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46 ダヤン革加工店

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2017.08.20【修正】 グレーハウンドをグレーファングに変更しました。
以後〈ファング〉は狼系〈ハウンド〉は犬系という設定でいきます。
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「店主はいるか?」

   扉を開け中に入ると皮と獣の匂い。慣れないと結構鼻にくる。
 ルーナとツナデはジライヤに乗ったまま俺の後ろをついてきた。

 声をかけると奥からドワーフの男が出てきた。

「なんだ、客か」

 確かにドワーフだと思う、思わず鑑定してしまったが間違いない。
 ドランは俺の中のドワーフのイメージ通り筋骨隆々だったのだが、目の前のドワーフは細かった。この世界には細いドワーフがいるんだ。

「えっと、ダヤンさん、でいいのか。武器屋のドランに紹介されたんだが」

「ほうほうほう、ドランの紹介とな、珍しいこともある。わしがダヤンだ。で何が入り用だ?」

 目を細めて俺を上から下まで眺めてきた。
 ルーナがジライヤから降りてトトトッとダヤンの前に行くと、さっき購入したナイフを見せる。俺は預かっていたポーチも見せた。

「この子用で剣帯が欲しいんだ。左右にこのナイフと前にこのポーチを取り付けられるようなやつで」

 店主はポーチとナイフを受け取り右に左にひっくり返しながら品を確かめルーナを見る。

「ちょっと待っとれ」

 店主は棚を物色して幅がまちまちな細長の革を数本取り出す。

「おチビさん、ちょっときな」

 おいでおいでをされて駆け寄っていくルーナ。ダヤンはルーナの前に片膝をつく。

「手、挙げてみい」

 素直に手をバンザイ状態に挙げたルーナのウエストに、手にした細長い革を巻いてみてはブツブツ言いながら、また別の細長い革を巻く、というのを繰り返した。

「このおチビさんにゃあ……このポーチはやや大きいな。前だと邪魔になるから斜め後ろにつけて、使う時に前に引っ張ってくるようにするか。最初からポーチと鞘を重ねて横につけるか……んー慣れんうちは抜刀時にポーチを切っちまうか?」

 また別の細長い革を巻いて具合を確かめるように引っ張る。

「それかナイフを二本とも同じサイドにつけるかだな。あとはこうベルトを二本どりにしてポーチと剣は別にしてポーチが動かせるようにするのもいいか。これだと最初のとは違ってナイフがあってもポーチは動く。」

 細長い革を色々取っ替え引っ替えしながら説明をしてくれたが、どれがいいかよく分からない。
 悩んでいると男は細長い革を後ろで軽く括り脇に二本並べてナイフを差す。

「おチビさん、これだと片方が逆手持ちになるがどうじゃ」

 ルーナは左腰に差されたナイフを両手で抜く。左が逆手持ちになるが、手の中で器用にくるんと回し順手に、今度は両方くるりと回し両方逆手持ちに、くるくるくると回して鞘に収める。回転多くないか。

「これでいい!」

「ほお、器用なおチビさんじゃ。この歳でナイフの扱いに長けておるとは」

「ハンターだった父親に仕込まれたんだ」

 ということにしておこう。

「獣族の子供は歩き出すと共に戦うすべを仕込むというからな。よし、じゃあ次は皮じゃな」

 当てずっぽうだったが事実なのか?

 オススメは強度のあるリザード系の皮を柔らかいラビット系の皮で挟み込んだ合革製でリザードの皮が伸びやすいラビットの皮を補強しつつつけ心地は柔らかいというのでそれにした。

「成長も考えて少し長めにするかの。金額はまあ、600テナでどうじゃ」

「んー、もう少し安くならないかな」

 ドランに教わった通り値切ってみた。

「ハハ、ドランの奴に吹っかけられたか?普通はあやつほど吹っかけはせんよ。まあ500これが限度じゃ」

 え、じゃあドランから吹っかけられたまま買ってたらえらい損だった?おお、やばい。相場がわからないのは辛いな。

「他にはいらんか?」

 そう言われて俺はポーチからスローイングナイフを取り出し見せる。

「スローイングナイフを仕込む場所は作れないか?」

 ダヤンはスローイングナイフを手にとって眺める。


「大人ならまだしもおチビさんのサイズじゃスローイングナイフまでは無理だな、後ろにっつても幅が足らんし……ん、ああそうだ手甲なんかどうだい。こう左右共に外側に一本づつ、ちょっとした防御効果も得られるしよ」

