24 / 64
第二章 ニケ、冒険者になる
第4話 冒険者デビュー!
しおりを挟む
ボクはバロラに特訓してもらえることになり、トレーニング用のクエストに行く前に冒険者登録を行った。
これで晴れてボクは冒険者デビューを果たし、木等級の冒険者になった。
バロラにお古の装備をもらい、冒険者ギルド内にある更衣室で着替える。
ボクが着ていた服は下着までバロラに回収され、ボクはなんだかイケないアルバイトをしているような気持ちになった……
バロラから代わりに提供された下着は下の方はなんとか穿けたけれど、胸の方は残念ながらサイズが合わなかった。
「サイズが合わないんですけど?」と不満を言うと、バロラは「じゃあ布でも巻いとく?」と布を渡してくる。
ボクのただでさえひかえめな胸は布を巻くことで平らになった……
バロラから譲ってもらった装備は、
・魔法の短剣アゾート
・風のマント
・冒険者用のチュニックと短パン
・初級魔術師用の鍔が付いた黒い三角帽子
・ポーチ付きのレザーベルト
だった。
その中でも特に魔法の短剣アゾートは迷宮遺物という物らしい。
迷宮遺物とは、ダンジョンに長く放置されていたアイテムが、ダンジョンの濃厚な魔素に侵食され、特殊な効果や強力な『ステータス』を得た物のことを言うそうだ。
魔法の短剣アゾートは、昨日貸してもらった短剣と同様、STRではなくINTを攻撃力に反映してくれるらしい。
柄の部分は取り外せてその中にMP回復薬一回分を仕込んでおくことができるので、緊急時のMP回復にもつかえるそうだ。
諸刃の刀身の部分はあやしく輝いており、まるで魔力を帯びているようだった。
柄にはアルファベットで「Azoth」と刻まれていて、英語で使うようなアルファベットもこの世界では使われているんだなと思った。
他にも三角帽子はちょっとだけINTを強化してくれる魔術士用のもの。
これは「子どもが魔術士になった記念に親がプレゼントする装備」ランキングが存在するとしたら、ほぼ確実に毎年一位をかっさらっていくだろうというド定番アイテムらしい……
レザーベルトについてるポーチは容量は少ないがちょっとした素材やポーションなんかも入れておけるし、このベルトには短剣を納める革の鞘も取り付けることができた。
風のマントは市販品ではあるが風の属性を帯びているらしく、これを風属性の魔法適性を持っている人が着用すると、運が良いとMPを消費して敵が放つ矢の軌道をそらしてくれるという「矢除けの加護」がついているようだ。
これは魔術Lvが上がると発動してくれる可能性が上がるそうで、他にも刺突攻撃や投石なども躱してくれるけれど、剣による斬撃などだと攻撃をそらしてくれる効果が薄いとのこと。
冒険者用のチュニックと短パンはまぁ普通と言えば普通だったけど、しっかり綿がつめてあって若干防御力が高い他、吹き飛ばされた時も衝撃吸収に優れている。
戦士系や騎士系の職業の冒険者でも鎧の下にこれを着ている人がいるとバロラは言っていた。
ボクが着替え終わると、その間にバロラが今回のクエストについて説明を聞いておいてくれたらしく、さっそく目的地へ向かうことになった。
今回のクエストは、街の外にある果樹園で邪樹妖になりかけている林檎の樹を間引いて欲しいというもの。
この林檎の樹も魔性植物というものに分類されるらしく、年数を経て体内に吸収した魔素が蓄積していくと魔晶石を形成し、魔物化するとのことだった。
林檎の樹は邪樹妖になると周囲にある果樹の養分と魔素を根こそぎ奪い、強力なモンスターに成長していく。
成長した邪樹妖は人間や魔獣の栄養や魔素をも吸収する凶悪な魔物へと変貌するらしい。
林檎の樹はLv10を超えると邪樹妖化し始めるそうで、ボクたちは林檎の樹を『鑑定』しながら、Lv10を超えている樹やもうすぐLv10に上がりそうな樹を討伐していくことになっている。
クエストのランクは銅等級に相当するDランクだったけれど、これは邪樹妖化した樹があった場合を想定してのランクであり、実際はそれより下の鉄等級、Eランク相当のクエストであるとのことだった。
ボクたちは冒険者ギルドを出ると獣舎に向かい、バロラが契約している幻獣、走竜のクイタの背に乗った。
果樹園がある場所はクイタに乗って5分ほどの場所で、ボクが目覚めたダンジョンよりはかなり街に近い場所にあった。
果樹園は小高い丘の斜面のようなところに造られており、かなり広いようだ。
ボクの感覚では東京ドーム一個分よりも少し広いように思われる。
今回のクエストは林檎園の邪樹妖狩りだけど、林檎以外にも洋梨や西洋カリンなどが生えているエリアもあるようだ。
果樹園の中の林檎の樹はどの枝もたわわに実っているけれど、林檎が実るのは秋から冬にかけてじゃなかったっけ?
