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25 獣族って…

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   食堂の朝ご飯は黒くてちょっと酸っぱいパンと野菜の入ったスープ、蒸しテトポだった。蒸しテトポにマヨネーズ付けて食いたい。テトポはもろジャガイモだ。

   食事半ばでルーナがやって来た。

「おはようございます、フブキさん」

「おはよう、ルーナ」

「今日はどうします?」

   運ばれて来た食事に手をつけながらルーナが聞いてきた。

「依頼を受けてから、道具屋と武器屋に行きたいな。まともな武器持って無いから」

「むぐむぐ、ごっくん。フブキさんの使ってたのブレードディアの角ですよね」

「ああ、切れ味はいいんだがな」

「じゃあ食事が済んだらすぐ出かけましょう」

   俺は先に食事を済ませ、宿のオヤジにもう一泊する事を伝え宿代を払う。一旦部屋に戻ってジャージとジライヤの皿をアイテムボックスに収納する。ちょっと思い立ってブレードディアの角をコピーしておく。ショルダーバックにビタン水ペットボトルとタオルを入れ肩にかけた。ジライヤ達を連れて部屋を出る。
   ルーナはすでに食事を終えて宿の入り口で待ったいた。

   冒険者ギルドは朝という事で人が多い。

   10級はやはり雑用ばかりで9級は薬草採取が多い。モンスター討伐系は8級以上だな。受注できん。お、ビタンの実納品ってのがあるぞ。7級?えらく上の級じゃあねえか。5個納品で100、いや書き直して120テナ、以後1個につき20テナ、依頼者は『カビィ』…店とかじゃなくて個人か。7級の中じゃ安い依頼だな」

「ビタンはベルーガの森の特有種ですから。冒険者ギルドでは7級以上からベルーガの森に入る事を推奨しているみたいです。私達獣族なら問題ないですがレベルの低い人族が不用意にベルーガの森に入ると…」

   ああ、すぐ死んじまうって事か。俺は川沿いを進んだから運良く無事で済んだんだ、ほんとラッキーだったよな。

「ビタンの実、一杯あるんだが級が足らないんじゃ仕方ないか」

   ピンッ

   ん、なにかゾワっとしたぞ。

「ちょっと、そこの君、豹獣族の彼女連れの人族の君!」

   受付カウンターの方から声がかかった、もしかして俺のことか?振り向くと白いウサギ耳をした女性職員が俺を指差している。俺は自分を指差してみた。するとウサギ耳の女性職員は頭がもげそうな勢いでブンブン頷く。

「そんな~、彼女なんてぇ…」

   隣でルーナがなにか言いながらモジモジしているがなんだろう?

「そう君、ちょっとこっちに来て」

=兎獣人
   状態・興奮(微)
   兎獣人の女=

   鑑定すると興奮(微)というのが付いている。カウンターに乗り出し気味で手招きをして来た。注目を浴びているのでサッサと済ませよう。無視するとカウンター乗り越えて追いかけて来そうだ。

「ルーナ、適当な依頼探しておいてくれ」

   俺はカウンターに向かう。

「なにか用か?」

「あなた今ビタンの実を持ってるって言ったでしょ」

   この騒がしさとあの距離で俺の声が聞こえたのか、む、ウサ耳の聴力侮り難し。

「お願い、あの依頼受けて、もう10日も出してるけど誰も受けてくれないの!あ、私カビィって言うの」

   あのビタンの実の依頼者か。

「悪いが俺は10級なんで7級の依頼は受けられん」
「え、なんで10級の冒険者がビタンの実を持ってるの?」
「俺はベルーガから来たからな、途中で採ってきた。ツナデの好物だし」

   ベストから顔を出しているツナデの顎を指で撫でると、こしょばそうに俺の指を掴む。
   昨日からベストの中が気に入った様だ。

「あれ、フォレストマンキー?でも白い」

「ツナデは特別なんだ」

   さらにコショコショすると、ベストの中から出てするすると登り後頭部に張り付いた。

『モウ、フブキコソバユイ』

「依頼は受けられんが素材として売ったらいいんじゃ「それはだめよ!」…はい」

   勢いに負けて返事をしてしまった。

「売却された素材は競売にかけられるから手に入らないの、だから…」

   ショボンとするカビィ。

「そう言われてもなぁ」

「なにか困り事かい?」

   振り向くとそこにスイカップ、げふん、いや身長差のせいで目の前に来るんだ、仕方なかろう。
   昨日の虎獣族の、名前、なんて言ったっけ?

