【完結】昔セフレ扱いして捨てた元恋人がドン底だったから拾ってやりました、けど……??

バナナ男さん

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49 ラッキー!

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( 晴矢 )

◇◇◇◇

「 ……どうしようか。 」


鉄格子が嵌まっている窓に手を当て、大きなため息をつく。


冬司に逆らった日から、俺の自由はなくなりずっとこの部屋に閉じ込められている日々が続いていた。


「 これじゃあ、本物の囚人だな……。

秋人には一応会わせてもらえるけど……。 」


冬司が仕事でいない時間だけ秋人と会わせて貰えるが、それ以外の自由は一切与えられない。

正直VIPな囚人生活といった感じだ。


「 ……こんなモノまで……。

一体俺をどうしたいんだよ……。 」


自分の首元にガッツリ巻かれている黒い首輪を触りながら、頭を抱える。

まるで飼い犬につける様な首輪を渡され、勿論死ぬ気で抵抗した。

しかし────……。


「 衣食住の面倒を見てもらうのってペットだよね。

抵抗する晴矢は悪いペットだね。

そんな悪いペットがお外で勝手に作った子供をどうするのかな~?飼い主は。

もしお利口さんにするなら、ちゃんとその子供の面倒もみてあげるよ。 」


冬司は携帯に秋人の現在の様子を写した動画を俺に見せ、わかりやすく脅してくる。


「 …………わ、分かった。 」


諦めるしか選択肢を選べず、俺は首輪を巻かれた。


「 まさか首輪をつける事になるとは思わなかったな……。

……そういえば、結婚指輪まで取り上げられちゃったな。 」


星華との結婚指輪。

左手の薬指にあったそれは、早々に取り上げられて、代わりの指輪を大量に並べられて「 選んで。 」と言われた時は血の気が引いた。

勿論それも必死に抵抗したが、また同様の脅しをかけられ返しては貰えない。

ただ、新しい指輪だけは死ぬ気で拒否した。


「 新しい指輪はいらない。

ここは愛する人との約束の場所だから。 」


薬指を触りながらきっぱり告げると、冬司はまた機嫌を急降下させて────突然俺の薬指に噛みつく!


「 痛っ! 」


痛みに叫ぶ俺を無視して、冬司は歯の力を一瞬強めたが……なぜかフッと指から口を外した。


「 ……や~めた。

このまま指を失くしちゃうと、さっきの安っぽい指輪が ” 永遠 ” になっちゃうし。 」


青ざめて指を押さえる俺に向かい、冬司はハァ~とため息をつき……その後直ぐに首輪をつけられたというわけだ。


「 ……本気で噛みちぎられる所だった。

なんで止めたのかは分からないけど……。

……結局また奴隷生活に逆戻りか。

本当にどうしたらいいんだか。

冬司が飽きるのを待つしかないのかな……。 」


不意に弱気になったが、飽きるのが早い冬司なら、そう長くない先にまたポイッと捨てられるだろうと楽観的な考えが浮かぶ。

しかし────……日々の冬司の様子から、モヤモヤ~とその考えを吹き飛ばす嫌な感情が広がっていった。


まず劇的に変わったのがセックス。

好きに扱うだけのモノとしてではなく、こちらの反応を一々調べるような動きをしてくる様になったのだ。

付き合っていた頃だって、そこまで丁寧なモノではなかったのに……。


「 ……それでも付き合っていると思っていた時期は、好きだって気持ちがあったから気持ちよかった。

今は気持ちがないのに、無理やり体に覚えさせられる様で……なんだか気持ち悪い。 」


自分への嫌悪感で、身体が震えて止まらない。

腕を擦って、なんとかそれを収めようとしたが……その自分の動きすら冬司とのセックスを思い出してしまい、吐き気がした。


自分の身体がおかしくなっていく。

勝手に使われ、勝手に変えられ……強制的に快感を引きずり出される。

心が伴わないままのソレは、本当に辛くて苦しいモノだった。


「 星華……。 」


愛する人への裏切りに、また心が弱りそうになったのを感じたが……直ぐに頬をパチンッ!と叩いて気合を入れ直す。


「 とにかくお金!後は冬司に嫌がらせをどうにか止めてもらう事!

