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Grow
最終話『トカプチ』
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岩穴から変わりゆく光景を、家族で見守った。
もう……俺たちがすべきことはない。
自然があるがままの姿に戻っていくだけだ。
逆らわず、抗わず……
この自然に、この身を委ねて生きて行こう。
俺のために躰を何度も変化させてくれたロウ……君と。
「降りてみようか」
「あぁ」
皆で、まるで緑の海のような草原に立った。
氷壁の名残りを感じる冷めたい風が吹き抜け、牧草を静かに揺らした。
「あ……ロウ? どうして……」
寂し気なロウの幻を見た。
ロウが……まだ狼の姿でここに佇んでいた。
君はロウの影……?
まるで亡霊のような姿、あれはロウの抜け殻だ。
「ロウ──おいで! 共に成長し、育てていこう! お前がいるから俺はここにいる。ロウ……どうか忘れないで!」
何度でも言うよ。
何度でも君を求めるよ。
だから何度でも抱いて、俺を満たして──
抜け殻はゆっくりこちらを向き、一歩一歩……近づいてきた。
ロウには見えていないようで、ただ前を見つめていた。
抜け殻がロウの足元に触れた時、そのままシュワっと泡のように消えてしまった。
「あっ……」
ロウの中に吸い込まれたように、姿を消した。
同化したのだろう。
ふと影が消えた場所を見ると、大きな雫をつけた四つ葉のクローバーがふたつ仲良く並んでいた。
「ロウ、見て」
「あぁこれがトカプチの話していた四つ葉のクローバーか」
「うん、幸せを運ぶアイテムだよ」
四つ葉のクローバーをふたつ手に取って、ロウに見せてやった。
「ずっとここにいよう。ここは俺たちの大地だ。この大地を愛していこう」
「あぁ、まもなく牛も子を産む。牛乳が取れるようになるな。トカプチの言っていたチーズも作って、街とも積極的に交流していこう」
「うん、トイとキナもここで成長していくし、俺たちも負けて居られないな。もっともっと成長していこう」
「いいな。ここはオレたちの国だ!」
「そうだ、ここは……『トカプチ』だ」
ふたつの四つ葉のクローバーを重ねると『希望』が生まれた。
希望は太陽となり、この北の大地を恵みの大地へと育てる手助けをしてくれるだろう。
「生きて行こう」
「命ある限り!」
北の国に『トカプチ』という、新しい国が生まれた瞬間だ。
『トカプチ』Grow 完結
明日、おまけSSとあとがき追加します。
もう……俺たちがすべきことはない。
自然があるがままの姿に戻っていくだけだ。
逆らわず、抗わず……
この自然に、この身を委ねて生きて行こう。
俺のために躰を何度も変化させてくれたロウ……君と。
「降りてみようか」
「あぁ」
皆で、まるで緑の海のような草原に立った。
氷壁の名残りを感じる冷めたい風が吹き抜け、牧草を静かに揺らした。
「あ……ロウ? どうして……」
寂し気なロウの幻を見た。
ロウが……まだ狼の姿でここに佇んでいた。
君はロウの影……?
まるで亡霊のような姿、あれはロウの抜け殻だ。
「ロウ──おいで! 共に成長し、育てていこう! お前がいるから俺はここにいる。ロウ……どうか忘れないで!」
何度でも言うよ。
何度でも君を求めるよ。
だから何度でも抱いて、俺を満たして──
抜け殻はゆっくりこちらを向き、一歩一歩……近づいてきた。
ロウには見えていないようで、ただ前を見つめていた。
抜け殻がロウの足元に触れた時、そのままシュワっと泡のように消えてしまった。
「あっ……」
ロウの中に吸い込まれたように、姿を消した。
同化したのだろう。
ふと影が消えた場所を見ると、大きな雫をつけた四つ葉のクローバーがふたつ仲良く並んでいた。
「ロウ、見て」
「あぁこれがトカプチの話していた四つ葉のクローバーか」
「うん、幸せを運ぶアイテムだよ」
四つ葉のクローバーをふたつ手に取って、ロウに見せてやった。
「ずっとここにいよう。ここは俺たちの大地だ。この大地を愛していこう」
「あぁ、まもなく牛も子を産む。牛乳が取れるようになるな。トカプチの言っていたチーズも作って、街とも積極的に交流していこう」
「うん、トイとキナもここで成長していくし、俺たちも負けて居られないな。もっともっと成長していこう」
「いいな。ここはオレたちの国だ!」
「そうだ、ここは……『トカプチ』だ」
ふたつの四つ葉のクローバーを重ねると『希望』が生まれた。
希望は太陽となり、この北の大地を恵みの大地へと育てる手助けをしてくれるだろう。
「生きて行こう」
「命ある限り!」
北の国に『トカプチ』という、新しい国が生まれた瞬間だ。
『トカプチ』Grow 完結
明日、おまけSSとあとがき追加します。
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