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32 ビッグベア

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   前方100メートルにビッグベア発見。
   でかいな、立ち上がると2メートル以上ありそうだ。

=ビッグベア
 MR・D
 状態・普通
 熊系モンスター。力が強く大きな体の割に足が速い。スキル《咆哮》や《爪の一撃》など、スキルを巧みに使う持つ。木ノ実や魚が好物。まあまあ美味い=

「小さいですね、足跡の主とは別のようです」

   藪に潜みながらルーナが小声で伝えてきた。あれで小さいのか。足跡の主とは別、と言うことはもう1匹いるのか。アクティブマップに表示はないから少し離れているのかな。

   スキルの《咆哮》を使われると厄介か。

「向こうに気付かれる前に拘束したいな、向こうも《咆哮》持ちだし…」

「同じスキルを持っていると効果をキャンセルしやすいですし、ジライヤちゃんの《咆哮》が効かないかも」

   へえ、スキルってそんな効果があるのか。

『イエス、マスター。全てのスキルではありませんが、同スキルを所持し、さらにレベル差があればキャンセルできる事があります。ただ必ずではなく、失敗することもあります』

   確率なのか。レベルが高ければ成功率が上がるかんじ。

「まあ、いつものパターンで行ってみるか。ジライヤの《咆哮》からのツナデの《蔓》で拘束な」

『わかった』
『ウチモ頑張る』

   2匹の頭を撫でる。ツナデは地面に降りて後方からの遠距離攻撃だ。

「よし、行くぞ」

   俺の合図でジライヤが飛び出す。

「ガウッ」

《咆哮》にビッグベアが、ビクンとなった。シュルシュルと蔓が巻きつく。
   ルーナと俺も飛び出したが、ビッグベアが吼えた。

「グワゥッ」

   俺の身体も一瞬ビクッとなったものの止まらずに剣を構えて走ったが、ルーナは完全に立ち止まった。向こうも《咆哮》を放ったのだ。俺はキャンセルできたようだが、ツナデが「キキッ」と声をあげ蔓が静止した。
   ルーナとツナデがビッグベアの《咆哮》をキャンセルできず硬直している。
   ビッグベアは立ち上がり蔓をブチブチと引きちぎった。
   ジライヤはそのまま突っ込んで《突進》で頭からビッグベアに突っ込むもそのまま受け止められてしまった。

「ジライヤ退がれ!」

   振り下ろされた前脚の《爪の一撃》を躱し、横に飛び退く。

「《ストーンバレット》」

   石の弾丸は命中したが、分厚い毛皮を貫通するには至らなかった。
   ビッグベアが魔法を放った俺の方をちらりと見たが、すぐにルーナに向かって走り出す。
   くっ、動けないやつを先に狙うか!
   俺はビッグベアの進行方向、ルーナの方に駆け出すが、ビッグベアの後方から黒い砲弾よろしくジライアが《突進》をかけた。
   正面から受けて立った先ほどと違い、斜め後ろからの突進にビッグベアは耐えきれず転倒した。

「よし!」

   そのままビッグベアの首めがけて剣を振り下ろす。

   ガキィィン

   つっ!俺の剣が前脚で弾かれた。《爪の一撃》だろう、しかしビッグベアの爪は折った。
   立ち上がれないビッグベアの喉に向けて今度は剣を突き出す。中心を狙ったつもりだがもがくビッグベアに狙いをズラされた。

『もっ1回!』

   ツナデの《蔓》がビッグベアの両前脚に絡みつく。そこに走り込んできたルーナの短剣が一閃するが、前脚を軽く斬るに止まる。だがビッグベアはルーナに意識を向けた隙に、俺はもう一度突きを繰り出した。

