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番外の章
番外編 レナト⑤
しおりを挟むレナトは前回の探索魔法で判明した多くの点が集合する場所へと向かった。
予想した通りそこは人族の町であった。
コミニュティーで学んだ通りの特徴を備えた場所であることからそう考える。
周囲をじっくりと観察していると、見た目だけならばレナトたちと変わらないことがわかる。
知識でしか知らなかった光景が目新しくレナトは夢中になった。
そして、前回の抜け出しで見つけた水場へとコミニュティーの中からなら転移が出来ることも今回試してみて分かった。
これで抜け出しやすくなる。
レナトはそれから何度もコミニュティーを抜け出して外の世界を堪能した。
人族の暮らしや人族の性質を観察する。
レナトら人族以外の種族と比べて圧倒的に脆弱だということも理解した。
魔力の質も悪く量も少ない。
魔法など全く使えないような種族だ。
辛うじて使えたとしても低レベルの魔法が精々では無いだろうか。
そんな脆弱者たちはどうやって自分の身の安全を図ることが出来るのだろう。
脆弱だから数だけは多いのか? 人族は我々の種族よりも総数が圧倒的だ。
大陸には人族だけの国がかなり存在している。
そして魔法が使えない代わりに魔道具というものを使用して生活を補助していることも分かった。
その魔道具というものは質に左右されるらしく、当然のことではあるが質が悪いものは効果も弱く壊れやすいようだ。
レナトが観察していた村では質の良い魔道具というものは観察する限りではないように感じた。
ただ魔道具と一括りにいっても種類が膨大にあるらしい。
少し前に行商に来ていた商人がたくさんの魔道具を所持していた。
その頃には少しの時間だけ人族に混じって町を歩くこともあったので、商人が並べている魔道具を見に行った。
レナトはここにいるどの人族よりも長く生きているがまだ成長途中で、人族に似た見た目でもその姿はただの子供でしかなく、もっと傍で見ようと近づけばシッシと手で追い払われる仕草をされた。
だから、あくまで見るだけであったが。
そのようなことが何度も続けば……
何者かがレナトに気付くのは当然のことだっただろう。
大人数の人族に混じっていても埋もれることのない美貌は目立っていた。
誰もが見たこともないほど美しい容姿の男の子。
何度見かけてもいつもひとりで居て周囲に保護者らしき大人もいない。
だから、悪い人間に目をつけられてしまった。
ある日転移魔法で水場に転移したレナト。
何度もコミニュティーを抜け出してきたが、今まで何も起こらなかった。
慢心が油断を招き、すぐそこに迫っていた危機を呼び込む。
気付いた時には意識がなく。
目覚めて事態を把握した時には、拐かされ見たこともない場所に囚われていた。
それが膨大な魔力を強引に搾取される長い年月の始まりだった。
気の遠くなるほどの時間が過ぎ去ったあと、魔力暴走が起きて死にかけながら転移で逃げ出した。
そこで「ばぁば」としてレティシアと出逢い。救われた。
記憶は断片的でコミニュティーのことも殆ど思い出せず。
精神は幼く思考も稚拙。
ただ本当のことを言えば目の前の優しい人が離れていくことだけは分かった。
そこに執着心が芽生え離れないためにはと行動する。
全てを思い出した。
全てを話せたわけではないが、レナトが話せる範囲で説明はした。
離れてしまう恐怖と戦いながら伝えたソレらは、レティシアにとって離れる理由になることはなかった。
ずっと二人で。
いつまでも二人で旅をしたり好きな町に留まったりして楽しく生きようと。
この優しい手を絶対に離さない。
コミニュティーのことも、高位種族の責務も、遠い過去のことで今のレナトには関係ない。
レナトにはレティシアがすべてになった。
レティシアが王子に復讐したいといえばいくらでもしよう。
レティシアが国を護って欲しいといえばそうしよう。
レティシアが世界が欲しいと言えば手に入れよう。
レナトにはそれが出来る。
レティシアのためならどんなことでも叶える。
空に浮かぶ月も星も、熱く燃え盛る太陽ですら手に入れてみせる。
でも……どこまでも優しいレティシアからは、国を共に護って欲しいとお願いされてしまった。
それがレティシアの願いならばいくらでも。
レナトは今日もレティシアと手を繋ぐ。
何処へ行くにも連れてって欲しいと願った幼子だったレナトの時のように。
ずっと一緒の約束は今日も果たされている。
✂-----------------
レナト番外編は終了です。
ご覧下さいまして有難うございました。
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