【完結】ハーフ☆ブラザー その瞳もこの唇も、僕よりまいさんの方がいやらしいのに?

一茅苑呼

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番外編『邯鄲(かんたん)の夢』

僕の世界の中心は【2】

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「ねぇ……まいさん? 前に僕に、夢や希望を描いて欲しいって、言ってくれたよね?
あれって……もっと自分の世界を広げて、いろんな人と関わったほうが良いっていう意味も、あったんだよね?

だけど、やっぱり僕の世界の中心にあるのは、まいさんでしかなくて。
夢も希望も……未来も、そのすべてにおいて、まいさん抜きでは考えられないんだ。

だって僕は、まいさんが好きで好きで……好きで、たまらなくて。何をしても、どこにいても、まいさんのことで、いっぱいなんだ。

この気持ちをどうやって、まいさんに伝えたらいいのか……どうやったら、とりこぼさずに全部、まいさんに伝えられるのか。毎日、考えているんだよ?」

眉をぎゅっと寄せたまま、涙目でまいさんが僕を見下ろした。

不安と自己嫌悪が交錯した、痛痛しいくらいに美しい表情かおが、そこにはあって。
僕は思わず、自分の耳を覆ったままでいる小さな手に、指を伸ばした。

初めて会った日に、僕の手を握ってくれた、その手のひらを引き寄せる。
やわらかく温かい手は、変わらないのに……僕の手だけが、あの日よりずっと大きくなっている。

───あなたに想いを重ねた分だけ、確実に。

引き寄せた手のひらを、今度は僕が、両手で包みこむ。

僕の気持ちも……このぬくもりと同じように、あなたに伝わるかな?

「だから、ね、顔を上げて。僕を見て。
あなたの瞳に映る僕だけが……僕の真実なんだ。
あなただけしか見えない……他の人からしたら、可哀想なくらい、愚かで滑稽こっけいな生き物で。
だけど、僕自身からすれば、このうえない幸せな日々を生きている、あなたに恋い焦がれる、ただのひとりの男なんだよ」

まいさんは、泣き笑いを浮かべた。小さく、息をつく。

「……よくもまぁ、それだけ口からペラペラと言葉がでてくるわね?」

いつもの憎まれ口に、僕は、ふふっと笑ってみせる。

「まいさんに語る想いなら、何千何万っていう言葉を尽くすよ。
……もっとも、僕の数少ないボキャブラリーじゃ、語り尽くせやしないけどね」

瞬間、まいさんの身体が傾いて、やわらかな唇が僕の唇に押しあてられた。
……まいさんの体温は、なんでこんなに優しいんだろう?

「……いつもアホみたいに語りすぎなのよ、あんたは。言葉も、身体も」

あきれたような物言いなのに、まいさんから向けられる眼差しは、僕を溶かしてしまいそうに、甘い。

だから僕は、いたずらっぽく笑ってみせた。

「じゃあ今度は、身体で語ろうか? まいさん、今夜は眠れないけど、いい?」

握った指先にキスをすると、乱暴に手が振り払われた。

「いいわけないでしょ、バカッ」
「───あれ? いまのまいさんの言葉って、どう考えてもお誘い系だったのに……違うの?」
「どういう変換の仕方してんのよ! あんたの脳みそはっ」

……透さんだけでなく、まいさんからも突っ込まれた僕の脳は、まいさんへの愛情で、できているんだけど。

それはまた、違う機会に語らせてもらおうかな。





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