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断章/蒼篇
あなたは、なにを望んでいるの?【2】
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「あなたは、見つかったの? そういう人」
うつむいて告げる彼女の横顔が、ふいに紗貴と重なって見えた。
紗貴と彼女が似ているなんて、初めから、解っていたのに。
むしろ、彼女が紗貴に似ていたから、あの日、彼女を放っておけなくて。
家まで送り届けて───そして、関係をもったのに。
似てはいても、別人だと、きちんと認識していた。
……だって彼女に感情は、なかったから。
魂の入らない、紗貴に似た人形をおれは抱いていたんだから。
「人形」が意思をもっておれを見た時。
おれから離れていこうとした時。
たまらない憎悪が身のうちに宿って、彼女を傷つける言霊を放たずには、いられなくなった。
───繰り返される裏切りに、たえられなかったからだ。
けれども。
「探すよ、これからね」
前向きな言葉の裏側で、おれは紗貴を想う。
……本当は、とうの昔に、探し当てている。
奪いたくて、壊したくて。
恨んで、憎んで。
優しくしたい想いと、冷たく突き放したい想いの狭間で、ずっと紗貴から返される気持ちを待っていて。
手を伸ばせば届きそうな想いなのに、ちっとも手に入らない。
紗貴。
───あなたは、なにを望んでいるの?
欲しいのは、いつも、あなたの心だけなのに。
応えのない問いかけを、今日もまた、繰り返してる。
《断章・蒼篇/終》
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