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妖編
2.流されるままに♡
しおりを挟む「ん、ん……?」
(どこだろう、ここ……)
嫋が目を覚ます。記憶が混濁しており、視線がキョロキョロと忙しなく動く。
部屋は暗く、明かりの一つもない。
ゆっくりと体を起こそうとするが、その瞬間、あまりの痛みに呻き声を出した。
「いっ! なんか、身体中いたい……!」
朱鷹に抱きしめられ、骨が音を立てて軋んでいたのだ。痛くないはずがない。
嫋は不思議そうな顔をしながら、暗闇の中を見ようと目をこする。すると、自分が何かを持っているのに気づいた。
「羽根……? あっ!」
美しい、艶のある1枚の黒い羽根だ。それを認識した時、嫋の顔は真っ青になった。
(覗き込んだ時に見えた色……!)
朱鷹はオオワシに似た姿をしており、烏のような黒い羽根を持っている。
その中でも輝くように美しい羽根を嫋の手に握らせたのだ。
それはフクロウの求愛であり、その噂を聞いた朱鷹が嫋に向け行った精一杯のアプローチだった。
「自分と番えば、子供はこんなに美しい羽根を持って生まれるだろう」という求愛行動であり、受け取れば番として成立する。
フクロウの求愛を取ったのは、鷲流の求愛行動など、飛ぶことの出来ない嫋相手には不可能だからだ。
度胸と相性試しのために2人で絡まりあって落下し、地面に叩きつけられる寸前に互いの手を離すというものである。
鳥に詳しくのない嫋はそれを知らず、ただ呆然と羽根を見つめることしか出来なかった。
ずる……ずる……
なにかを引き摺る音がする。嫋は音のする方を向き、それを見て思わず肩を跳ねる。
自分の背丈の2倍以上ある大鷲が、その鋭いクチバシで牛を引きずっていた。
「ぁ……ぁ……」
嫋は口をパクパクと開け、その異様な光景に喃語を発することしか出来なくなっていた。
大鷲は牛を離す。嫋の目の前にどさりとそれが転がった。まだ息の根があるのか、ピクピクと動いている。
嫋は恐怖の中で無理やり笑顔をはりつけ、夫となる大鷲を見上げた。
「しゅ、よう、さま……?」
朱鷹は返事をするようにグゥグゥと低い鳴き声を出す。牛を啄んでいたクチバシが嫋の頬を撫でる。
(見ろ、お前のために牛をとってきたぞ! 柔らかそうな牛だ!)
「はひぃっ! ぅぐっ……」
ぬるり、と牛の血と脂が嫋の頬に擦り付けられた。
嫋はその気色悪い肌触りに悲鳴をあげ、とうとう泣き出してしまった。
「ぅあ、ひぐっ……やだ、やだ……かえりだぃ゛~」
(はぁっ? この、この俺が! お前のために狩ってきてやったんだぞ! 食べろ、おい、人間は食べないと死ぬんだろ!?)
バサバサと翼が動き、そのせいで風を受けた嫋がころりと後ろに転がる。大鷲は牛を咥え直し、嫋の口元に押し付けた。嫋は牛の毛皮と熱烈なキスをかましながら、必死になって叫ぶ。
「むぐっ! むり、むりですよぉ! 食べれないですぅ! 焼かないと無理!」
(あっ……)
ぼとり、と牛を落とす。
そうだ、朱鷹は大切なことを忘れていた。人間は生肉を食べることはない。
朱鷹自身は生肉を好むため、すっかり忘れていた。
────
朱鷹は牛に火を通し、嫋が食べれるか中をつついて確認する。嫋はじっとそれを横で眺め、言葉がなくとも朱鷹の行動の意味を察した。
(朱鷹様、私が食べれるように焼いてくれてるのかな。案外、優しい……かも?)
丸焼きになったそれに嫋が戸惑っていると、爪で牛を切られ、そっと嫋の前に出される。
鷲類特有の雄々しい目付きをしながら、様子を伺うように顔を地面に近づけ、嫋を見上げる。
「ふふ、ふふっ。ありがとうございます、朱鷹様。嫋が美味しく頂きますね?」
「……!」
いじらしい様子に笑みをこぼし、驚かせないようそっと朱鷹の羽根に触れる。朱鷹は蕾が開くような笑顔に見惚れ、思わずクワッと口を開く。
(ひぃっ! や、やっぱこわいぃ!)
