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38 出立

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ジライヤが《メタモルフォーゼ》でサイズ変更するシーンを2箇所追加してます
他は大きな変更はありません。
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 門から見えない所で大八車を出し、上にキラーグリズリーとワイルドボアを載せようと思ったらワイルドボアでもギシギシいいだした。

 ツナデに頼んで蔓で補強してもらったがどうにも不恰好だ。
 錬金術で形状を整えるか。

『スキル【錬金術】のレベルが上がりました。レベル3では物質の硬質化と軟質化が可能です』

 なんだかタイミングが良すぎる気もするがちょうどいいのでさらに【硬質化】で硬くする。これでキラーグリズリーを載せても大丈夫だ。あまり見られたくないので麻袋を広げて上からかける。

   進化でデカくなったジライヤとハーネスのサイズが合わなくなっている。
   このデカさのまま村に入ると驚かれるだろうし、ここは小さくなってもらうか。

「ジライヤ、ムル村の中ではハイブラックウルフの時の大きさで過ごせるか?いきなり大きくなってたら村の人に変に思われるし」

『わかった、小さくなる』

   ジライヤがハイブラックウルフ、ほぼピレネー犬サイズになったのでハーネスに繋ぐ。
   俺が後ろから大八車を押し、村に向かう。いやマジで重いな。キラーグリズリー何百キロあるんだろう?
 ガラガラと第八車を押しながら冒険者ギルドの玄関横に止める。背中にはポッドの籠を背負っているのでなんか怪しいな。

「ジライヤとツナデはここでちょっと待っててくれ」

 俺は一人中に入り職員にデカすぎて持ち込めないことを伝えると、横から馬車や荷台ごと搬入できると教えてもらい、そっちに回った。

「よう、今回はデカブツを仕留めたのか。そんで昨日戻ってこなかったのか?」

 出迎えてくれたのはジコ、宿の食堂にワイルドボアの内臓煮込みを目当てに昨日きたんだろうな。

「こっちのワイルドボアは依頼の分なんで、血抜きしかしていない。でこっちは依頼外なんで買い取ってもらえるかと思って持ってきた」

 覆いを退けてジコにキラーグリズリーを見せる。

「こりゃまたでかい、ビッグべ……アじゃねえ、キラーグリズリーかっ」

 驚いたジコが思わず大きな声を出したので他の職員も振り向く。

「どうやってこんなデカブツを、兄ちゃんとあの豹獣族の娘二人でやったのか?」

 俺は川原で穴を掘って水攻めにしたと説明した。
   実際のところ、闇雲に連発した《ウィンドランス》はほとんど効果がなかったようで、キラーグリズリーに傷がないのだ。

「大したモンだ、兄ちゃんは剣士かと思ったが魔法使いだったか。こいつなら4万5千、いや5万出せるぜ」

「魔石は抜いてあるがいいか」

「ああ、普通素材の買い取りは魔石抜きの金額だぜ」

「ならそれでいい」

「じゃあこいつを受付に持っていきな。ワイルドボアの納品証明とキラーグリズリーの売却証明だ」

 ジコは何かを書いた木札を二枚差し出したので受け取りギルドの中に入る。
 ジライヤにはもう少し待っててもらうことになるので頭を撫でておいた。

 ワイルドボアの納品は6級1万5千の依頼で、ビッグベアの討伐は6級で一匹1千の依頼だった。
 俺はジコから渡された木札と俺とルーナのカード、フォレストスパイダーの牙と毒袋、グリーンバイパー二匹を入れた麻袋をカウンターに置く。
  
 俺の討伐数が
【討伐】ゴブリン・9、フォレストスパイダー・1
            ビッグベア・1、キラーグリズリー・1
    オーク・2、グリーンヴァイパー・2
    ワイルドボア・1

 ルーナの討伐数が  
【討伐】ゴブリン・2、ジャイアントマウス・2

 受付の職員は「キラーグリズリーは4級の依頼なのに…」とかブツブツ言ってたが。
 結果は8級ゴブリン11で1100、グリーンヴァイパー2で200、素材代3000、ジャイアントマウス2で200。
 7級はオーク2で400、フォレストスパイダー1で500、素材代1000。
 6級がワイルドボア納品依頼で1万5000、ビッグベア討伐依頼1で1000。
 キラーグリズリーは4級だった。討伐1で1万、素材代はジコが言った5万。

【達成】10級・0/0/0
             9級・5/1/0
             8級・0/8/0
          ○7級・1/6/0 
             6級・1/1/0
          (5級・0/0/0)
          (4級・0/1/0)

