第二王子に転生したら、当て馬キャラだった。

秋元智也

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14話 潜入はメイドさんで

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待っている時間はすごく長く感じた。

中から声をかけられ、治療が終わった事を知った。

「ルイスっ!」

「まだ眠っているが、一応治療は終わったよ。ただ、
 こう何回も何回も大怪我してきては、治療の速度
 も段々遅くなってしまうのは知っているかい?そ
 もそもヒールも、万能じゃないんだ。自己治癒力
 を最大限に引き出すもので、身体が弱り切ってい
 れば治す事もできない」

言っていることは理解しているつもりだった。

こう、何度も傷だらけになっていてもらっては困る。
ジェイムスにとって、ルイスは大事な弟であって、
大事な相手でもあったからだ。

そうでなければイタズラであんな事はしない。

さっきまで腫れていた腕はもう、すっかり元に戻って
いて、あらぬ方に骨が出ているところも無くなってい
た。

「どうしたらルイスを守れるんだ……」

「ルイスのお母さんって病気なんでしょ?前に容体を
 聞いてたじゃない?会わせてはあげられないの?」

セシリアにとっては素朴な疑問だったが、それが意外
と難しい問題でもあったのだ。

婦人の寝室は王宮の奥で、王の寝室に近い。

ルイスに折檻しているのは多分王妃側の人間だろう。
となると、問題は王はどう思っているのかと言う事
だった。

もし、王も同じ考えなら、見つかればただじゃ済ま
ない。

「それは……難しいんだ。」

「そんな遠い場所なの?私が代わりに会いにいくわ」

「セシリア、そう言う事じゃなくて………」

「だって、会いたいけど、会えないような場所にい
 るんでしょ?なら、私が行ってもいいじゃない?
 そんなに危険なの?」

「それは……ルイスが行って見つかればもしかした
 ら死ぬ事になるかもしれない…」

ジェイムスなら何にもお咎めはないだろう。

いや。ジェイムスと一緒についているメイドも……。

「そうだ、その手があったか!セシリアさすがだな、
 ルイスが目覚めたら、すぐに会いにいくぞ」

そう言うと、メイド服を1着用意させたのだった。



暫くして、ジェイムスが戻って来る少し前に、ルイ
スが目を覚ましたのだった。

「ルイスくん!起きた?大丈夫?」

心配そうに眺めてきたセシリアに驚くと、部屋では
ない事に気づく。

確か部屋で身動きが取れずそのまま眠ってしまった
とこまでは覚えている。

それから、誰かフードを被った怪しげな人が来て…
そして……。

「ジェイムス殿下っ!」

「ルイスくん?酷い怪我だったって聞いたわ。骨も
 折れてたって、一体何があったの?誰かに虐めら
 れてるの?」

「それは……」

虐めと言えばいじめだが、相手が悪い。
この国の王妃なのだ。
誰も逆らう事のできない、そんな存在なのだ。

「まだ我慢できるから……大丈夫……」

自分に言い聞かせるように言ったルイスに、
セシリアはいきなり声を荒げたのだった。

「我慢なんかダメ!嫌なら嫌って言わなきゃ。
 こんな事繰り返してたら、いつか死んじゃう
 よ!」

「セシリア……それでも、僕にはどうしようも
 ないんだ」

悲しそうに言うルイスに、セシリアは苦しそう
な顔を向けてくる、まるで自分の事の様に泣き
出したのだった。

一番泣きたいにはルイスの方だったが、こんな事
で泣くわけにもいかない。

「ルイス、泣きたい時は泣いた方がいい。この能
 天気な女のように不細工になっても構わないぞ」

そう言ってきたのは、さっき来たばかりのジェイ 
ムスだった。

手にはメイド服を持って、今から何をするのかが
気になる出立ちだった。



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