【完結】昔セフレ扱いして捨てた元恋人がドン底だったから拾ってやりました、けど……??

バナナ男さん

文字の大きさ
53 / 54

53 いつかは……

しおりを挟む

( 晴矢 )

「 お~い!秋人!仕事に遅れちゃうから早く行くぞ~。 」

「 は~い! 」


パタパタと部屋の奥から走ってくる秋人を見ながら、俺はビジネスバックを持ち上げる。


冬司が突然泣き出すという、とんでもない事件の後、俺は晴れて自由の身となり、直ぐに就活を始めた。

すると拍子抜けするくらいアッサリと決まり、直ぐに冬司の家を出て、秋人との生活を開始したのだが……問題は秋人の方。

なんと俺が監禁されていた時に通っていたらしい幼稚園は、冬司の会社の子会社の子会社の……とりあえず関係が少しだけある会社が運営している、お金持ちが通う様なエリート様専用幼稚園だったのだ。

完全に冬司が無理やり空きを作った事は明白だし……そもそも幼稚園では仕事との両立が難しいからと辞退しようとしたが、なんと遅くまで見てくれるサービスつき、かつ仕事場と近いともあって便利といえば便利……。

しかし、そもそも一般庶民が通うには、完全に不相応なので色々考えて、やはり ” 退園 ” の2文字が頭の中を過ぎたが、今度は秋人が泣いて駄々を捏ねて拒否してきた。

何でも大好きな女の子の友達ができたから、違う幼稚園は嫌だそう……。

それに困り果てていた俺だったが、冬司が ” 別にこれくらいそのままでいいじゃーん ” とアッサリ言ってくれたので、お言葉に甘える事にした。


まぁ、かなり月謝が高い幼稚園だけど、宝くじのお金で賄えるしな……。


見事一等賞があたった宝くじのお陰で、冬司には星華に掛かった治療費を全て返し終わり、余った分のお金は貯金として手元にある。

とりあえず、それは秋人のために全て使い、余ってもいつか秋人が結婚をする時に全部渡すつもりだ。

そうして自分の収入に無理のない1DKのマンションを借りて、新生活を始めた俺は、簡易式ではあるが仏壇を作って、毎日星華との思い出に浸って生きている。

フフッと思わず笑っていると、走ってきた秋人が自分で靴を履き立ち上がったタイミングで俺達は一斉に部屋の奥に向かって叫んだ。


「「 星華(お母しゃん)、いってきま~す! 」」


ちゃんと言い切った後は、扉をしっかり閉めて、そのまま幼稚園へと向かう。


「 でね~桜ちゃんがねぇ~もしかして僕の事ちゅきかもしれない……!

折り紙のちゅきな色をくれたし......渡された時に指が当たっても怒らなかったし! 」


「 ほ~そうかそうか。 」


秋人が真っ赤な顔で嬉しそうに語る恋話に耳を傾けながら道を歩いていると、突然後ろから俺とは逆の秋人の隣に当然の様に並んできた男がいた。


「 へぇ~それって脈ありかもね。

今日の夕飯の時、詳しく聞かせてよ。ウチの息子も呼ぶからさ。 」


「 冬司お兄さん! 」


圧倒的な存在感と美しさを持つ元彼……いや、元セフレだった冬司だ。

キラキラ輝く目で冬司を見上げる秋人とニッコリ俺を見て笑う冬司を見て、思わず遠い目をしてしまった。


冬司は朝と仕事後に、こうしてさりげない形で毎日近づいてくる。

ちなみに会社とは逆方向なので、確実に偶然ではない事は分かっていた。


「 ……冬司、あのさ────。 」

「 楽しみだね!今日は特大ハンバーグだよ~。 」

「 きゃ~!! 」

「 …………。 」


今日も食欲に負けた息子と、してやったりと笑っている冬司を見てハァ……とため息をつく。

星華との思い出に浸りたいと言ったのに、こうして信じられないくらい強引でしつこく絡んでくる冬司。

それに苦言を呈すると、冬司曰く────……。


” 離れると、また他のが入り込むでしょ?