 合計8万2千400テナだった。金を受け取った後ジライヤを迎えに行き宿に帰る。
 途中横道にそれ人気がないことを確認し大八車を収納する。

   宿の部屋に入り背負っていた籠を降ろす。ポッドにはなんの変化もない。

   俺は黒い革のコブクロを《コピー》で作り4万テナを入れてルーナの荷物に乗せた。

   ベッドに持たれて座り込むとジライヤが右側にピッタリと寄り添ってきたので背中を撫でた。
   ツナデは左脚に寄りかかる。

   受けた依頼は達成した。このままこの宿であと6日こもるか、もしくは移動するか。
   移動するとしてどこに行くのか。

   のか……おかしな事を考えてる。俺は雪音を探す為、ラシアナ大陸へ行くんじゃなかったのか。だからここで少し金を稼いでテルテナに向かう予定だった。予定通りならもうこの村を出発していたはず。

『私も一緒に連れて行ってください』

   ルーナはそう、言った。
   ポッドをじっと見る。

「そうだな、行こうか」

   ぼそりと呟くとツナデとジライヤが顔を上げた。

「明日、この村を出てテルテナに向かおう」

『わかった』
『ええよ、明日出発やな』

   俺は夕食の時間まで2人を撫でて過ごした。







   食堂に降りるときに、鍋とワイルドボアの内臓を持って行った。

「親父さん、ちょっといいか」

「なんだ」

「明日村を出るんだが、こいつでこの鍋いっぱいに臓物煮込みを作って貰えないかと思って。金は払う」

   鍋と内臓を渡すと親父は内臓を確認した。

「新しいな、いいだろう。作ってやるよ、金はいらん。ワイルドボアの依頼受けてくれたのお前だろう。ちょうど届いてこれから仕込みをするところだ。一緒に作ってやる。明日の朝食の時に取りに来い」

「ありがとう」

   アイテムボックスに入れておけば後でルーナに食わしてやれる。

「今日の夕飯はワイルドボアの甘辛炒めだ、座って待ってろ」

   親父は俺の背中をバシバシ叩いてから厨房に引っ込んで行った。
   痛えよ。







   食後部屋でジャージに着替えて剣の手入れを…と思ったがそもそも鉄じゃないので錆びたりしないのか。ブレードディアの角って何で出来てるんだ?とりあえず抜いて見る。
   今日はほぼ魔法で攻撃してたからあんまり使ってなかった。

「…寝るか」

   ベッドに入ると珍しくジライヤがベッドに上がってきた。ツナデはいつものことだ。

「ん、一緒に寝るか」

 そういうとジライヤが小さくなってシーツに潜り込んできた、これはいいかも。

   俺はジライヤとツナデに挟まれ眠りについた。
   ケモノ臭いのにも慣れたな。










   テシテシ、ぷにー

『フブキ、朝』

   ベシベシ、ぶにー

『フブキ、お腹空いた、ごはん』

   朝2人に起こされるのも日課になった気がする。しかも小サイズな肉球は柔らかいぞ。
   んーっと伸びをしてからベッドから降りる。同じく飛び降りたジライヤはピレネー犬サイズになってしまった。



=メディカルポッド〈ルーナ〉
 フブキの固有スキル《メディカルポッド》により作成された治療用ポッド。現在個体名〈ルーナ〉の肉体を残存細胞にて再構成中。終了まであと127時間=

   メディカルポッドに特に異常はない。顔を洗ってから服を着替える。革鎧は朝飯の後でいいか。

「じゃあ飯に行こうか」


「おう、きたか、今朝食を持ってきてやるから座っとけ」

   親父は当然のようにツナデとジライヤにも朝飯を出してくれる。
   ちょうど食べ終わる頃に親父が鍋を持って現れた。

「ほら、臓物煮込みだ。食う前に火を通せ。今日食わなくとも一度火にかけろよ。でないと腐るからな。あとこいつは昼に食え」

   そう言って出して来たのは蓋つきの四角い籠だった。中はパンに具材を挟んだドッグというかバーガーっぽいものだった。

「親父さん」

「テルテナに行くなら次の村まで2日はかかる。まあこれで2食はまともなもんが食えるだろ」

   バシバシ肩を叩かれた。
   立ち上がり親父に頭を下げる。

「ありがとうございます」







   世話になった宿を後に次の村を目指す。
   生きるのに厳しいこの世界で優しい人の多い村だった。もう来ることはないだろう村を一度だけ振り返り、背負い籠の位置を直してから次の村を目指し歩き出す。




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ワイルドボアは討伐だと7級ですが納品だと6級の依頼になります。丸ごと運ぶの大変ですから。
通常は解体して肉と皮とか持てる分だけ持って帰ってくることが多い。
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