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Draw your desires(願いを描け)【四階】
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「こわ……!」
次の教室には、英語が書いてあった。
『Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.』
「……同じだ、願望を絵に描け……」
ショウマは英語が得意なので、描かれた英語の意味がすぐにわかった。
「やっぱり、あの美術室で……自分の欲しいものを描かなきゃいけないんだ」
「正確に、間違いなく、描かなきゃいけないんだったら、お金の写真とか……何か参考にするものがないと……絵なんか描けないよ」
「地球とか、日本の地図とかあったらいいかも?」
「あ、そうか。綺麗なままの地球が望みとか……平和な日本とかね。本物の六年三組だったら、世界地図も日本地図もあったのにな……」
二人は六年三組の教室を覗いてみた。
「また望みを描けって? 黒板に描いてある?」
「いや、これは……」
だけど、そこには何故か黒板に違う文字が描かれている。
『六年三組、卒業おめでとうございます』
エマの心がギュッとなる。
「どうして、ここだけ? 卒業って……」
「なんで……」
ショウマが不思議そうに眺めている。
「これは……僕らを脱出させてくれるっていう意味かな?」
「怪異の嫌がらせだよ、きっと」
「どういうこと?」
「わかんないけど……なんか見て、嫌な気持ちになるもん」
「なんか綺麗にデコって可愛いけどね。……卒業式かぁ……ちゃんと卒業できるように、ここからしっかり脱出しないとね」
「うん……」
「中学の制服着て、卒業式に出るの楽しみだよね」
小学校の卒業式には、次に通う中学校の制服を着るのが、一般的だった。
「ショウマ、次の教室に行こう」
ショウマの言葉を遮って、エマはショウマの手を引っ張った。
「地図探しは?」
「私、描くものを決めたから、いらない」
「え、なに?」
「ショウマを描く」
「僕? どういう事さ」
「だから願いでしょ? ショウマが願いって事でいいと思う」
「えっ……? 僕? 僕がエマの願い??」
ショウマの頬が赤くなった。
「やっ……えっと、あの! そういうんじゃなくって! 違くって!!」
エマも焦って頬が赤くなる。
手をバタバタさせて否定する。
「わ、わかってるよエマ。一緒に脱出する相手が僕だもんね」
「そう! そう……そう。それに目の前に、モデルがいるんだもん! 最高でしょ!」
また頭が痛くなる。
きっと恥ずかしいからだ、とエマは思う。
「確かにモデル……僕っていう現物があるから、しっかり描けるし、願いの意味にも当てはまる。さすがだよエマ!」
「でしょ!?」
「うん、すごい、すごい」
「えっへん!」
頭がすごく痛いけど、エマは笑って答えた。
二人は美術室へ戻る。
「なんだかモデルなんて恥ずかしいな」
イーゼルで円形に囲まれた真ん中には、モデル用の円形の台があった。
そこに椅子を置いて、ショウマが座る。
「動かないで座っててよ」
「うん」
「……心配なのは、消しゴムが無いってこと……」
つまりは、やり直しがきかないという事に違いない。
「美術の時間に習ったみたいに、薄~~くさ、あたりを描いて……」
「ほんとはショウマの方が、絵が上手なのにな」
運動系はエマ、美術や頭脳系はショウマ、と小さな頃から決まってる。
「じゃあ、僕がエマを描こうか?」
「えっ」
「僕が描いてもいいんじゃないかなって思うんだけど……」
「でも……」
「ん?」
「私にやらせて」
「……エマがいいなら任せるよ」
「うん、がんばるから」
「うん、わかったよ」
エマのデッサンが始まった。
「ショウマはあっち向いてて、こっち見てたら、なんか描きにくい」
「わ、わかった」
ショウマにじっと見つめられて、エマが慌てて言う。
ふーっと息を吐いて、絵を描こうとすると今まで入ってこなかったノイズ生徒たちがフラフラと美術室に入ってくる。
「やだ……なに」
「エマ。集中、集中」
「うん……」
そうは言われても、美術室にワラワラと群がってくるノイズ生徒たちは気持ち悪い。
数人が、なんと同じように椅子に座ってイーゼルでショウマを描き始めた。
とはいっても、適当にガリガリと動かしているだけだ。
なんだか焦ってしまって、エマが鉛筆を滑らせた。
「あっ……」
ショウマの絵に余計な線が入る。
すると……エマの右足がノイズのように変化する。
「きゃあああああ!!」
「エマあああああああ!!」
「あ、足が!! 私の足がノイズにーーーー!!」
