拾われ子のスイ

蒼居 夜燈

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第三章 北大陸

拾われ子とアレックスの旅立ち

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「そうか。アレックスも一緒に行くのか」

「うん。久しぶりに故郷に帰る事にしたからさ」

「新旧最年少ハンターコンビか。中々見られるものではないな」

「でしょ。行く先々で活躍して、此処まで名前を轟かせてみせるよ」

「行く先々で活躍する程モンスターや悪人と遭ってたら、それはそれで問題だがな」

 よく晴れた早朝、シーバシュタットのハンターズギルドでスイとアレックスは支部長のベルゲやハンター達に出立の挨拶をしていた。

「たった数日でも、家を出た我が子が帰ってきたら親は嬉しいもんだ。しっかり顔見せてやれ」

「……うん」

「帰ったら、アイツによろしく伝えておいてくれ」

「ん、解った」

 アレックスがベルゲに挨拶をしている時、スイはオリヴェルと話していた。

『お身体はもう大丈夫なんですか?』

「あぁ。みっともない所を見せたな」

 その言葉に、スイは首を横に振って否定する。

「あのトロールを倒すなんて大した奴だよ。うかうかしていたら、スイに先を越されそうだ」

『じゃあ、オリヴェルさんより早くBランクに上がるのを目指しますね』

「言うじゃねぇか。絶対ぜってぇ負けねえ」

『わぁっ!』

 髪をぐしゃぐしゃに乱されたスイが悲鳴を上げると、オリヴェルは手を離して意地悪そうに笑った。
 髪を整えようと、スイは一度髪紐を解いて結び直す。

「……皆を見つけてくれて、仇を討ってくれて、ありがとな。俺はもっと強くなるよ。あんな思いは、もう二度としたくない」

『……生命いのちは大事にしてくださいね』

「勿論だ。家族に心配させたくないからな。また来いよ、スイ。今度は俺と一緒に仕事しようぜ」

『はい、ぜひ。それでは、お元気で』

「スイもな」

 スイはオリヴェルに頭を下げて離れると、アレックスとベルゲの所に向かった。

『ベルゲさん、お世話になりました』

「こっちこそ、トロール討伐で世話になった」

 スイに礼を言うと、ベルゲは昇格試験について言及する。

「スイ。Bランク昇格試験は、Cランクまでとは少し異なる。だが、スイならこのまま力をつければきっとBランクに上がれると思う。鍛練を怠るなよ」

『はい』

「この地で、BランクとAランクの試験合格者にお前達二人の名が載る日が来るのを楽しみにしている」

「あと一年少しの間にAに上がりたいけど……難しいかなぁ……」

 アレックスは二十歳までにランクを上げたいらしい。だが、現時点で世界中にAランクハンターは二十人もいない。それ程に壁は高く、流石のアレックスも自信なさげにボヤく。

「普通は十年二十年ハンターやっても届かない所だが、お前達はその普通から外れているからな。可能性が無いとは言えん」

「ベルゲさん。その言い方だとアタシら、異常個体アノマリーみたいに聞こえない?」

「ある意味、異常個体だろ」

『「酷い」』

 人間の、それも十代の女性に向かって放つにはあまりにも暴言である。

「ふーんだ。そんな事言う人が支部長やってるハンターズギルドにはもう手を貸してあげないよ。ね、スイ」

『え? えぇっと……』

「スイ、そこは頷いてくれるだけで良いんだよ」

「アレックス。スイの性格を利用して変な事教えるな。スイ、アレックスから教わる事は何でも吸収するなよ。変だと思ったら疑え」

「ちょっと待って!? アタシ悪い大人みたいじゃん!」

「悪い大人だろ。俺から見たらまだガキだが」

「ベルゲさんの方がよっぽど悪い大人だよ! 主に――」

『あ』

 スイが両目を閉じると同時に、ゴッ、と鈍い音が鳴った。

「じゃあ、二人共身体に気を付けてな」

『は、はい……ベルゲさん達も、お身体を大事にしてくださいね……』

「…………!」

 頭頂部を押さえて悶絶しているアレックスをチラチラ見ながらスイが挨拶を終えると、アレックスは涙眼でベルゲを睨み上げ、ギルドの出入口へ向かった。

「ふーんだ! ベルゲさんのバーカバーカ! 行こう、スイ!」

『は、はい……! じゃあ、失礼します……!』

 大きな音を立てて扉を開けたアレックスの後を追って、スイもギルドを出て行った。

「ったく、スイの方がよっぽど大人だな……」

「そうは言っても、なんだかんだアレックスも気に入ってるじゃないすか。支部長」

「煩い。お前らもさっさと依頼請けて出て行け」

 シーバシュタット支部に静けさが訪れる。それに物足りなさを感じながらも、いずれ慣れると皆考えて日常に戻っていった。
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