【完結】昔セフレ扱いして捨てた元恋人がドン底だったから拾ってやりました、けど……??

バナナ男さん

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39 止めろって……

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( 晴矢 )

「 よし、今日はいつも頑張っている秋人にご褒美だ!

ハンバーグ、食べに行こうか! 」


「 えっ!いいの!!? 」


キラキラキラ~!!

更に輝きを増した秋人に笑顔を見せると、突然冬司が俺の肩に手を回した。


「 じゃあ、行こうか。

車ですぐだからさ。早く乗って乗って。 」


「 あ、うん……。ありがとう。 」


なんと車で送ってくれるというので、お言葉に甘える事にする。


きっと通り道にあるお店なんだろう。

そう思って軽く思っていたのだが────……お店の前に到着後、俺は自分の認識が間違っていた事に気づいた。


ドーン!とそびえ立つ巨大ビル。

そこには沢山のお店が入っていて、確かにハンバーグが食べれる飲食店もあるが、多分俺が考えているハンバーグとは桁が違う事は間違いなしのお店の様だ。


「 ……あ……あの……。 」

「 さっ!予約もとってあるから直ぐに食べれるよ。

早く食べよう。 」


冬司は秋人を抱っこし、スタスタとビルの中へ。

俺は慌ててそれを止めようとしたのだが、突然背後にスーツを着た男性二人が近づいてきて、俺の両側に立ってプレッシャーをかけてくる。


「 どうぞ、こちらへ。 」

「 最上階でございます。 」


両手が塞がっている冬司のかわりに、スーツの男性がエレベーターのボタンを押し、ドアが空いた瞬間に、俺は背中を押されて中へ入れられた。


「 まっ……!ちょっ……!ま……っ!! 」


慌てて出ようとしたが、直ぐに冬司が乗ってきて入口を塞ぐ。


────……ガッコンッ!!


手を伸ばす、その前に……エレベーターのドアはしまってしまった。


「 …………。 」


真っ青な顔で、お金の計算を頭の中でしている俺に、冬司はニコニコしながら話しかけてくる。


「 ここのハンバーグは絶品でさ、今の俺の一番のお気に入りなんだ。

だから沢山食べようね。 」


「 きゃ~っ!! 」


秋人が食欲に負けて、両頬に手を当て歓喜している……。

これじゃあ、今更駄目と言いにくい!


覚悟を決めた俺は、すぐにカシャカシャカシャ!と頭の中で算盤を弾く。


通帳に入っている残りのお金残高は約10万ほど……。

い、一万くらいなら……。


ゴクッと喉を鳴らすと、ベルの音と共にエレベーターは最上階へ。

ドアが開くと────……別世界!!


日本風と洋風を混ぜ込んだ奇跡のデザインをこれでもかと活かした店の内装は、漆塗りの赤の様な色をメインに作られていて、金色の細工模様がキラキラと光る。

襖や飾られている鳥の剥製などなどから、江戸時代とかのイメージが湧くが、あまりにも綺羅びやかな世界観に、中世ヨーロッパの様なイメージもある。


上品な感性をもたない俺には、このデザインの価値をはかることはできない。

だが、確実なのは────多分死ぬほど料理は高いだろうって事!


「 あ、あ、秋人~?ちょっとこっちにおいで。 」


俺は冬司から秋人を奪い取ると、そのまま耳にヒソヒソと小さな声で言った。


「 ハンバーグはちょっと我慢できるかな~?

家に帰ったら、パパが沢山焼いてあげるから!

それに砂糖耳パンも沢山揚げるし、お腹が一杯になっちゃうからね。 」


「 ??う、うん。分かった! 」


秋人は本当に賢い子で、なんとなくまずい事を察したのか、ちゃんとコクリと頷いてくれる。

それを見てまた泣けてきたが、ないものはない。

本当に無理。

だから、せめて帰りにスーパーで大量のひき肉を買って沢山食べさせてあげようと決意した。


「 いらっしゃいませ、大征様。

お待ちしておりました。 」


控えめな紺色の着物を着た美しい女性が、気がつけば冬司に深々とお辞儀をしていて、俺は恐らくこのお店のオーナーさんだと予想する。

そんな女性に向かい冬司はスマートに対応すると、そのまま俺達は案内されて奥の方にある部屋に通される。


「 それではご注文が決まりましたら、お呼び下さい。 」


案内された部屋は、なんと個室!

紅色と金色の細工模様が素晴らしい部屋の中、掘りごたつ式のテーブルの前で固まっていると、冬司が笑顔のまま秋人を座らせ、その隣に俺、そしてその隣に自分が座った。


大きな四角いテーブルの前に三人並んで座る……。

いや、冬司は前に座った方がよくないか??


「 あのさ、冬司……。 」


「 はい、ハンバーグはお子様用もできるみたいだからそれにしようか。

他も特別バージョンでアレンジもオーダーできるから好きなの選んでね。 」


冬司は先程の着物女性に手渡しされていたメニュー表を開けて、秋人に見せた。

すると秋人はキラッ!!と目を輝かせたが、直ぐに俺が言っていた事を思い出したのか首を横に振る。


「 ぼ、僕、やっぱりハンバーグいらない!

ジュースくだしゃい! 」


キリッ!とした顔でそう言い切った秋人に、心の中で号泣しながら「 俺は水下さい。 」と言い切った。

なんと言っても見せられたメニュー表には値段が書いてない。

多分お水とジュース一杯でお財布の二千円は飛ぶとみていいだろう。

そう思い、恥を偲んで頼んだのだが……冬司は嬉しそうに笑みを浮かべたままテーブルに置かれた小さなベルをチリンチリンと鳴らした。


すると、すぐに部屋の出入り口の襖が開き、先程の着物女性が深々と土下座をした状態で姿を現す。

そんな女性に向かい、冬司はペラペラと喋りだした。


「 じゃあ、ジュースと水。

それにオススメ料理全部持ってきて。 」


「 かしこまりました。 」


冬司はメニュー表にのっている料理名全部をなぞる様に指差すと、着物女性は快諾して襖を閉める。

あっという間の出来事に白目を剥いて固まっていると、冬司はヒョイッと顔を動かし秋人を見た。


「 ハンバーグ以外の料理も沢山来るから、好きなモノを食べてね。 」

「 ────っ!!う、うん!! 」


パァァァ~!!!と明るくなっていく秋人とは逆に、俺の顔はどんどんと暗くなっていく。

俺は大きく震えたまま、隣にいる冬司にコソコソと話しかけた。

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