あやめも知らぬ

 停滞感を振り払いたくて、蓉子は沖縄旅行を決めた。沖縄の日差しと陽気が、靄のようにかかる停滞感を吹き飛ばしてくれると信じたのだ。しかし天候には恵まれなかった。蓉子が沖縄にいる間、空が晴れることはなかった。
 残念に思いながらも帰宅することにしたが、蓉子は帰途、不意に妙な胸騒ぎを覚えた。嫌な予感の正体を探りながら、家へと車を走らせると、家の前には数台の警察車両が停まっていた。聞けば、ある事件の犯人が蓉子の旅行中、庭に忍び込み、遺体を埋めたのだという。
 蓉子の家の庭には、それとは別にもう一体死体が埋まっている。
 愛する人を、蓉子はかつて埋めたのだ。
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