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4話 ルイスの境遇
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セシリアは地方貴族の出身だった。
中央貴族と違い、金銭的にも裕福とは決して言え
ない。
平民ほどではないにしろ、普通の貴族のようにな
んでも無造作に買うお金などないはずだった。
代わりに攻略対象にドレスやアクセサリーを買っ
て貰い、パーティーに出る事が必須だ。
その為にも、歓迎パーティーまでには1着でもド
レスをプレゼントして貰う為に、好感度を上げな
ければならないのだが……。
「セシリア、さっき第一王子が探してたけど?」
「ジェイムスくん?うん、なんかずっとしつこい
のよね~!」
「えっ、しつこいって……、歓迎パーティー用の
ドレスあるの?」
「あるわよ、お母さんの形見があるわ。私はそれ
を着て出るの!」
まさか、そんな展開になるとは思わなかった。
必ず攻略対象からプレゼントされなければ行けな
いのだと思っていた。
いや、そう設定したはずだった。
これは裕太達がプログラムした内容のはずだ。
なのに、キャラ達が勝手に動き出してしまってい
た。
「どうなってるんだ?」
「ルイスくん、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。そっかドレス持ってる
ならよかったよ」
「ルイスくんは着て行く服ある?なかったらお父
さんのでも貸そうか?」
「大丈夫だよ、僕はきっと……」
参加できないのだから…。
パーティーの初めに国王の挨拶があるのだ。
そこで第二王子の顔など見たくないと参加をし
ないようにと言い渡されていたからだった。
それが国王自身の言葉なのか、王妃の言葉なの
かは定かではない。
だからルイスはその日部屋から出てはいけない
のだ。
昔は仲のよかった兄とも、会っていない。
話す事さえも許されていないのだ。
その理由はきっと王妃の命令だと思う。
妾の子であるルイスに王城を彷徨かれては困るし、
家臣たちに、余計な考えをさせないためだろう。
聖女であるセシリアは皇后にも気に入られ、それ
をルイスは良く思わなかったはずだった。
でも、今のルイスはそんな事を考える事はしない。
なぜならば、無事に生きて成り行きを見守りたい
からだった。
「歓迎パーティー、気をつけていってきて。もし、
女性達から誘われても付いてっちゃダメだよ?
いいね?」
「なんだかルイスくん、お母さんみたい~。ふふ
っ分かったわ。じゃ~、パーティーでね!」
そう言って、立ち去って行く。
これでいい。
あまり関わらない方がいい。
ルイスは部屋に戻ると、食事が運ばれて来るまで
部屋の中でおとなしくしていたのだった。
夜遅くにやっと使用人が運んできた食事は質素な
物だった。
硬いパンとシャビシャビのスープ。
いつもの事ながら、これが王族の食事なのだろう
か?
それでも、叱られるよりはまだマシだった。
今日は、歓迎パーティーと題してセントラルアカ
デミーの講堂で盛大なパーティーが開催される事
になっていた。
きっと豪勢な食事も出ている事だろう。
クローゼットには一応、質素だが、しっかりした
生地の正装が仕舞われている。
使用人が着付けてくれるわけではないので、自分
で着れば行けない事もない。
チラリと食事を眺めると、考えなおしたくもなる
ほどの雑な食事に一瞬とある考えが頭をよぎった。
「ちょっとくらい見に行くだけなら……」
ルイスはクローゼットを開けると自分で着替えた
のだった。
中央貴族と違い、金銭的にも裕福とは決して言え
ない。
平民ほどではないにしろ、普通の貴族のようにな
んでも無造作に買うお金などないはずだった。
代わりに攻略対象にドレスやアクセサリーを買っ
て貰い、パーティーに出る事が必須だ。
その為にも、歓迎パーティーまでには1着でもド
レスをプレゼントして貰う為に、好感度を上げな
ければならないのだが……。
「セシリア、さっき第一王子が探してたけど?」
「ジェイムスくん?うん、なんかずっとしつこい
のよね~!」
「えっ、しつこいって……、歓迎パーティー用の
ドレスあるの?」
「あるわよ、お母さんの形見があるわ。私はそれ
を着て出るの!」
まさか、そんな展開になるとは思わなかった。
必ず攻略対象からプレゼントされなければ行けな
いのだと思っていた。
いや、そう設定したはずだった。
これは裕太達がプログラムした内容のはずだ。
なのに、キャラ達が勝手に動き出してしまってい
た。
「どうなってるんだ?」
「ルイスくん、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。そっかドレス持ってる
ならよかったよ」
「ルイスくんは着て行く服ある?なかったらお父
さんのでも貸そうか?」
「大丈夫だよ、僕はきっと……」
参加できないのだから…。
パーティーの初めに国王の挨拶があるのだ。
そこで第二王子の顔など見たくないと参加をし
ないようにと言い渡されていたからだった。
それが国王自身の言葉なのか、王妃の言葉なの
かは定かではない。
だからルイスはその日部屋から出てはいけない
のだ。
昔は仲のよかった兄とも、会っていない。
話す事さえも許されていないのだ。
その理由はきっと王妃の命令だと思う。
妾の子であるルイスに王城を彷徨かれては困るし、
家臣たちに、余計な考えをさせないためだろう。
聖女であるセシリアは皇后にも気に入られ、それ
をルイスは良く思わなかったはずだった。
でも、今のルイスはそんな事を考える事はしない。
なぜならば、無事に生きて成り行きを見守りたい
からだった。
「歓迎パーティー、気をつけていってきて。もし、
女性達から誘われても付いてっちゃダメだよ?
いいね?」
「なんだかルイスくん、お母さんみたい~。ふふ
っ分かったわ。じゃ~、パーティーでね!」
そう言って、立ち去って行く。
これでいい。
あまり関わらない方がいい。
ルイスは部屋に戻ると、食事が運ばれて来るまで
部屋の中でおとなしくしていたのだった。
夜遅くにやっと使用人が運んできた食事は質素な
物だった。
硬いパンとシャビシャビのスープ。
いつもの事ながら、これが王族の食事なのだろう
か?
それでも、叱られるよりはまだマシだった。
今日は、歓迎パーティーと題してセントラルアカ
デミーの講堂で盛大なパーティーが開催される事
になっていた。
きっと豪勢な食事も出ている事だろう。
クローゼットには一応、質素だが、しっかりした
生地の正装が仕舞われている。
使用人が着付けてくれるわけではないので、自分
で着れば行けない事もない。
チラリと食事を眺めると、考えなおしたくもなる
ほどの雑な食事に一瞬とある考えが頭をよぎった。
「ちょっとくらい見に行くだけなら……」
ルイスはクローゼットを開けると自分で着替えた
のだった。
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