ボクの肌感覚ではこの世界の今の季節は春のように感じたし、周囲の樹々や草花が青々としているのはそれを証明しているようにも思う……
この世界ではそんなこと関係ないのだろうか?
ゲーム世界であれば季節に関係なく実るのも納得だし、もしここが異世界だとしたら植物が魔物化していることや魔素が影響しているのかもしれない。
春のうららかな風がさわさわと果樹の枝葉を揺らしていくと、ボクのそんなささやかな疑問も風によって吹き散らされていく。
林檎の蜜がはなつ甘く華やかな香りがただよい、肌寒さと温かさのちょうど真ん中くらいの気候が心地良い。
きらめくような春の光をおびた風は、まるでピクニックにでも来たような晴れやかな気分にボクをさせた。
バロラは果樹園に着くと鞄から林檎の実を出し、クイタに与える。
「今日は林檎の邪樹妖狩りだから後でいっぱいあなたの好きな林檎を食べさせてあげる。楽しみにしててね?」
とバロラが優しく声をかけると、クイタは嬉しそうに「くるるるっ」と喉を鳴らした。
バロラはボクに「準備は良い?」と声をかけると、早速ボクに魔法の基礎について説明し始めた。
これで晴れてボクは冒険者デビューを果たし、木等級の冒険者になった。
バロラにお古の装備をもらい、冒険者ギルド内にある更衣室で着替える。
ボクが着ていた服は下着までバロラに回収され、ボクはなんだかイケないアルバイトをしているような気持ちになった……
バロラから代わりに提供された下着は下の方はなんとか穿けたけれど、胸の方は残念ながらサイズが合わなかった。
「サイズが合わないんですけど?」と不満を言うと、バロラは「じゃあ布でも巻いとく?」と布を渡してくる。
ボクのただでさえひかえめな胸は布を巻くことで平らになった……
バロラから譲ってもらった装備は、
・魔法の短剣アゾート
・風のマント
・冒険者用のチュニックと短パン
・初級魔術師用の鍔が付いた黒い三角帽子
・ポーチ付きのレザーベルト
だった。
その中でも特に魔法の短剣アゾートは迷宮遺物という物らしい。
迷宮遺物とは、ダンジョンに長く放置されていたアイテムが、ダンジョンの濃厚な魔素に侵食され、特殊な効果や強力な『ステータス』を得た物のことを言うそうだ。
魔法の短剣アゾートは、昨日貸してもらった短剣と同様、STRではなくINTを攻撃力に反映してくれるらしい。
柄の部分は取り外せてその中にMP回復薬一回分を仕込んでおくことができるので、緊急時のMP回復にもつかえるそうだ。
諸刃の刀身の部分はあやしく輝いており、まるで魔力を帯びているようだった。
柄にはアルファベットで「Azoth」と刻まれていて、英語で使うようなアルファベットもこの世界では使われているんだなと思った。
他にも三角帽子はちょっとだけINTを強化してくれる魔術士用のもの。
これは「子どもが魔術士になった記念に親がプレゼントする装備」ランキングが存在するとしたら、ほぼ確実に毎年一位をかっさらっていくだろうというド定番アイテムらしい……
レザーベルトについてるポーチは容量は少ないがちょっとした素材やポーションなんかも入れておけるし、このベルトには短剣を納める革の鞘も取り付けることができた。
風のマントは市販品ではあるが風の属性を帯びているらしく、これを風属性の魔法適性を持っている人が着用すると、運が良いとMPを消費して敵が放つ矢の軌道をそらしてくれるという「矢除けの加護」がついているようだ。