朱鷹の口の中に人の髪の毛を見つけた嫋は怯え、見なかった振りをして一心不乱に子牛を食した。
嫋はその日、朱鷹に服を摘まれ同じ寝床で寝ることとなった。もふもふと暖かい羽毛が嫋を包む。
怯えながらもその羽根に埋もれて眠ると、不思議な夢を見た。
「ん~……ぁう……んぅっ」
人の指に体をまさぐられる夢だ。後孔に指が入れられ、その慣れた柔らかさにピタリと手が止まる。
「はぅっ……ぁん」
腹側をこりゅこりゅと叩くように擦られ、嫋は全身からぶわりと汗を滲ませた。顔が赤くなり、腰がピクピクと小刻みに跳ねる。
嫋は腰をがに股に広げ、より深く入るようにと無意識のうちに媚びた。
嫋は妓楼を営む義父に育てられたこともあり、女が足りなくなった時には性別を偽って酌を取ることがあった。嫋好みの顔をした客であれば、相手が望む対応もする。
客にその快楽を教えこまれた嫋は口元に笑みを浮かべ、ゆっくりと腰を揺らした。
(もっと……いつもみたいに奥に来て……)
「———淵、さま……」
ぽつりと一人の男の名を呼ぶ。
嫋の体をまさぐっていた男は舌打ちをして、ずるりと嫋の中から指を引き抜いた。
唇を合わせ、男は嫋の口を蹂躙する。先程の優しさなどない、ただ嫋を征服するための口付け。
ぴとり、と嫋の後孔に熱いものがあてられる。その熱に覚えのある嫋は、ハッと目を覚ました。
「ぁっ! むぐっ! んぅう~!」
口を塞がれたままで、嫋は言葉を発することすら出来ない。後頭部をぐっと掴まれ、男がのしかかった体勢で肉棒が押し入ってくる。
太く張ったカリ首に、嫋のナカがめりめりと広げられる。
赤子の腕ほど太さのある肉棒を飲み込むのは苦しく、口をハクハクと開閉する。
ギラギラと血走った目で己を見つめる男が誰かも分からず、嫋は混乱しながらも男の胸板を押す。
男はビクともせず、その目に怒りを燃やしたまま嫋の中に押し入った。
ずぷっ、ぬぷぷ……こちゅんっ♡
「んむ゛ッ♡♡ んぅ~……♡」
男の亀頭が嫋の1番奥、結腸口を叩く。
嫋は四肢を震わせ、男の背に縋り付くように手を回した。先程の抵抗が嘘のように、もっと奥へと男の体を引き寄せる。
嫋は快楽に弱く、男に一突きされてしまえば相手に逆らうことなど出来ない。そうなるよう育てられたのだ。
嫋が舌を男の口腔内に差し出すと、男がべろりとそれを舐め上げる。人より長い舌が嫋の柔い舌をぐちゅぐちゅと音を立てて犯す。
(赤い、瞳……もしかして、この方が、あの朱鷹さま……?)
トンットンットンッ♡ ごりゅっごりゅっ♡
「んんぅ~~! んっんっ♡」
「ん……っ!」
太い亀頭が嫋の前立腺を削るように突き立てる。前立腺は子宮の名残だ。嫋はそこを突かれるたび、ガクガクと腰を跳ねさせる。
(ああ、こんなにかっこいい方のお嫁さんにしてもらえるなんて……こんな大きいおちんちんを持ってる方に、嫋の体を使ってもらえるなんて───)
ごりゅッ ごりゅッ ぬるぅ~っ♡
「ぷはっ! あんッ♡、あっあっ、やぁんッ、~ッ♡」
「ぁ゛っ、クソ……他の雄なんかに、交尾させるな……!」
(嫋は、幸せ者ですね……♡)
朱鷹のカリ首が他の男の痕跡を掻き出すように嫋のナカをごりゅごりゅと掘削する。
嫋の肉壁が蠢き、肉棒に一生懸命しゃぶりついて奉仕した。
どちらの汗かも分からぬまま、ピッタリとくっついた2人の体が擦れ合う。
嫋の桃色の乳首が男の乳首に触れ、嫋がきゅん、とナカを締めた。
男は嫋のぽってりとした乳首を見て、ゴクリと喉仏を上下させる。舌で舐め、母乳を飲むように吸ってみると、嫋は女のような声で啼いて嬉しがった。
「いっ、いっ♡、イぐっ♡ はーっ、はぅんっ♡ ぃ、ぐぅ~~~───ッ♡」
「ぅ、あ……出るッ」
どちゅっ どちゅっ♡ びゅーッびゅる♡
プレスするように上から腰を打ち付ける男に合わせ、嫋の腰が跳ねる。
男の肩が震えた瞬間、嫋の胎に濁流のような精が注がれた。
嫋は恍惚した表情でそれを受け止め、目を瞑って男の精液を愛おしむ。
「はぁ、はーっ……」
嫋の腕が朱鷹の汗ばんだ肩にしなだれかかる。指先がぴくぴくと絶頂の余韻に震え、頭の先から足の先まで甘い痺れがびりびりと嫋を支配した。
「んぅ……っ……しゅよう……さま」
「ん……?」
朱鷹は嫋の乳首が気に入ったのか、ちゅうちゅうと赤ん坊のように吸っては緩く腰を動かす。嫋は朱鷹の黒髪を指で梳かしながら、言わなければならないことがあったと思い出す。
「あいさつが遅くなって、んっ、もうしわけございません……はーっ……あなたさまのお嫁さんになりに来ました、っ、嫋と申します。あんっ……ふつつかものですっ、が、よろしくおねがいしま、きゃんっ♡」
「嫋、嫋……」
朱鷹はバッと顔を上げ、その名前を噛み締めるように呟く。その後は嫋の耳元で「好き」やら「愛してる」だの睦言を囁きながら、一晩中その体をゆさぶった。
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