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20 冒険者ギルド

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「なんだ、ヘンテコな格好したガキが冒険者だと、笑わせるぜ」

   そんな嘲りを含んだ言葉に振り向くと、身長2メートルほどの筋骨隆々とした狼っぽい獣族が立っており、眼があった。
   男は「へっ、俺?」と言う感じで自分を指差し、ブンブンと顔と手を横に振る。

   アレ?

「どこ見てやがる、コッチだ、このデクノボウ!」

   ふと下を見ると、身長1メートルほどの男、丸い耳に細長い尻尾、飛び出た前歯はきっと鼠獣族かもしれない。赤ら顔で酔っ払っているかも。ちょっと《鑑定》してみた。

=鼠獣人
   状態・酒酔
   鼠獣人の男=

   ルーナの時もそうだが人の鑑定って情報少ないな。

『イエス、マスター。レベルにもよりますがMND(精神力)INT(知力)の高い生物は無意識下で《鑑定》に抵抗します。おかげで現在マスターを他者が《鑑定》することは難しいでしょう』

「よう、豹獣族のねーちゃん、そんな奴より俺の方が頼りになるぜ、俺のパーティに入れてやるからこっちきな」

   よろよろとルーナの方に向かっていく鼠獣族。

「え、結構です。間に合ってますから」

   ルーナが速攻お断りをするが鼠獣族はルーナの手を掴もうとしたので思わずその鼠獣族の手を掴んでしまった。

「彼女は断った。無理強いはやめてくれ」
「なんだと、生意気なっ」

   鼠獣族の男は俺の手を振り払い拳を握る。

「あっ、フブキさん!」

   ルーナは俺が殴られると思ったのか声を上げる。俺はさっと右手を前に出し鼠獣族の拳、ではなく頭を掴んだ。

「このこのこのっ」

   鼠獣族は両拳を繰り出すが、リーチ差がありすぎて俺に届かない。

「くそくそくそっ」

   終いにはぐるぐると腕を回し出した。子供かこいつは。なんだか吉本◯喜劇の池◯めだかのお笑いの様だ。

「チクショウ、チク…うわ~~ん」

   あ、泣き出した。

「ちょっと、ニチュウ何してんだい!」

   突然ニチュウと呼ばれた鼠獣族は後ろから首根っこを掴まれ持ち上げられた。

「あ、姐さ~ん」

   ニチュウに姐さんと呼ばれたのはこれも獣族。二足歩行の虎、と言うくらい毛が生えてて獣よりな獣族、身長2メートルにムキムキ筋肉、そしてスイカップ。すげぇマジスイカップだ。防具の胸鎧からはみ出している。いてっ、なんだ脇腹が。横を見るとなぜかルーナがジャージを掴んで睨んでいる。

「すまんな、坊主、こいつ最近猫獣族の娘にこっぴどく振られてな、やけ酒入ってるんだ許してやっておくれ」

   姐さんはニチュウをヒョイと脇に抱えもつ。

「あんたら新人かい?アタシはララっていう冒険者だ。普段はテルテナのリッカって街を根城にしてるが、しばらくはここにいるんで詫びも兼ねて困ったことがあったら相談にのるよ」

   ニカッと笑うとララはニチュウを小脇に担いで出て行った。

「ほら、ニチュウしっかりしな」
「うう~姐さ~ん」



   なんだったんだ、今の。しかし鼠獣族が猫獣族に惚れるのか、異種族恋愛可能なんだ、振られたけど。

「フ、フブキさんはっ、大きい方が好きなんですかっ!」

「なんの話だ、ルーナ」

   なぜか真っ赤になったルーナは俺のジャージを掴んで相変わらず睨んでいる。それよりもだ。

「パーティって申請とか必要なのか?」

   訳のわからないルーナを放置して俺は職員に尋ねた。

「パーティで依頼を受ける時に、全員分のギルドカードを提出してもらえば共同受注処理をします。例えばゴブリン5匹の依頼であったとして1人の討伐数が2、もう1人の討伐数が3であれば合計で達成となります」

「パーティ名をギルドカードに乗せることもできますよ、あ、フブキさんはテイマーですよね。従魔の名前も乗せておいた方がいいですね。街によっては義務化しているところもありますから」

   職員が手を差し出したのでギルドカードを渡す。
「名前と種類をおっしゃってください」

「ジライヤ、ハイブラックウルフとツナデ、フォレストマンキーだ」

   少し小声で伝える、案の定ハイブラックウルフのところで職員の手が止まる。ブラックウルフは珍しくなくともハイブラックウルフは珍しいと思ったから、周りに聞こえない方が良いと思った。
   職員も気を取り直したか、カタカタと入力して行く。

「はい、できました、間違ってないか確認してください」

   俺は受けとったギルドカードを見た。

   名前/フブキ
   年齢/17
   種族/人族
    級  /10
   職業/テイマー
   従魔/ジライヤ[ハイブラックウルフ]
            ツナデ[フォレストマンキー]
   賞罰/なし

   ただの鉄のプレートだな、そこに不思議な光る塗料?で刻印されてる感じ。

「間違いないな、ありがとう」

   ううう、と唸るルーナの頭を撫でてみる、あジライヤじゃないっての。やっちまったか?でも耳がピクピク尻尾がぷるんぷるん揺れだした。

「ほら、ルーナ機嫌直せよ、依頼みに行くぞ」
「ふぁい」

   ルーナの手を引っ張って依頼が貼られている場所に行く。

   大きなボードに羊皮紙?紙じゃ無さそうだ。さっきの用紙も何かの革っぽかった。

   依頼票の上に数字がある。これがこの依頼の級だろう。俺たちは10級だから9級まで受けられるか。ダークラフレシアの花びらとか…いやモンスターランク高かったから級上だろう。

   なんだ、10級ろくなのないな。ゴミ集め、掃除、荷運び、皿洗い…これ冒険者の仕事なのか?
   9級は薬草か、冒険者らしい依頼だ、この辺にするか。

「ルーナはどれにする?、俺はこの薬草集めにするよ」

「え?あの、一緒じゃ…」

   ああ、そういえば一緒にとか言ってたな。まあいいか。

「じゃあパーティってことで、こいつでいいか」

   泣きそうな顔から一変笑顔で「はいっ」っと返事をされた。
   この依頼は薬屋店主の依頼か。じゃあ剥がして受付へ持って行く。

「ルーナ、ギルドカードくれ」

   ルーナから預かったカードと俺のカードを依頼票と一緒に受付に渡す。
   職員はまたカタカタと入力した後カードと依頼票を渡してきた。

「依頼の期限は3日ですね。裏通りのクエルの薬屋に依頼票を渡して詳細を確認してください。初依頼頑張ってくださいね」

   返してもらったギルドカードの裏を見ると光る文字で『9級・薬草納品』と書かれていた。

「フブキさん、行きましょう。裏通りはこっちです」

   名前が判っているので《マップ》で捜せるのだが、まあいいか。あ、《オートサーチ》のレベルが上がった。

   村の《マップ》を見ると表通りは店なんかがある。街の真ん中に堀があった。村にしてはでかいと思ったがこの堀と川に囲まれた場所が元々の村だろう。人族や冒険者がやってくる様になって堀の外に新たに塀に囲まれた部分が増築された感じだな。微妙に建築様式が違う。

「あ、」
「どうしました?フブキさん」

   俺は一軒の店を見て声を上げてしまった。ルーナに指差して店を示す。

「あれって服屋かな、先に服買っていいかな」

   そう、俺の紺のジャージはもれなく人目を引いているのだ。

「そうですね、そうしましょ」

   2人で服屋に向かった。





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