26 / 64
第二章 ニケ、冒険者になる
第6話 バロラ先生の魔法基礎講座 ~実践編~
しおりを挟む
バロラに「実践をやってみましょう!」と言われ、ボクはさっきバロラに見せてもらった風属性の初級攻撃魔術『烈風刃』をやろうと試みる。
「いと疾《はや》きものよ、刃となりて、敵を――――」
「ちょっと待ちなさい、ニケ」
『烈風刃』に挑戦しようとするボクをバロラは途中で制止する。
「いったん『烈風刃』はストップ。まずね、あなたは確かに全ての魔法属性に適性があるわ。でもね、だからと言って全ての属性が得意という訳では無いはずよ。とりあえず何が得意か調べてからにしましょう」
バロラはそう言うと、ボクが何属性が得意かを確認する方法を教えてくれる。
「ニケ、とりあえず手を前にかざしてみて。それで手から『なにか出ろ~、なにか出ろ~』って念じるの。さっきみたいに見よう見まねでも術式みたいなものは組まないでね? 変なことをするとその術式に応じたものが出てしまうかもしれないから。あくまで何もせずに『なにか出ろ~、なにか出ろ~』って念じてみて」
バロラに言われ、ボクは右手を前にかざして念じてみる。
(なにか出ろ~、なにか出ろ~、なにか出ろ~、なにか出ろ~、なにか出ろ~…… あれ? 何も出ないな~? 何も出ないぞ~、とにかく出ろ~、なんでも良いぞ~、いい加減にしろ~、やってられるか――)
30秒くらい念じ続けても何も出ず、「やってられるか!」と諦めかけた瞬間、指先から暗緑色の塊が「ぽふっ」と出た。
「あら? ニケ、それは『混沌魔弾』ね。闇属性の初級攻撃魔術よ。普通、単純属性の火、風、水、土のどれかが出るものなんだけど、最初から闇属性が出るなんてやっぱりあなたって変わってるわね」
そういうと、バロラは闇属性について説明してくれる。
「普通、単純属性魔素の火、風、水、土の四元素の場合、どの属性がどれに強くてどれに弱いといった相性みたいなものがあるの。だから例えば火属性が得意な人の場合、弱点になる土属性が得意な相手には弱くて、火属性が弱点の風属性が相手なら強いわ。でも闇属性はどの属性に対して強く、どの属性に対して弱いという相性が存在しないわ。一説によれば『火、風、水、土の四元素を全て混ぜて創られた合成属性なんじゃないか?』とも言われてるけどよく分かってないのよ。闇属性の性質は【混沌と力】。あらゆる属性が混じることであらゆる性質が有るとも言えるし、無いとも言える【混沌】とした状態だと考えられていて、それが示す効力は純粋な【力】とされているわ。とりあえず闇属性が使えるならどんな敵が相手でも不利にはならないから、それさえ使いこなせれば下級冒険者くらいならやっていけるわよ」
どうやら、ボクが得意な属性は闇属性で、それはちょっと珍しいようだ。
バロラは「とりあえず『混沌魔弾』が使えるように術式の練習をしていきましょう」と言って、先ほどの『烈風刃』の時と同じようにまずお手本を見せてくれた。
短剣を鞘から抜き、前回同様、トレントになりかけの樹の方へと向ける。
バロラは短剣で空中に正三角形とその上に逆正三角形を重ねて六芒星を描きつつ、呪文を詠唱する。
「混沌よ、力の根源よ、我が眼前に弾となりて、敵を穿て! 混沌魔弾!」
そう唱えると先ほどボクの指から出たものより何倍も大きい暗緑色の力の塊が、バロラの目の前で「弾」のような形状となる…… 形成された魔弾は樹の方へと高速で放たれた。
高密度の力の塊である魔弾は見事、樹に命中し、その幹が「バギっ!」と弾け飛んだ。
「とりあえずこの魔術のやり方を覚えてもらうわ!」
バロラは『鑑定』で近くにあるトレントになりかけの樹を探し、ボクにターゲットを指定してくれた。
ボクはバロラに見せてもらった『混沌魔弾』の術式を真似しながらやってみる。
まずバロラから譲ってもらった魔法の短剣アゾートで空中に六芒星を描く、そして呪文を詠唱する。
「混沌よ……、力の根源よ……、我が眼前に弾となりて……、敵を穿て! 混沌魔弾!」
そうすると先ほど指先から出たものとは違い、もっと形がハッキリしたものがボクの眼の前に現れる。
それは次第に弾のような形になり、ターゲットの方向――には向かわず、隣の樹の側に着弾する。
どうやら、狙いがうまく付けられていなかったようだ。
「ねえ、ニケ。『混沌魔弾』の術式を組む際に、自分の眼前の弾ばかりに集中せず、ちゃんとターゲットにも意識を集中しなさい。もし間違って全然トレントになりかけていない樹に当たったら弁償よ?」
バロラに脅されてボクの首筋を冷や汗が流れる……
いや、お金が無いから冒険者になるんだからね?