「ギュガァ」

   喉に完全に突き刺さった剣を力任せに振り抜くとビッグベアの首は3分の2ほどちぎれ血が勢いよく吹き出した。俺は咄嗟に飛び退く。

   ビッグベアは数度身悶えしたがようやく事切れた。

『ジライヤのレベルが上がりました。
 ツナデのレベルが上がりました。
 ツナデのレベルが上がりました。
 ツナデのレベルが上がりました。』

 俺はビッグベアの死体を見る。

「うーん、ジライアの《咆哮》はキャンセルされたか。まあ、なんとかなったし、次は別の手で行くかな」

「ごめんなさい、フブキさん、あまりお役に立てなくて」

   ルーナが申し訳なさそうにしている。

「いや、あの一撃でこいつの意識がそれたし、十分役立ってるぞ?解体は川辺でするか」

   昨日のワイルドボアよりでかいように思う。何百キロあるんだろ。
   まだ他にもいそうなのでこいつはこのままアイテムボックスに収容する。
   血の匂いもするしすぐに離れることにする。

 戦闘のせいで足跡がわからなくなったようだが、俺には《追跡者の眼》のおかげで魔力残滓を追いかけられる。でも一頭狩ったから依頼はクリアだな。


 
 一旦川まで戻ってビッグベアを解体することにした。

   戻る途中で小さめのワイルドボアを発見、ラッキーだ。こいつを捕まえれば今日の依頼は一旦終了ってことだな。

「フブキさん、あれはまだ小さい方なのでできれば見逃しましょう」

「え、なんで?」

   ルーナがストップをかける。

「モンスターの中でもビッグベアのように完全に害獣とされるものならサイズに関係なく狩ることをお勧めします。
   でもワイルドボアのような、純粋に食料として獲物になるモンスターは成獣になってから、と狩人ハンターの心得として教えられます。
   狩り過ぎればかえって自分たちの首を絞める事になる。よほど飢えている場合は仕方ないですが」

   それは狩人ハンターの理屈で冒険者の理屈ではないのですが…と苦笑いするルーナ。

   理屈は解る。獲り過ぎれば生態系も崩れるし。
   しかしこんなモンスターがうようよいる世界でもそう言う考えはあるんだと、ちょっと不思議に思う。

「まあ、まだ昼前だし、他に探す時間もあるから」

   いざとなったら昨日のワイルドボア(コピー)があるから問題ない。

   俺たちは気配を消したままワイルドボアから離れ、川に戻った。




「じゃあ解体するか」

   アイテムボックスからビッグベアを取り出し、二人掛かりで解体を始める。

「これは去年生まれた子供だと思います。足跡の主ではないですが、あの大きな足跡はこれの親かもしれません。子持ちの母熊は凶暴ですからできれば会いたくないですね」

 そんな話を聞きながら解体をする。このサイズで1歳の子供か。

「親なら3マルトほどでしょうか」

 4.5メートルも、そんなにでかいのか。
   解体を済ませ少し早いが昼食にするか。今とった熊肉でも焼いてみるかな。

「じゃあ薪になりそうな木、拾ってきます」

「ああ、頼んだ、こっちは下拵えしておく」

   石を積んで簡易の窯作成、これも馴れたな。熊肉は塩胡椒刷り込んでしばらく置いておく。
   鍋に水を入れて出汁がわりの乾燥肉を浸して、以前獲った事のあるキノコをコピーして刻んで入れておく。あとはルーナが戻ってきてからだな。


   そろそろルーナが戻ってきてもいい頃だよな。

   膝に頭を乗せてまったりしていたジライヤが耳をピクっと動かし勢いよく立ち上がる。

『何か来る、強い奴』

   俺は《アクティブマップ》を常時表示にする。それらしい赤い点はないな。
   《アクティブマップ》はLV1になってサーチ範囲が半径500メートル迄縮んでしまったからな。

『向こうから来る』

   ジライヤが川を背にベルーガの森に向かって警戒度を上げる。
   とりあえず、周りのものが邪魔にならないよう片付ける。
   ルーナはどこまで薪を拾いに行ったのか、《アクティブマップ》には表示されない。

   俺は剣を抜きジライヤが睨む方向にゆっくりと踏み出す。
   ツナデも俺の後ろをゆっくり付いてきた。

   向かう方向から何やら鳥っぽい獣の鳴き声や羽ばたき、ザワザワと樹々の揺れる騒めきが聴こえて来る。

『フブキ、来る』

   ジライヤが俺の前に出る。その時《アクティブマップ》の端に赤い点が映し出された。





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ステータスはタップすると詳しい説明がポップアップするシステムなのですがフブキはナビゲーターが答えてくれる為その事に気付いてません。
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