を探している旨の言付けはした。もし今日捕まらなくても、明日には会えるかもしれない。
それに案外、こうやって歩いているうちに「こんなところに」ってことも――
「ああっ、こんなところに!」
そう、そんな感じで――――ん?
頭の中で考えていただけのはずの台詞が何故か耳に届いて、私は反射的に声のした方へと振り返った。
(えっ、本当にモニカ?)
少しくせ毛なセミロングの髪に、パッチリと大きな目。その両方は、この世界ではよく見かける栗色。でもって、同年代女性の平均的身長に平均的な体型ときて、男爵家のお嬢さんだけど庶民派な人柄。
うん。平凡を前面に出したいという公式の意向が、ビシバシ伝わってくる。そしてそれが狙い通りか偶然か、『手の届きそうな美少女』という絶妙な容姿を作り出している。
美少女。そう、美少女だ。この容姿で平凡なわけないだろう。まあそれは大体の乙女ゲームのヒロインに該当する案件ではあるが。
「初めまして、私、モニカ・アヴェレージと言います。ヴィオレッタ・テウトリカ様ですよね!」
観察しているうちに傍まで来ていたモニカが、元気よく私に挨拶してくる。
そういえばモニカの家名は「アヴェレージ」だったか。って、アヴェレージって平均て意味じゃん。公式の平均へのこだわり……!
「こちらこそ初めまして、ヴィオレッタ・テウトリカよ。私に何か御用かしら?」
何とか冷静に返すも、私は正直動揺していた。
ゲームにおいてヴィオレッタとモニカは接点がなかった。だからシナリオから外れたい私は彼女を訪ねることにしたのだ。
それなのに、モニカは私を探していたなんて。ゲームに描かれなかっただけで、実は二人は個人的にも知り合っていたのだろうか。
(あ、Dクラスの子から伝言を聞いたのかも)
てっきり伝えられるのは明日だと思い込んでいた。でもモニカはまだ構内にいたわけで。入れ違いになった彼女が私を探しに来ても、おかしくはない。
「あの、テウトリカ様。実はお聞きしたいことがありまして」
「ヴィオレッタで結構よ。何かしら?」
両手を胸の前で組んだモニカが、私を見上げてくる。彼女の台詞からして、どうやら伝言を聞いて追いかけてきたわけではなさそうだ。
聞く構えを取った私に、彼女は嬉しそうにその用件を口にした。
リヒト王子ルートの初回イベントは、学園の一階に集中している。私が在籍するAクラスからモニカがいるはずのDクラスまで見ても、彼女の姿は無かった。なので今は、一階にある特別教室を一つずつ見て回っているのだが……。
(見当たらない……)
ゲームでは直接的な接点のなかったヴィオレッタとモニカ。これはもしや、私も彼女と会えないのでは。
(いやいや。構内は広いから、彼女じゃなくても普段から探してる人がなかなか見つからないことはあるし)
そうだ、初回から弱気になってどうする。
終業のベルとともに探しに出たけれど、私がDクラスへ行くまでにモニカが帰宅してしまった可能性もある。同クラスの生徒に彼女を探している旨の言付けはした。もし今日捕まらなくても、明日には会えるかもしれない。
それに案外、こうやって歩いているうちに「こんなところに」ってことも――
「ああっ、こんなところに!」
そう、そんな感じで――――ん?
頭の中で考えていただけのはずの台詞が何故か耳に届いて、私は反射的に声のした方へと振り返った。
(えっ、本当にモニカ?)
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うん。平凡を前面に出したいという公式の意向が、ビシバシ伝わってくる。そしてそれが狙い通りか偶然か、『手の届きそうな美少女』という絶妙な容姿を作り出している。
美少女。そう、美少女だ。この容姿で平凡なわけないだろう。まあそれは大体の乙女ゲームのヒロインに該当する案件ではあるが。
「初めまして、私、モニカ・アヴェレージと言います。ヴィオレッタ・テウトリカ様ですよね!」
観察しているうちに傍まで来ていたモニカが、元気よく私に挨拶してくる。
そういえばモニカの家名は「アヴェレージ」だったか。って、アヴェレージって平均て意味じゃん。公式の平均へのこだわり……!
「こちらこそ初めまして、ヴィオレッタ・テウトリカよ。私に何か御用かしら?」
何とか冷静に返すも、私は正直動揺していた。
ゲームにおいてヴィオレッタとモニカは接点がなかった。だからシナリオから外れたい私は彼女を訪ねることにしたのだ。
それなのに、モニカは私を探していたなんて。ゲームに描かれなかっただけで、実は二人は個人的にも知り合っていたのだろうか。
(あ、Dクラスの子から伝言を聞いたのかも)
てっきり伝えられるのは明日だと思い込んでいた。でもモニカはまだ構内にいたわけで。入れ違いになった彼女が私を探しに来ても、おかしくはない。
「あの、テウトリカ様。実はお聞きしたいことがありまして」
「ヴィオレッタで結構よ。何かしら?」
両手を胸の前で組んだモニカが、私を見上げてくる。彼女の台詞からして、どうやら伝言を聞いて追いかけてきたわけではなさそうだ。
聞く構えを取った私に、彼女は嬉しそうにその用件を口にした。
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