もう絶対に誰も入れたくないから。 ” 


────とよく分からない事を言って、言うことを聞いてくれない。

更に息子がいる事を初めて聞いて、俺は大激怒!

” ちゃんと自分の息子を大事にしろ! ” とコンコンと説教すると、なんと次の日、息子の夏樹君を連れてきたのだが……まぁ、冬司をそのまま小さくした様な子だった。


” めんど~……。なんで父親と出かけなきゃなんないの~? ”

” ハァ……。何でもいいから早く用事すませてくれない?

何?その見るからに貧乏臭い親子。あっちいけよ、シッシッ! ”


それはそれは圧倒的なオーラを放ちながら、面倒くさそうに言われてしまい、思わず微笑む。


顔も性格も気質もソックリ!


しかし、何故か秋人の事を気に入ってくれた様で、結構ちゃんと遊んでくれた。

すると何だか急速に仲良くなって、兄弟のいない秋人は凄く楽しそうなので駄目とも言えない……。


「 ……なんだかな~。 」


ハンバーグの事でるんるんになった秋人に、やはり何も言えずに冬司を軽く睨むと、冬司は憎たらしい程爽やかな笑みを浮かべた。


” あのな……会いに来るなよ。

俺は静かに想いたいって言ったよな? ”


ハッキリ言わないと通じない事を理解して、前にかなり直接的に拒絶したが……冬司は首を横に大きく倒す。


” え?静かにしてるでしょ?

だってセックスしてないし。 ”


本気で意味が分からないと言わんばかりの顔を見せる冬司に絶句したのは記憶に新しい。


「 ……セックスなしなら静かなんだな、冬司の常識は。 」


呆れながら呟くと、冬司はセックスという言葉に反応したのか、俺の肩を抱こうとしたので、すぐに叩き落とした。

ちょっと……いや、だいぶ性格に難ありの冬司だが、この欲望に必死に手を伸ばし続ける所は魅力的だと思う。


もしかして、いつかは星華との想いと共存する形で……また好きになるかもしれないな。


「 ……ふっ。 」

「 ……?? 」


叩かれた手をブスッとしながら見下ろす冬司を見て吹き出すと、俺達はそのまま真っ直ぐ一緒に歩いていった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

牛獣人の僕のお乳で育った子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!!

ほじにほじほじ
BL
牛獣人のモノアの一族は代々牛乳売りの仕事を生業としてきた。 牛乳には2種類ある、家畜の牛から出る牛乳と牛獣人から出る牛乳だ。 牛獣人の女性は一定の年齢になると自らの意思てお乳を出すことが出来る。 そして、僕たち家族普段は家畜の牛の牛乳を売っているが母と姉達の牛乳は濃厚で喉越しや舌触りが良いお貴族様に高値で売っていた。 ある日僕たち一家を呼んだお貴族様のご子息様がお乳を呑まないと相談を受けたのが全ての始まりー 母や姉達の牛乳を詰めた哺乳瓶を与えてみても、母や姉達のお乳を直接与えてみても飲んでくれない赤子。 そんな時ふと赤子と目が合うと僕を見て何かを訴えてくるー 「え?僕のお乳が飲みたいの?」 「僕はまだ子供でしかも男だからでないよ。」 「え?何言ってるの姉さん達!僕のお乳に牛乳を垂らして飲ませてみろだなんて!そんなの上手くいくわけ…え、飲んでるよ?え?」 そんなこんなで、お乳を呑まない赤子が飲んだ噂は広がり他のお貴族様達にもうちの子がお乳を飲んでくれないの!と言う相談を受けて、他のほとんどの子は母や姉達のお乳で飲んでくれる子だったけど何故か数人には僕のお乳がお気に召したようでー 昔お乳をあたえた子達が僕のお乳が忘れられないと迫ってきます!! 「僕はお乳を貸しただけで牛乳は母さんと姉さん達のなのに!どうしてこうなった!?」 * 総受けで、固定カプを決めるかはまだまだ不明です。 いいね♡やお気に入り登録☆をしてくださいますと励みになります(><) 誤字脱字、言葉使いが変な所がありましたら脳内変換して頂けますと幸いです。

