第二王子に転生したら、当て馬キャラだった。

覚醒編

7話 呪解

ルイスの母親であるエリスがいる部屋へとやって
きていた。
呪いのせいで痩せて骨ばっている体は、見ていて
痛々しかった。

まるでルイスをアカデミーで見つけた時のようだ
った。
いやそれよりも酷いかもしれない。

ジェイムスの母親に折檻され、兵士からも暴行を
受けていたあの時もこんな気持ちになった。

ジェイムスはルイスに寄り添うと、抱き寄せる手
に力を込めた。

「ルイス……」

「大丈夫だよ、兄さん……。ちゃんと見てて」

床に膝を着くと両手を絡め胸の辺りで固く握り
締める。
セシリアが初めて治療したのは傷ついた野うさ
ぎだった。

目の前の対象に魔力を包むイメージでゆっくり
と満たしていく。

普通のヒールは免疫を高め、自己回復機能を一
気に押し上げる効果がある。

だから何度も行えば、自己回復機能も低下して
いってしまうという副作用が起こる。

だが、聖女が使う魔法は別格なのだ。
あらゆるものを治療してしまう。

常に浄化も同時にかかるので、その後膿む心配
もない。

そして自己治癒を無視して何もなかったように
してしまうのだ。

出血の場合、ヒールは見た目治っていても血は
足りないままだ。

だが。聖女の祈りは何もかもが元通りになるの
だった。
いや。全てが一番いい状態へと誘われる。

教会で言うなら神の奇跡とも言える行為なのだ。

莫大な料金を請求するに値する効果が見込めるの
だから、信者が群がる訳だった。
信者から絞れるギリギリまで搾り取るのが教会の
悪い癖だ。

ルイスは自分の中にある魔力を感じるとゲームの
時のように動かしていく。

ルイスはミニゲームはどれも優良を叩き出してい
たのだ。

だから今回も心配などしていない。

周りで見守る王と、ジェイムス兄さんには、奇跡
を見ているようにしか見えなかった。

光が治るまで1時間もかかった。

ゆっくりと光が消えると、顔色の悪かったエリス
の血色も良くなり、体温も平常に戻っていた。

ゆっくり瞼を開くエリスに、父王の綻ぶ顔が浮か
んだ。

初めて使ったが、ミニゲームはさほど難しくはな
い。
問題は終わった後の倦怠感だった。

ジェイムスに抱かれた時でもここまで疲れはしな
かった。

それにいち早く気づいたのはジェイムスだった。

「ルイスっ……大丈夫か？無理をしてないか？」

「うん……少し休めば平気……ちょっと疲れちゃ
　ったかな……」

そう言いながらも、足が震えいてしているのに気
付いた。

もう魔力が尽きかけていたのだ。

初めての呪解と、ハイヒールの連続で、1時間も
の間ずっとかけ続けたのだ。

もうちょっと魔力の使い方を学んでからのがよか
ったかもしれない。

実際に、セシリアの時は小動物だったし、あっと
いう間だった。

「でも……母さんが無事でよかっ……」

ふらっとジェイムスの腕の中へと倒れ込むと、す
ぐに医者を呼ばれたのだった。