   暗器仕込んだ防具って感じか。いいかもな。

「だったら手甲と別に腕甲…こう前腕と上腕の部分も作ると4本収納が可能にならないか。動きを考慮して肘は開けて」

「ふむ、いいかもしれん。そうじゃ、スローイングナイフを投げちまった後の防御力も考えたら鋼を仕込んだ方がいいな。だが重さを考えたらおチビさんには木板かいいとこか。だがないよりマシじゃろ」

   木だと強度に不安があるか、ある程度ステータスがあがれば重くても問題ないんだろうが。まあ出来上がってから俺が錬金術で硬化すればさらにいいかも。


   そんな風に親父と話をしているとジライヤとツナデは退屈して足元で丸まって寝ていた。
 剣帯と手甲ほか合わせて2500テナで作ってもらうことになった。

「明日の昼にはできる。ほれ」

 木札を渡されたのでショルダーバックにしまう。

「そうだ、えっとダヤンさん。この皮買ってもらえないか」

 俺は背負い籠ごとカウンターに置く。
 ダヤンは籠から皮を取り出してカウンターに並べていく。

「ん、こいつはブレードディアの角か、坊主、こいつも売り物か?」

「ああ、そのつもりだけど」

「だったらわしに売らんか」

「いいけど何に使うんだ?」

「ブレードディアの角は魔力を通すと切れ味が増す、骨でも簡単に断つが、ロックリザードの皮でも断ち切るから加工にもってこいなんじゃ。この辺りじゃ手に入らんからな」

 魔力を流すと切れ味が増す?今でも切れ味いいのにさらに増すのか。今度試してみよう。

「そんな固そうなものでの切れるなら普通の砥石で研げるのかな…」

「何をゆうちょる。ブレードディアの角は魔力を流せば刃が整うから研ぐ必要なんかないぞ。まああんまり欠けさせてばかりおると細くなっていくから気をつけんといかんがな」

 おお、不思議アイテムでした。俺がボソッとつぶやいた言葉にダヤンが答えてくれた。魔力流せばいいのか、なんて便利。作ってよかったかもこのククリ。

 ダヤンにはブレードディアの角2000、ビッグベア1枚9000、グレーファング1枚3000、グレーウルフ5枚7000、ブレードディア1枚3000、ワイルドボア2枚1万、ホーンラビット5枚2000だった。

 合計36000から2500を引いて33500テナを受け取る。ナイフで減った資金を少し取り戻した。懐が寂しくなると宿を変えないといけないかとちょっと心配だった。

「どれもこれも傷がない、坊主は随分腕のいいハンターじゃな」

 今俺が別個体として出せる毛皮はこれで全部だ。数を増やそうとすると全く同じ形の皮になるので怪しまれないように一箇所で売れる最大数だな。
 ちなみに肉はワイルドボア、ブレードディア、ホーンラビット、携帯食の干し肉、おまけでサーケマース。あ、ワイルドボアは内臓も出せるな。ビッグベアとキラーグリズリーは《記憶》してないんだ。それどころじゃなかったからな。

 また皮を売るんだったら別の街で売った方がいいだろうな。
 少し依頼も受けて稼ぐかな。

「さあ、ジライヤもツナデもお待たせ。どこかで夕食食べて宿に戻ろう」

 ダヤンの店を出るとちょうど鐘がなりだした。6時にもなると空が茜に染まりだす。
 大通りの方から屋台の肉を焼く匂いが漂ってくる。屋台でも物色するか。



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フブキの剣帯より高いのは種類の違う数枚の皮を貼り合わせた合皮で作るのには技術がいる。フブキのはただの皮
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