冒険者になって借金作っていたら意味無いから!
ボクは改めて気持ちを入れ替えて術式を組む。
六芒星を短剣で描いた後、短剣が向いている先の樹に意識を集中する。
「混沌よ、力の根源よ、我が眼前に弾となりて、敵を穿て! 混沌魔弾!」
今度はちゃんと樹の方に意識を集中していたので、ちゃんとそっちの方向に弾が飛んでいく。
ただ弾の形成に意識があまり向いていなかったからか、弾は先ほどよりも小さく形も不安定なものになった。
それでもなんとか樹に当てることができ、ボクの『混沌魔弾』は幹を半分くらい弾け飛ばした。
弾けたところで幹が折れ、トレントもどきはドサリっと倒れ、無事一体倒すことができた。
ふぅーっ、なんとか成功……かな?
ボクは額に浮かんでいた汗を右腕で拭った。
「いと疾《はや》きものよ、刃となりて、敵を――――」
「ちょっと待ちなさい、ニケ」
『烈風刃』に挑戦しようとするボクをバロラは途中で制止する。
「いったん『烈風刃』はストップ。まずね、あなたは確かに全ての魔法属性に適性があるわ。でもね、だからと言って全ての属性が得意という訳では無いはずよ。とりあえず何が得意か調べてからにしましょう」
バロラはそう言うと、ボクが何属性が得意かを確認する方法を教えてくれる。
「ニケ、とりあえず手を前にかざしてみて。それで手から『なにか出ろ~、なにか出ろ~』って念じるの。さっきみたいに見よう見まねでも術式みたいなものは組まないでね? 変なことをするとその術式に応じたものが出てしまうかもしれないから。あくまで何もせずに『なにか出ろ~、なにか出ろ~』って念じてみて」
バロラに言われ、ボクは右手を前にかざして念じてみる。
(なにか出ろ~、なにか出ろ~、なにか出ろ~、なにか出ろ~、なにか出ろ~…… あれ? 何も出ないな~? 何も出ないぞ~、とにかく出ろ~、なんでも良いぞ~、いい加減にしろ~、やってられるか――)
30秒くらい念じ続けても何も出ず、「やってられるか!」と諦めかけた瞬間、指先から暗緑色の塊が「ぽふっ」と出た。
「あら? ニケ、それは『混沌魔弾』ね。闇属性の初級攻撃魔術よ。普通、単純属性の火、風、水、土のどれかが出るものなんだけど、最初から闇属性が出るなんてやっぱりあなたって変わってるわね」
そういうと、バロラは闇属性について説明してくれる。
「普通、単純属性魔素の火、風、水、土の四元素の場合、どの属性がどれに強くてどれに弱いといった相性みたいなものがあるの。だから例えば火属性が得意な人の場合、弱点になる土属性が得意な相手には弱くて、火属性が弱点の風属性が相手なら強いわ。でも闇属性はどの属性に対して強く、どの属性に対して弱いという相性が存在しないわ。一説によれば『火、風、水、土の四元素を全て混ぜて創られた合成属性なんじゃないか?』とも言われてるけどよく分かってないのよ。闇属性の性質は【混沌と力】。あらゆる属性が混じることであらゆる性質が有るとも言えるし、無いとも言える【混沌】とした状態だと考えられていて、それが示す効力は純粋な【力】とされているわ。とりあえず闇属性が使えるならどんな敵が相手でも不利にはならないから、それさえ使いこなせれば下級冒険者くらいならやっていけるわよ」
どうやら、ボクが得意な属性は闇属性で、それはちょっと珍しいようだ。
バロラは「とりあえず『混沌魔弾』が使えるように術式の練習をしていきましょう」と言って、先ほどの『烈風刃』の時と同じようにまずお手本を見せてくれた。
短剣を鞘から抜き、前回同様、トレントになりかけの樹の方へと向ける。
バロラは短剣で空中に正三角形とその上に逆正三角形を重ねて六芒星を描きつつ、呪文を詠唱する。
「混沌よ、力の根源よ、我が眼前に弾となりて、敵を穿て! 混沌魔弾!」