「ララさん」

   そう、ララだ。カビィが呼んでくれたんで思い出せた。

「彼、ビタンの実を持ってるんだけど10級なんで依頼を受けられなくて」

   なんかその言い方だと俺が依頼を受けたがってる様に聞こえるが…

「ふーん…」

   ララが腕を組んで考える素振りをする、そのポーズだとスイカがさらに押し上げられて、げふんげふん。

「ならアタシがパーティーとして受けてやんよ、アタシは5級シルバーだから問題ない。ギルドカードだしな」

   そう言ってララはスイカップから銀色のカードを取り出す。おお、そこに挟まるのか、って!脇に痛みが。
   横を向くとルーナが睨んでいる、あっそうか。

((マスター、その閃きは大外れです))

「ルーナとパーティーなんでルーナの分もいいか?」

   ララがルーナを見下ろすと、ルーナの肩がビクッとする。豹と虎ってネコ科同士だけど仲良くないのか?ララはニヤッと笑い

「いいよ、嬢ちゃんギルドカード出しな」

「ほら、ルーナ、カード」

   なぜかベストの脇を掴んだまま涙目でララさんを見ているルーナを急かす。突然後ろから、ダン!と言う音と風圧がきた。
   俺の頭上をカビィがジャンプで越えて以来ボードの前に飛んでった。ピッと依頼書を剥がすと少し屈む。

   ドン!

   ひとっ飛びでカウンターに戻ってきたカビィは何事もなかった様にニッコリ微笑み依頼を処理しだす。依頼書いるのはわかるが、飛んでいくか?流石は兎獣族、ジャンプ力パネエな。

「ではパーティーで依頼受注っと、納品お願いします」

   若干ジト目でカビィを見るがなに食わぬ顔でスルーしやがった。ララがハハハっと豪快に笑っている。ルーナは相変わらず涙目で睨んでるしなんなんだ。もうサッサと済ませよう。
   ショルダーバッグから出すフリをしてビタンの実を5個カウンターに置く。
   カビィの眼がカッと見開かれ、思わず後ずさる。

「で、ではビタンの実5個で120テナです」

   ギルドカードと120テナを受けとった。

【達成】○10級・0/0/0
                9級・1/0/0
               (8級・0/2/0)
               (7級・1/0/0)
【討伐】ー


   いいのか、達成度(優)で…俺たちはいいけどよ。

「んじゃ、またな、えっと…」
「フブキだ、ララ。これは礼だ」

   俺はビタンの実を去っていこうとしたララに放り投げる。パシィッと掴んだビタンを見てにッと笑う。

「ああ、遠慮なくもらっとく」

   ララは左手をひらひらさせながらビタンの実をシャクリ、と齧った。

「う~っ、余分にあるなら納品してくれれば…」

    カビィは無視してルーナに向かう。

「依頼見つかったか?」

「う、はい。薬草採取ですが、昨日のとはちょっと違って1籠以上の納品依頼です」

   俺たちは結構邪魔している様なのでその依頼をカビィに受注処理してもらう。

「フブキさんは籠を持ってます?薬師ギルド指定の薬草籠、なければ貸し出しますよ」

   カビィが出した籠は昨日クエルさんとこで渡されたものと同様の籠だ。

「いや、持ってる」

「そうですか。では依頼書とカードお返ししますね。頑張ってください」

   胡散臭いカビィの笑顔に送られギルドハウスを出る。結構時間を食ってしまった。
   ジライヤが待ちくたびれたのか足元で丸まっていた。

「待たせたな、ジライヤ」


   なぜか拗ねているルーナの手を引っ張って道具屋を探して大通りを進んでいく。





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