『トカプチ』ハートフル獣人オメガバース

志生帆 海

文字の大きさ
30 / 94
Birth

再会

しおりを挟む
 ヤバイ!ヤバイってもう……

 ロウの奴……調子に乗って!

 そう思うのに、顔が人間化したロウの色男っぷりに翻弄されてしまう。

 俺の乳首を舌先で擦ったり舐めたり……更には唇で乳首を挟み込み、引っ張るようにちゅうちゅう吸ったりと……狼の顔の時にはしなかった動きを仕掛けてくるもんだから、俺の下半身もジンジンしてしまうじゃないか。

「ちょっと……吸うことに徹しろよ。いっ今は授乳の時間だろ!」

 草むらに組み敷かれ……必死にもがく俺のことを、ロウは甘い笑顔で見下ろして来た。そして熱心にアレを勧めた。

 こんな野外で押し倒され乳を吸われるのだけでも猛烈に破廉恥なことなのに……誰もいないと分かっていても、つい周りを気にしてしまうよ。

 でも……心も躰もどんどん、もっていかれる。

 ロウ……お前、いつの間に……そんな技を……もうっ上手すぎるだろう!

「あっ……うっ……ん」

 次第に自分からも信じられない程甘く感じている声をあげてしまう。

 相変わらずもう片方の乳首にはトイがくっついていて、チュッチュッとうっすら額に汗をかきながら必死に吸っているのに、ロウに吸われている方の乳の刺激だけで、こんなに性的興奮を煽られるなんて!

「はぁ……」

「さぁトカプチも飲めよ」

「んっいやっ、家でもらうよ」

「いいから、今飲め。ほらっ」

 ロウが腰をずらし、俺の口元に股間をずずっと近づけて来た。

 完獣の時より、人型に近くなったそれは……それでもまだ充分大きくて、しかもパンパンになっていた。もう雫が漏れている。甘い香りに誘惑される。猛烈に腹が空いて来た。

 もう口を開ければ……すぐにアレが飲める距離だ。

「もう……しょうがない奴だな」

 結局あっという間に誘惑に負けて、俺は口を物欲しそうに、まるで雛鳥が餌をもらうようにアーンと開けた。

 ポタっ……ピシャ……
 すぐに俺にとって『命の糧』となる白い液体が迸る。
 
 それを喉奥で味わいゴックンと飲み込んだ瞬間に、美味しさに酔う間もなくとんでもない事が起きた。

 俺達を隠すように茂っていた背の高い草が、突然ガサガサっと大きく揺れたんだ!

「なっ何!誰だ?」

 勢いよく飛び込んで来たのは人間だった。しかも俺の名を呼んでいる!

「トカプチ!無事なの?」


 え……

 思考回路が見事に緊急停止した。

 こ……この声は……だって……まさか……

 俺は慌てて飛び起きた。ロウの方も驚いて、トイを抱え大きく一歩退いた。

「まさか……母さん?母さんなの」

 そのまま飛び込んで来た人の胸にぎゅうっと抱かれたので、顔が見えない。でも分かる。この匂いは俺の母さんだ!懐かしい女性の柔らかい躰に、包まれていた。

 なんで……なんでここに?

「トカプチ!無事で良かった」

「母さん、母さん……会いたかった」

 さっきまでしていたこと見られちゃったよな。と頭の片隅で思ったけど、それよりも再会の感動の方が強い。

「あなたに会いにきたの。お父さんも一緒よ。サク、サクも早くこちらへ」

「あぁ……お父さん……」

 口に出せば、涙も連動しているようでボロボロと零れた。

 強く凛々しいお父さんと、俺には滅法弱い……優しい優しい母さんだ。

 俺を探して……俺に会いに?

 あ……そうか、きっとこれはロウのお陰だ。お前が手紙を届けてくれたからだ。

「ロウ……ロウどこだ?ここに来てくれ。お前を両親に紹介したい!」

「……トカプチ」

 ロウの声を追い、目で探した。

 すると草むらの向こうに寂し気なロウの顔が見え隠れしていた。トイを抱っこして、まるで群れからはぐれた子供みたいに不安な顔をしている。あんなに自信満々に俺を攫ったくせに、今のロウの眼は明らかに怯えていた。

「大丈夫だ。ちゃんと分かってもらえる。俺の父さんと母さんなのだから、心配するな」

 母さんの眼は涙で濡れ、父さんも眼の端が濡れていた。

 そんな両親にきちんとロウとこうなった事情を話したい。そしてロウを深く理解して欲しい。受け入れて欲しい。あなた達の孫になるトイのことも紹介したい。

「父さん、母さん……何も言わずに消えてごめんなさい。晒しに書いた俺の手紙を読んでくれたんだね」

「そうよ。ロウというのよね?あなたの番は……彼が決死の想いで届けてくれた手紙を読んで……だから会いに来たの。あなた達に会いたくて!まったくこの子はいつの間に……いつまでも子供だと思っていたのに……可愛い赤ちゃんまで産んで……」

「母さん……ごめんよ。何もかもちゃんと話すよ。ロウと息子のトイのことも……だから、まずは俺達の家に」

「そうね。ここじゃ落ち着かないわ」

 俺達の住処に両親を案内することにした。ロウも警戒しながら一歩下がり、トイと抱っこしてついてくる。そんなロウの横に父さんがすっと並び、何か話しかけた。

 ロウと父さんどっちもカッコいいな。あとで何を話したか聞きたい。

 道すがら……母さんが、そっと俺に聞いて来た。


「あのねトカプチ……母さんの見間違いじゃなければ……さっきの、その……」

「えっ?あぁぁ……もしかしてやっぱり見ちゃった?」

「……えぇ……バッチリ……」

 見ちゃったというのは、やっぱりロウのアレを飲むところだよな。そう思うと猛烈に顔が火照ったけれども、ちゃんと説明したい。

 あれは俺にとって……

「母さん……驚かせてごめん。変なところ見せちゃったよね。でもアレは俺にとって『命の糧』なんだ。俺とロウが互いに必要としあって生きている証だ」


しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

オメガの香り

みこと
BL
高校の同級生だったベータの樹里とアルファ慎一郎は友人として過ごしていた。 ところがある日、樹里の体に異変が起きて…。 オメガバースです。 ある事件がきっかけで離れ離れになってしまった二人がもう一度出会い、結ばれるまでの話です。 大きなハプニングはありません。 短編です。 視点は章によって樹里と慎一郎とで変わりますが、読めば分かると思いますで記載しません。

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

処理中です...