そう唱えると先ほどボクの指から出たものより何倍も大きい暗緑色の力の塊が、バロラの目の前で「弾」のような形状となる…… 形成された魔弾は樹の方へと高速で放たれた。
高密度の力の塊である魔弾は見事、樹に命中し、その幹が「バギっ!」と弾け飛んだ。
「とりあえずこの魔術のやり方を覚えてもらうわ!」
バロラは『鑑定』で近くにあるトレントになりかけの樹を探し、ボクにターゲットを指定してくれた。
ボクはバロラに見せてもらった『混沌魔弾』の術式を真似しながらやってみる。
まずバロラから譲ってもらった魔法の短剣アゾートで空中に六芒星を描く、そして呪文を詠唱する。
「混沌よ……、力の根源よ……、我が眼前に弾となりて……、敵を穿て! 混沌魔弾!」
そうすると先ほど指先から出たものとは違い、もっと形がハッキリしたものがボクの眼の前に現れる。
それは次第に弾のような形になり、ターゲットの方向――には向かわず、隣の樹の側に着弾する。
どうやら、狙いがうまく付けられていなかったようだ。
「ねえ、ニケ。『混沌魔弾』の術式を組む際に、自分の眼前の弾ばかりに集中せず、ちゃんとターゲットにも意識を集中しなさい。もし間違って全然トレントになりかけていない樹に当たったら弁償よ?」
バロラに脅されてボクの首筋を冷や汗が流れる……
いや、お金が無いから冒険者になるんだからね?
冒険者になって借金作っていたら意味無いから!
ボクは改めて気持ちを入れ替えて術式を組む。
六芒星を短剣で描いた後、短剣が向いている先の樹に意識を集中する。
「混沌よ、力の根源よ、我が眼前に弾となりて、敵を穿て! 混沌魔弾!」
今度はちゃんと樹の方に意識を集中していたので、ちゃんとそっちの方向に弾が飛んでいく。
ただ弾の形成に意識があまり向いていなかったからか、弾は先ほどよりも小さく形も不安定なものになった。
それでもなんとか樹に当てることができ、ボクの『混沌魔弾』は幹を半分くらい弾け飛ばした。
弾けたところで幹が折れ、トレントもどきはドサリっと倒れ、無事一体倒すことができた。
ふぅーっ、なんとか成功……かな?
ボクは額に浮かんでいた汗を右腕で拭った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生先はご近所さん?
フロイライン
ファンタジー
大学受験に失敗し、カノジョにフラれた俺は、ある事故に巻き込まれて死んでしまうが…
そんな俺に同情した神様が俺を転生させ、やり直すチャンスをくれた。
でも、並行世界で人々を救うつもりだった俺が転生した先は、近所に住む新婚の伊藤さんだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
私のアレに値が付いた!?
ネコヅキ
ファンタジー
もしも、金のタマゴを産み落としたなら――
鮎沢佳奈は二十歳の大学生。ある日突然死んでしまった彼女は、神様の代行者を名乗る青年に異世界へと転生。という形で異世界への移住を提案され、移住を快諾した佳奈は喫茶店の看板娘である人物に助けてもらって新たな生活を始めた。
しかしその一週間後。借りたアパートの一室で、白磁の器を揺るがす事件が勃発する。振り返って見てみれば器の中で灰色の物体が鎮座し、その物体の正体を知るべく質屋に持ち込んだ事から彼女の順風満帆の歯車が狂い始める。
自身を金のタマゴを産むガチョウになぞらえ、絶対に知られてはならない秘密を一人抱え込む佳奈の運命はいかに――
・産むのはタマゴではありません! お食事中の方はご注意下さいませ。
・小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
・小説家になろう様にて三十七万PVを突破。
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる