彼の愛は不透明◆◆若頭からの愛は深く、底が見えない…沼愛◆◆ 【完結】

組と会社そして家 1

朝起きると、ソファーの前のテーブルに空いたお皿やグラスが置いたままで慌てて片付け始める…と

「おはよう」「おはようございます」

右京と野沢さんが来てしまった。

「…はよ…」

急いで片付ける私を見て、ふっと笑った右京が

「別に昨日のまま片付いてなくてもいいよ。玖未ちゃんが起きてなかったら俺が片付けるよ？」

と一緒にグラスを運んでくれる。野沢さんは

「朝食もまだのようですね。珈琲を淹れます」

と慣れた手つきで珈琲豆を取り出し、コーヒーメーカーにセットする。

「俺も飲む」
「…右京もパン焼く？」
「焼く」

右京は完全にここで朝食のつもりで来てるよね、いつもだけど。

「野沢さんは？」
「私は珈琲だけいただきます」
「食べたの？」
「はい。プロテインバーとバナナは食べたので」

そこへシャツのボタンを止めながら現れた悠仁が

「まず役所」

と野沢さんたちに告げた。

それぞれ手に持っていた物をそっと下ろした野沢さんと右京は、第三ボタンまで開けていたのをひとつ閉めると

「「おめでとうございます、若」」

ぴったり揃ったお辞儀を見せた。

「玖未さん、おめでとうございます」
「おめでとうございます、玖未ちゃん」

私にも同じように頭を下げた二人はすごい…どうして‘役所’って言っただけなのに…と思いつつ

「ありがとう…ございます？」

何だか丁寧な雰囲気に合わせて返事をする。その私の髪を撫でる悠仁に

「若、用紙の準備はこちらでします」

と野沢さんが言うと

「いや、俺と玖未のことだ。人任せにせず俺が取りに行く」

悠仁ははっきりと言った。なんか…嬉しいかもしれない…

「玖未、そのトマト食うのか？」
「あ…うん」

私は手に持ったままだった大きなトマトを2個丁寧に洗って角切りにしながら

「野沢さんは、これもいらない？」

と聞く。

「それはいただきます」
「ん」

野菜は欲しいんだよね。いつも通りここで朝食を食べる右京も、半分食べる野沢さんも嬉しそうに見える。

スライスチーズもトマトの角切りサイズに合わせて切ると、以前モールで買った4つのラテマグにトマトとチーズを入れ、バジルソルトとオリーブオイルを掛け即席のトマトサラダを作った。