彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

まぁ

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心得違い 4

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◆◆◆◆

「玖未ちゃん、お先にいただいてるよ」
「若とこちらへどうぞ」

右京と私、野沢の前に玖未さんと若を招く。

本来なら台所を仕切れるであろう玖未さんだが、これまでの須藤のやり方をひとつも変えることなく、ただ一品だけをそっと付け加えておられる。自分が輪の中心となって、仕切ったり、皆から声を掛けられるよりも、一人で作業するのが居心地いいようだ。

「錦糸卵がたっぷりと入って、美味しいサラダです」

コクン…

マンションなら何か声が返って来そうだが、ここでは組員に注目されることを避けるように静かだ。もちろん、必要な会話はきちんとされるし、組員の名前もほとんど覚えられたようだが、自分がちやほやと話題の中心になることはお好きでない。

その中でじっくりと前を向いて進んで来られた。灰谷のところでは少しのアルバイト代をもらい、自分でスーパーでの買い物スケジュールを考えて、こことマンションを行き来する。

このまま玖未さんが須藤に入られるのは間違いないのだが、あの女が何故か繁華街の店へ現れた。暇潰しならいいですが、何か良からぬ思いがあるならば、早いうちにその芽を根っこから引き抜かないといけません。

ですから、今夜は聞き取りと練り歩きと参りましょう。須藤の目があると、女にも女を接客する店側にもしっかりと植え付けて、有ること無いこと話すことのないように釘を刺さねばなりません。

今夜はマンションで待つと言う玖未さんは、きっとキッチンでやりたいことがあるのでしょう。買い物してきた食材の整理が出来ていないのだと思います。いつも、冷蔵庫と冷凍庫に綺麗に小分けしたり、下ごしらえした物を入れておられますから。

「女がこれまで行った店は2店。入られますか?」
「いや。組員の聞き取りでいい」
「はい。では奥から歩くということでよろしいですか?」
「ん、女より店に釘刺し」
「そうだよね。あの女が一人で須藤に仕掛けて来られないんだから、悠仁の友達だとか言ったりするのに乗るなっていう釘刺しが必要だよ」

今夜も運転している右京の言う通りです。女が若のことを語ったとして…うちの店は話に乗るよりも内容を報告してくれなければならない。その徹底のために今夜は集団で歩きます。須藤が見てるぞ、聞いてるぞ、と。

「今日は今のところ、女が来てるという報告はありません」
「この前、調べたらケーキ屋を辞めてただろ?」
「プールの前でしたね」
「遊ぶ金、あんの?」
「さあ?その前の会社も1年続いていませんからね。大金を持っているとは思えませんが」
「そうだよな。23ってそんな年頃なんだよな…玖未ちゃんは8年も働いてる…どうしようもないことだけど…悠仁が幸せにしてやるからいいんだけどさ…ホントいい子だから俺たちも幸せにしてやりたいと思うよな」
「そうですね」

右京と私の話に若は一切口を挟まず、繁華街に入るとチラッと腕時計に目を向けられた。

玖未さんのところへ帰る時間を計算しておられるのでしょう。
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