これは魔術Lvが上がると発動してくれる可能性が上がるそうで、他にも刺突攻撃や投石なども躱してくれるけれど、剣による斬撃などだと攻撃をそらしてくれる効果が薄いとのこと。
冒険者用のチュニックと短パンはまぁ普通と言えば普通だったけど、しっかり綿がつめてあって若干防御力が高い他、吹き飛ばされた時も衝撃吸収に優れている。
戦士系や騎士系の職業の冒険者でも鎧の下にこれを着ている人がいるとバロラは言っていた。
ボクが着替え終わると、その間にバロラが今回のクエストについて説明を聞いておいてくれたらしく、さっそく目的地へ向かうことになった。
今回のクエストは、街の外にある果樹園で邪樹妖になりかけている林檎の樹を間引いて欲しいというもの。
この林檎の樹も魔性植物というものに分類されるらしく、年数を経て体内に吸収した魔素が蓄積していくと魔晶石を形成し、魔物化するとのことだった。
林檎の樹は邪樹妖になると周囲にある果樹の養分と魔素を根こそぎ奪い、強力なモンスターに成長していく。
成長した邪樹妖は人間や魔獣の栄養や魔素をも吸収する凶悪な魔物へと変貌するらしい。
林檎の樹はLv10を超えると邪樹妖化し始めるそうで、ボクたちは林檎の樹を『鑑定』しながら、Lv10を超えている樹やもうすぐLv10に上がりそうな樹を討伐していくことになっている。
クエストのランクは銅等級に相当するDランクだったけれど、これは邪樹妖化した樹があった場合を想定してのランクであり、実際はそれより下の鉄等級、Eランク相当のクエストであるとのことだった。
ボクたちは冒険者ギルドを出ると獣舎に向かい、バロラが契約している幻獣、走竜のクイタの背に乗った。
果樹園がある場所はクイタに乗って5分ほどの場所で、ボクが目覚めたダンジョンよりはかなり街に近い場所にあった。
果樹園は小高い丘の斜面のようなところに造られており、かなり広いようだ。
ボクの感覚では東京ドーム一個分よりも少し広いように思われる。
今回のクエストは林檎園の邪樹妖狩りだけど、林檎以外にも洋梨や西洋カリンなどが生えているエリアもあるようだ。
果樹園の中の林檎の樹はどの枝もたわわに実っているけれど、林檎が実るのは秋から冬にかけてじゃなかったっけ?
ボクの肌感覚ではこの世界の今の季節は春のように感じたし、周囲の樹々や草花が青々としているのはそれを証明しているようにも思う……
この世界ではそんなこと関係ないのだろうか?
ゲーム世界であれば季節に関係なく実るのも納得だし、もしここが異世界だとしたら植物が魔物化していることや魔素が影響しているのかもしれない。
春のうららかな風がさわさわと果樹の枝葉を揺らしていくと、ボクのそんなささやかな疑問も風によって吹き散らされていく。
林檎の蜜がはなつ甘く華やかな香りがただよい、肌寒さと温かさのちょうど真ん中くらいの気候が心地良い。
きらめくような春の光をおびた風は、まるでピクニックにでも来たような晴れやかな気分にボクをさせた。
バロラは果樹園に着くと鞄から林檎の実を出し、クイタに与える。
「今日は林檎の邪樹妖狩りだから後でいっぱいあなたの好きな林檎を食べさせてあげる。楽しみにしててね?」
とバロラが優しく声をかけると、クイタは嬉しそうに「くるるるっ」と喉を鳴らした。
バロラはボクに「準備は良い?」と声をかけると、早速ボクに魔法の基礎について説明し始めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる