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【第二章】
友達でいるから①
しおりを挟む小学校を卒業するまでは《自分を守る方法》を知らなかった。
彼に守られているのが、すべてだった。
その頃はよく、クラスの女子から嫌がらせをされていた。
上履きを隠されたり、買ったばかりの靴に砂を入れられたりなんかは、もう、日常茶飯事だった。
当番制で生徒が配っていた給食も、私だけ極端に少なく盛られていたり、ひどい時はパック牛乳だけの昼食を取ることもあった。
それでも彼に助けられていた私は、なんとか学校に行くことができた。
中学は、いろいろな小学校からいろんなタイプの子が集まり、クラス編成される。
小学校のようなこともなくなるだろうと思い、少し安心していた。
事実、引っ込み思案の私でも、向こうから歩み寄ってくれる子がいたりして、それなりに順調な中学校生活をスタートできていた。
そんなある日。
社会科の授業で担当の先生が注意しないのをいいことに、グミやアメなどの菓子類を、授業中に食べたりする現象がクラス内で起こっていた。
私は、そんなクラスメイトが信じられなくて、仲良くしていた子からアメを勧められても断っていた。
やめようよ、と、言った時もあった。
でも、そんな私を皮肉るように「優等生」と、その子は言い返してきた。
そのうちに私は、クラスのみんなから無視されるようになっていた。
それが悲しくて、どうしたらいいのか分からずに、仕方なく担任に相談をした。
すると、即日中にクラス内で反省会なるものが開かれ、担任と生徒指導の先生から、私のクラスは厳しく注意された。
以来ぱったりと、授業中に飲食する、などという不謹慎なことはなくなった。
けれども、代わりに私を取り囲む環境は、小学校の時のそれに戻っていた……。
§
ピピィーッと、体育館内で、笛の音が高く響いた。
「ファール! チャージング、赤10番。二回目」
その番号をつけた少女が、しらじらしく片手を上げながら横を向く。
私は、ひねった足首を押さえて、冷たい床に正座をくずした格好で座っていた。
───四時限目の体育で行われた、バスケットボールの最中のことだった。
運動が苦手だった私は、できるだけボールから離れるように、コート内を動き回っていた。
前半戦も終わりに近づいた頃。
ドリブルをしながら私の側をすり抜けた子が、ものすごい力で背中を押しやってきて、勢い余って変な体勢で床に転がされてしまったのだった。
「保健委員、いない?」
足首を押さえたまま、立てないでいる私を見て、体育の安藤先生が、生徒たちを見回した。
騒がしかった体育館は、少し静かになった。
体育館の中央で、ネットに仕切られた向こう側。
同じく、体育の授業のバレーボールを行う男子の、掛け声や野次だけが、耳に入ってきた。
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