うぅ~……お金……お金……。 」


頭を抱えたままウロウロしていると、不意に星華が言っていた言葉を思い出した。

楽な人生の果て、沢山のギャンブルでこしらえた借金に苦しみ、最後はお金の事しか頭になかった父について、結婚前の星華に話した時の事だ。


” 俺の父親はそんな人だった。

楽に手に入るお金って凄く怖いんだなって、俺はそう思ったよ。

手に入る有り余るモノは全て怖い。

努力して何かを得るって事は、その恐怖をなくしてくれるモノだから……だから俺は何でも頑張りたいと思うのかもしれない。 ”


” へぇ~。 ”


星華は、俺の話を聞きながら考え込んだ後、自分の今まで生きてきた人生について語ってくれた。


” 私はそのお父さん側の人間だったからな~。

なんとも言えないけど……でも、晴矢は大丈夫な人だよ。

きっと楽に何かを手にしても、変わる事はないから。 ”


” そうかな……?

でも、自信はないよ。俺には、あの父親の血が入っているからさ。 ”


捨てた父の存在は、まだ心の奥底にくすぶって残っている。

凹む俺の手を星華は強く握ってくれた。


” いい出会いも悪い出会いも、相手をよく見て考えて生きてきた人は、大丈夫だって。

そういう人って、絶対失敗しないから。

神様って、時々悪戯するように、とんでもないものをランダムに人に与えるからさ、晴矢がそれを偶然貰えたら……ラッキー!それで大丈夫! ”



「 ラッキー……か。 」


俺の沈んだ心をあっさりと引き上げてくれた星華。

その時の事を思い出してクスッと笑う。


だから本当に気まぐれに、神様って奴に祈ってみる事にした。


” どうか、自由になれるくらいのお金を俺に下さい! ” って。


シーン……としている部屋の中で、少し恥ずかしさを感じ、ポリポリと頭を掻いていると、フッと自分の唯一の荷物であるスーツの存在を思い出す。

確かお手伝いさんが綺麗に洗濯してクローゼットに入れてくれたはず……。


スーツのポケットに、変なチラシとか割引券も入っていたのを思い出し、そのまま洗濯してしまったら、大変な事になったんじゃ……と心配になった。


「 秋人のポケットにティッシュが入ったまま洗っちゃって大変だったもんな……。 

大丈夫だったかな……? 」


なんとなく気になってクローゼットを開けると……ハンガーに綺麗に掛けてあるスーツが目に入る。

そしてポケット部分に手を突っ込むと、そこにはチラシっぽい紙の確かな存在があって驚いた。

どうやら洗濯前に出してくれて、その後しまってくれたらしい。


「 仕事ができる人だ……。すいませんでした。 」


誰もいない部屋の中で、一応御礼を告げると、ちゃんと処分するため、数枚はありそうな紙を引っ張り出した。

すると────……。


「 ……宝くじ?? 」


一瞬なぜポケットに??と本気で悩んでしまったが、確か冬司に連れられる直前に、一枚だけ買った事を思い出す。


「 あ~……そういえば買ったな。

忘れていた。

……一応確認しておくか。やることないし。 」


俺は冬司の電話番号しか入っていない携帯を操作し、その宝くじの当番号を確認しようとした。

今まで一度も買った事はない宝くじ。

もちろんハズレで────……。


「 ────……………えっ……………? 」


番号を確認している目が止まり、思考も一瞬飛び、俺は一度携帯と宝くじをテーブルの上に静かに置く。

そして目元を揉み込んで、もう一度携帯と宝くじを見比べ……ボソッと呟いた。



「 い……一等賞……当たってる……?? 」


当選番号と全ての数字が同じ宝くじを、信じられない目で見つめ、ガクガクと震えだす。


当選金は、一等賞とだけあって見たこともないくらい沢山の0が並んでいて……正直理解の範疇は越えてしまったが、確かに分かった事があった。


「 これで、冬司にお金返せる……!

それに、これだけあれば、仕事が決まらなくても大丈夫だ! 」


グゥ……!と喉を鳴らして歓喜した俺は、その場で飛び上がり、冬司の帰りを待った。

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