魔王と勇者の愛の板挟み!?

スイレン

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 ーそして10分経過ー

 魔王と勇者が同時に振りかえった。

 そして一方はため息をつきながら私を見て、もう一方は半目で私の方を見た。

 私はというと魔法で魔王城の床に絵を描いていた。だって暇だったんだもん!

 ついでに新しい魔法陣できた!!うん、なかなかいい出来栄えだ!

「何やり切ったみたいな顔してんだよ...」

「全く相変わらずですね。」

「やり切ったみたいなってやり切りましたとも!
 魔法のことならいつでも全力ですっ…てなんで勇者様に相変わらずなどと…」

 あれ?何か違和感が…


 と思うと二人の髪の毛が魔法で黒くなっている。
 さっきまで髪色が魔王は紫色、勇者は金色をしていたのに...

 しかし違和感はそれだけではない。

 明らかに二人の顔がそっくりなのだ!
 髪の毛の色が違ったので全然分からなかった!!

 そしてなんか見覚えがある二人の姿が昔にあった誰かと重なった。

 そう、確かあれは…



 昔、私が小さい頃にやけに突っかかってくる双子の兄弟がいた。
 毎日毎日何かと難癖を付けてくる。

 内容までは覚えてないけどめんどくさかったのは覚えてる。なので話しかけられてものらりくらりとかわしていたけど。私はあの時から魔法のことで頭がいっぱいだった。

「もしかして!あの!めんどくさツインズ!?」

「なっ!お前思い出して、出てくるのそれかよ!?」
 と片方が、
「懐かしいわー。その君の呼び方」
 ともう片方。


「でっ、でもそれだけじゃあ求婚してくる意味がわから…だいたいあの時から魔法のことしか考えてなくて…」

「その魔法馬鹿残なおかげで俺たちは救われたんだ」

「君のそういうところを僕達は好きになったんだ」

 ちょっとなんか本当にもう照れるって…
「救われた?」


「そう、俺たちと初めてあった時お前はさっきみたいに魔法陣を描いていたんだ。
 でも俺たちはいずれ魔王と勇者になる身だったから魔力を使うすべてのものが嫌いだった。
 そして魔力を使う魔法や魔法陣も当然嫌いでそれであの日俺たちはお前に八つ当たりをするようにお前の描いた魔法陣を足で消したんだ。」


 こんなふうにと魔王が足を地面に擦るふりをした。

「そうしたら君凄い形相でキレるんだもん。あの時は死ぬかと思ったよ」

 そりゃあな。大人になった今でもそんなことやられたら怒りが抑えられなさそうなのにね…

「魔法をさんざんぶっぱなして魔力切れになってからお前は言ったんだ。
『魔法を悪く言うなっ!魔法は皆を幸せにしてくれるとてもいい物なんだ!!魔王とか勇者とかなんだか知らないけどそんなに魔力が有り余っているのなら私にちょうだい!!そしたら二人が幸せに暮らせるような魔法を作って上げる!』てね」

「はっきり言って根拠がない言葉だとは思ったよ。僕達が魔王と勇者になるというと大抵皆、僕達を避けるんだ。
 なのに君はなんでもないように僕達に話しかけたんだ。逆に魔力余ってるんだったら魔力を分けろと」

 ぷぷぷっと勇者が笑う。

 いやだってあの頃魔力少なくてちょっとしか魔法使えなかったんだもん。

「そしてそこから俺らはお前に毎日合いに行くようになった。お前と一緒にいるのは気を使わなくていいからとても居心地がよかった。
 お前だけは俺たちのことを忌み嫌わない。
 だが、魔王と勇者になりたくなくて逃げていた俺らは協会にあっさり捕まってしまった。そこからはお前がどこにいるのか分からなくて。」

「だから僕達は君を見つけるために魔王を倒しに行くから君を探せと王様に言ったんだ。はっきりいって王様とかは魔王さえ倒せればいいみたいだったからそれならと、早く旅に出ろという条件で君のことを見つけてもらったんだ。でも思った以上に君がなかなか見つかんなくてね。苦労してたみたいだよ。」

「まあ、そうだろうな。普通の人は森の中に地下を作ってそこで暮らしてるとは思はないもんな。」

 HAHAHAっと二人が笑う。

 やかましい!

「だって誰にも邪魔されたくなくてあの森に隠れてたのに!!」

「理由といえばそんなもんだ。でっ、どうなんだ?」
 と魔王が私の腰を抱いてくる。

「へっ?」

「だから僕とこいつどっちがいい?」
 と勇者が私の肩を抱く。

「ねぇ…どっちか選んで」
「さぁ…どっちか選べ」

 あー!!!耳!耳元でそんな!囁かないで!
 というか流石双子!息ピッタリですね!

 じゃあなくて!!

 そもそも私!








「男ですよーーー!!!!」

 二人は何言ってんだこいつみたいな顔で

「知ってるけど」
「それがどうした?」

 と言ってくる。

 もう、無理です。
「誰かー!!助けっ…!」
 と私は叫ぼうとしたが


「ーーーーーっ!」

 魔王か勇者のどっちかが私の頭を抑えて口の中に舌を入れてくる。
 そしてやっと終わったと思えば、
 どっちかが耳をカプリとかじりついてくる。


 こうして魔法使いの叫びは誰にも届かないのでした。


 そして魔王と勇者は魔法使いを愛でる為にこれ以上のあんなことやそんなことをしてくるなんて、今の魔法使いには予想もつかないのでした。



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