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閑話
義弟の昔話と思い
しおりを挟む突然だけど俺の兄さんはすごく可愛い。
えっ?どんなところがだって?
兄さんの全部だよ。
今では大好きって言葉では言い表せないくらい大切になったけど昔の俺は兄さんが嫌いだった。
これはちょっと僕の昔話になる。
実は俺と父さんは血が繋がっていない。
本当の親…母親は俺を産んですぐ死んでしまった。
そのせいだろうか。父親とは呼びたくないが俺の本当の父親は俺を毎日殴ったり蹴ったりしてきた。ひどい時はタバコの火を押し付けてきたりした。
だけど俺が五歳ぐらいになった時、あいつは事故で死んだ。そっからは母方の身内だがなんだか知らないがたらい回し状態。その時点で俺は人間不信になっていた。
今の父さんに出会ったのは俺が小学二年の頃かな。あいつの友人だった父さんを俺は最初信じられなかったけど、父さんはカウンセラーの仕事をしていて人間不信になった俺でもすごく話しやすかった。
そんな父さんとの二人暮らしが慣れた時に父さんは結婚の話を俺にしてきた。俺は正直嫌だった。
だってやっと安心して暮らせると思ったのにそこにまた知らない人が入ってくる。それだけでもう僕にとっては恐怖だった。
だけど父さんが紹介した新しい母さんとなる人は優しそうで紹介している時、父さんはすごく幸せそうな顔をしていた。
父さんに恩しかない俺には自分で拒否権などないと思っ た。
一緒に暮らすことになってから新しい母さんには子供が二人いることがわかった。僕と同い年のと一個上のやつ。
正直、仲良くしたくなかった。子供は何でもかんでも聞きたがる。
父さんと家族なのに本当の父さんじゃないんでしょ?とかタバコの火傷の後をなにこれ変なのと言ってくる。
人の気も知らないくせに人の心を抉るようなことを言ってくる。
俺の周りはそんな奴ばっかりだった。
だから一緒に暮らしてからも父さんの前ではきちんとしたが、父さんがいない時は基本突っぱねてた。
今思うとその頃の俺を引っ叩きたいけどね。
初めて会った時も兄さんは
「初めまして!!僕さっきも言ったけど桜木律って言うんだ!!よろしくねっ!」
と言われても僕は無視した。
さっき父さんたちがいる時に自己紹介したからいいだろと思った。
兄さんは少し戸惑ったような顔をしていた。俺はその時点で母親とかに言うかなと言われても思ったけど俺に話し続ける。
「名前蘭っていうんだね。いい名前だね!そういえばお花でも蘭って言う名前のがあるんだけどね、すごく綺麗なんだよ!!」
あいつが付けた名前の話をされた俺はイライラして叩いてしまう。
あっ、泣くかなと思った。
だけど兄さんは泣かなかった。
でも涙目だった
「僕は蘭のお兄さんになるんだから泣かないんだ」
だって。
今思うとこれはもう尊いの一言に尽きる。涙目の兄さん…可愛かった。
俺はそんな言葉を信じられずにまた無視をした。一緒に暮らすようになってからも兄さんはめげずに話しかけてくる。その度に俺は無視をした。
でもある日パッと兄さんは話しかけてこなくなった。
話しかけてこなくなった理由はわからないけど俺にとってはどうでもよかった。
父さんの前では猫を被るということが日常になりつつあっだけど、環境が変わったせいかストレスで昔よりは少なくなったが俺はまた悪夢を見る頻度が増えてきた。
でも悪夢を見る夜はだいたい誰かが頭を撫でて背中を摩ってくれたから悪夢を見なくなったんだ。
その時は父さんがしてくれたんだろうと思っていた。
で父さんにありがとうって言ったんだけど、なんのこと?と言われた。
だから気になって一回狸寝入りをしたら頭を撫でてくれてたのは兄さんだってわかった。
その手はいつものようにすごく優しくて暖かかった。俺は父さん以外の人に頭を撫でられたことなかったからね...。
あと兄さんはタバコの火傷の跡を見ても何も言ってこなかった。だけど俺がいないところで泣いてくれていた。
あぁ、俺の為に泣いてくれてるんだなって俺は嬉しかった。
それがわかってからは少しずつ兄さんと話せるようになって義母さんとも杏ちゃんとも話せるようになった。
だから兄さんがいなかったら俺は変われなかったんだ。
兄さんがいたから俺は今幸せなんだ。
今では兄さんの写真集を作ろうと思ってるよだけどどうかな?と悩んでる。
まぁ、ちょっと今はその他に悩んでることがあるんだよね。
はぁー、もう一年早く産まれてればなぁ。
でも弟ポジションも捨てがたいから、もうちょいこのままの生活で。
だけど早く兄さんを俺のものだけにしたいな。
涙目の兄さんが一番可愛い。
俺のためだけに泣いてくれる兄さん。
今度はベッドの上で鳴かせたいな...。
高校の入学式に行った兄さんの帰りを待つそんな義弟の昔話と思い。
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