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

久しぶりに地元へ帰ったら、昔いじめてきた男に告白された

髙槻 壬黎
BL
【狂愛執着攻め×自己肯定感低め受け】 高校の卒業式後、自分を取り巻く環境から逃げるようにして地元を出た俺──広崎恵。新天地では頼れる人もおらず、毎日の生活は苦しかったけど、それでも俺なりに満ち足りた人生を送っていた。 しかしその五年後。父親からの連絡で故郷へ帰ることになった俺は、かつての同級生──狭山鏡夏の名前を耳にする。常に人から囲まれ人気者だったその男は、俺をいじめてきた張本人だった。 だからもう会うつもりなど、二度となかった。だというのに、何故か狭山は、俺のことをずっと探していたようで──── ※攻めがサイコパス気味です。受けへの愛だけはありますが、倫理観が欠落しているので苦手な方はご注意ください。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

ガラスの靴を作ったのは俺ですが、執着されるなんて聞いてません!

或波夏
BL
「探せ!この靴を作った者を!」 *** 日々、大量注文に追われるガラス職人、リヨ。 疲労の末倒れた彼が目を開くと、そこには見知らぬ世界が広がっていた。 彼が転移した世界は《ガラス》がキーアイテムになる『シンデレラ』の世界! リヨは魔女から童話通りの結末に導くため、ガラスの靴を作ってくれと依頼される。 しかし、王子様はなぜかシンデレラではなく、リヨの作ったガラスの靴に夢中になってしまった?! さらにシンデレラも魔女も何やらリヨに特別な感情を抱いていているようで……? 執着系王子様+訳ありシンデレラ+謎だらけの魔女?×夢に真っ直ぐな職人 ガラス職人リヨによって、童話の歯車が狂い出すーー ※素人調べ、知識のためガラス細工描写は現実とは異なる場合があります。あたたかく見守って頂けると嬉しいです🙇‍♀️ ※受けと女性キャラのカップリングはありません。シンデレラも魔女もワケありです ※執着王子様攻めがメインですが、総受け、愛され要素多分に含みます 朝or夜(時間未定)1話更新予定です。 1話が長くなってしまった場合、分割して2話更新する場合もあります。 ♡、お気に入り、しおり、エールありがとうございます!とても励みになっております! 感想も頂けると泣いて喜びます! 第13回BL大賞にエントリーさせていただいています!もし良ければ投票していただけると大変嬉しいです!

ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる

桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」 首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。 レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。 ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。 逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。 マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。 そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。 近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン

【完結】執着系幼馴染みが、大好きな彼を手に入れるために叶えたい6つの願い事。

髙槻 壬黎
BL
ヤンデレ執着攻め×鈍感強気受け ユハン・イーグラントには、幼い頃から共に過ごしてきた幼馴染みがいる。それは、天使のような美貌を持つミカイル・アイフォスターという男。 彼は公爵家の嫡男として、いつも穏やかな微笑みを浮かべ、凛とした立ち振舞いをしているが、ユハンの前では違う。というのも、ミカイルは実のところ我が儘で、傲慢な一面を併せ持ち、さらには時々様子がおかしくなって頬を赤らめたり、ユハンの行動を制限してこようとするときがあるのだ。 けれども、ユハンにとってミカイルは大切な友達。 だから彼のことを憎らしく思うときがあっても、なんだかんだこれまで許してきた。 だというのに、どうやらミカイルの気持ちはユハンとは違うようで‥‥‥‥? そんな中、偶然出会った第二王子や、学園の生徒達を巻き込んで、ミカイルの想いは暴走していく──── ※旧題「執着系幼馴染みの、絶対に叶えたい6つの願い事。」

処理中です...