少しのミスも許されない、死のデッサンが始まった。
次の教室には、英語が書いてあった。
『Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.Draw your desires.』
「……同じだ、願望を絵に描け……」
ショウマは英語が得意なので、描かれた英語の意味がすぐにわかった。
「やっぱり、あの美術室で……自分の欲しいものを描かなきゃいけないんだ」
「正確に、間違いなく、描かなきゃいけないんだったら、お金の写真とか……何か参考にするものがないと……絵なんか描けないよ」
「地球とか、日本の地図とかあったらいいかも?」
「あ、そうか。綺麗なままの地球が望みとか……平和な日本とかね。本物の六年三組だったら、世界地図も日本地図もあったのにな……」
二人は六年三組の教室を覗いてみた。
「また望みを描けって? 黒板に描いてある?」
「いや、これは……」
だけど、そこには何故か黒板に違う文字が描かれている。
『六年三組、卒業おめでとうございます』
エマの心がギュッとなる。
「どうして、ここだけ? 卒業って……」
「なんで……」
ショウマが不思議そうに眺めている。
「これは……僕らを脱出させてくれるっていう意味かな?」
「怪異の嫌がらせだよ、きっと」
「どういうこと?」
「わかんないけど……なんか見て、嫌な気持ちになるもん」
「なんか綺麗にデコって可愛いけどね。……卒業式かぁ……ちゃんと卒業できるように、ここからしっかり脱出しないとね」
「うん……」
「中学の制服着て、卒業式に出るの楽しみだよね」
小学校の卒業式には、次に通う中学校の制服を着るのが、一般的だった。
「ショウマ、次の教室に行こう」
ショウマの言葉を遮って、エマはショウマの手を引っ張った。
「地図探しは?」
「私、描くものを決めたから、いらない」
「え、なに?」
「ショウマを描く」
「僕? どういう事さ」
「だから願いでしょ? ショウマが願いって事でいいと思う」
「えっ……? 僕? 僕がエマの願い??」
ショウマの頬が赤くなった。
「やっ……えっと、あの! そういうんじゃなくって! 違くって!!」
エマも焦って頬が赤くなる。
手をバタバタさせて否定する。
「わ、わかってるよエマ。一緒に脱出する相手が僕だもんね」
「そう! そう……そう。それに目の前に、モデルがいるんだもん! 最高でしょ!」
また頭が痛くなる。
きっと恥ずかしいからだ、とエマは思う。
「確かにモデル……僕っていう現物があるから、しっかり描けるし、願いの意味にも当てはまる。さすがだよエマ!」
「でしょ!?」
「うん、すごい、すごい」
「えっへん!」
頭がすごく痛いけど、エマは笑って答えた。
二人は美術室へ戻る。
「なんだかモデルなんて恥ずかしいな」
イーゼルで円形に囲まれた真ん中には、モデル用の円形の台があった。
そこに椅子を置いて、ショウマが座る。
「動かないで座っててよ」
「うん」
「……心配なのは、消しゴムが無いってこと……」
つまりは、やり直しがきかないという事に違いない。
「美術の時間に習ったみたいに、薄~~くさ、あたりを描いて……」
「ほんとはショウマの方が、絵が上手なのにな」
運動系はエマ、美術や頭脳系はショウマ、と小さな頃から決まってる。
「じゃあ、僕がエマを描こうか?」
「えっ」
「僕が描いてもいいんじゃないかなって思うんだけど……」
「でも……」
「ん?」
「私にやらせて」
「……エマがいいなら任せるよ」
「うん、がんばるから」
「うん、わかったよ」
エマのデッサンが始まった。
「ショウマはあっち向いてて、こっち見てたら、なんか描きにくい」
「わ、わかった」
ショウマにじっと見つめられて、エマが慌てて言う。
ふーっと息を吐いて、絵を描こうとすると今まで入ってこなかったノイズ生徒たちがフラフラと美術室に入ってくる。
「やだ……なに」
「エマ。集中、集中」
「うん……」
そうは言われても、美術室にワラワラと群がってくるノイズ生徒たちは気持ち悪い。
数人が、なんと同じように椅子に座ってイーゼルでショウマを描き始めた。
とはいっても、適当にガリガリと動かしているだけだ。
なんだか焦ってしまって、エマが鉛筆を滑らせた。
「あっ……」
ショウマの絵に余計な線が入る。
すると……エマの右足がノイズのように変化する。
「きゃあああああ!!」
「エマあああああああ!!」
「あ、足が!! 私の足がノイズにーーーー!!」
少しのミスも許されない、死のデッサンが始まった。
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