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#10 【〝N〟にいた、驚異の耐寒能力者!!】(2019年16号)[1/2]
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彼は正気なのだろうか。
北海道の雪の中を、何故か短パンだけを身に付け走るこの男性は、氷川兵助。非異能界――〝N〟に住む、一般男性だ。
しかし実は彼、地元では『雪男』という異名を持ち、寒さ・冷たさに挑むのが異常なほど大好きなのだ。
そして実際に、『世界一寒さに強い』と〝N〟の学者が言うほどの超人的な体の持ち主だ。
雪男はこれまで、湖に張った氷の下を泳いでみたり、氷の敷き詰められた箱に入ってみたり、裸で雪道をフルマラソン完走したり――など、普通の人間が行えば凍死してしまいそうな極寒に耐える、命知らずの挑戦を何度も行ってきた。
今回我々取材陣は、「彼が〈耐寒能力〉の特異体質型異能力を有する異能者なのではないか?」と調査に乗り出した日本異能界安全保障省の人間に同行した。
そこで雪男は自ら、人生最大の挑戦に立ち向うと言い出した。それは――。
海パンだけ、まさに裸同然のトライアスロン。
だがそこは、気温が0度を下回る事もある過酷な世界。
極寒の海水を掻き分け、ずぶ濡れの体に北海道の冷風が襲う。あっという間に低体温症に至り、心肺停止。
これから調査・検査する段階で、未だ彼が〈耐寒能力者〉である確証はない。もし違えば、命の保証はない。
これは、寒さに魅せられた超人・雪男に密着し、彼が本当に異能者なのか確かめたドキュメンタリーである。
〇
『雪男』こと氷川兵助は、北海道・小樽市で、妻・流花さんと娘・野々花ちゃん(8)、息子・勝喜くん(6)と暮らしている。
「俺が寒さや冷たさにハマったのは、14歳の時だ。ある冬の日、公園で氷が張っている池を眺めていたら、何故か無性に、その冷たさを感じたくなったんだ。俺は人目がない事を確認すると、全裸になって、氷が割れている所から、風呂のように浸かった……なんとも言えない気持ちよさだった。するといつから、寒さに耐えられるようになったんだ」
以来、寒さ・冷たさに晒される事が、雪男の日課となったのだという。
それから雪男は、とんでもない偉業を次々と成し遂げる。
雪と氷の敷き詰められた箱の中で2時間以上も浸かる。これは国内だけでなく、海外メディアからの取材も来たらしい。
さらに、どういうつもりか、パンツ一枚の姿で冬の富士山や、世界最高峰エベレスト、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロの登頂にも成功した。
その時の気持ちを尋ねると、彼は、
「俺はどんな寒さにも負けねー! って叫んだね」
と自慢げに語ってくれた。
そして雪男は、今回自分の限界に挑戦したいと言い出した。
「俺は裸で、北海道トライアスロンにチャレンジする!」
全く何を考えているのか、調査・検査チームはどよめいた。
北海道異能大学で人体生物学を教える湯浅作雄教授は言う。
「ピークが過ぎたとはいえ冬の北海道で裸でトライアスロンなんて、あまりにもバカすぎます。並みの〈耐寒能力者〉でも、時間がかかり過ぎたら重度の低体温症に陥るし、また、体を動かすの止めても、あっという間に体が冷えて、いずれにせよ、全ての臓器が機能停止し、死に至ります」
そもそも今回行う、標準規定であるスイム4km、バイク120km、ラン30kmのトライアスロンは、長年トレーニングを積んできたランナーにとっても、過酷なもの。
だが彼は――。
「大丈夫! 完走できるさ! 気合いさえあれば!」
〇
さっそく、その日の夜から雪男こと氷川のトレーニングが始まった。
やってきたのは、小樽市の自宅近くにある海岸。彼は海水パンツ一枚になると風呂のように浸かり始めた。
「おお~、いいなあ~。寒くていいな~」
言葉通りなんとも気持ちよさそうだ。しかし、この時の海水温は4度を下回っており、体感温度では氷点下以下となっていた。
「こんな事、人がいる昼間にやっていたら、近所に頭がおかしい奴だと思われちまうだろ? だから俺は、ひと気のない夜、ココでひっそりトレーニングしてるんだ。ん~あ~、寒いな~、気持ちいいなあ~」
彼はこれから毎晩、このトレーニングを行うと言う。
〇
そして翌日、雪男氷川がやってきたのは、近くにある食肉処理場だ。
「っかー! いい冷え具合だねえ!」
肉の腐食を抑える寒さに触れた途端、彼は歓喜の声を上げた。
「俺は今から、ここにある冷凍庫の中に閉じこもる。ドアが閉まると、自分では開ける事ができない。俺が凍死しないように神様仏様に祈っていてくれ!」
この冷凍庫はマイナス30度。これは海水で濡れた状態で自転車をこいだ時の体感気温とほぼ同じだ。
冷凍庫の扉を開くと雪男氷川は嬉しそうな声を漏らす。
「うお~、いいな~。寒いっていいな~。これは、今までに味わった事のない寒さだ」
一体、彼は本当に異能力を有しているのだろうか?
彼を看た〝N〟の医者に、彼の体について訊いてみた。
「彼の体・耐寒能力については異常な事ばかりです。現代の科学ではありえない・不明な点が多すぎます」との事だ。
北海道の雪の中を、何故か短パンだけを身に付け走るこの男性は、氷川兵助。非異能界――〝N〟に住む、一般男性だ。
しかし実は彼、地元では『雪男』という異名を持ち、寒さ・冷たさに挑むのが異常なほど大好きなのだ。
そして実際に、『世界一寒さに強い』と〝N〟の学者が言うほどの超人的な体の持ち主だ。
雪男はこれまで、湖に張った氷の下を泳いでみたり、氷の敷き詰められた箱に入ってみたり、裸で雪道をフルマラソン完走したり――など、普通の人間が行えば凍死してしまいそうな極寒に耐える、命知らずの挑戦を何度も行ってきた。
今回我々取材陣は、「彼が〈耐寒能力〉の特異体質型異能力を有する異能者なのではないか?」と調査に乗り出した日本異能界安全保障省の人間に同行した。
そこで雪男は自ら、人生最大の挑戦に立ち向うと言い出した。それは――。
海パンだけ、まさに裸同然のトライアスロン。
だがそこは、気温が0度を下回る事もある過酷な世界。
極寒の海水を掻き分け、ずぶ濡れの体に北海道の冷風が襲う。あっという間に低体温症に至り、心肺停止。
これから調査・検査する段階で、未だ彼が〈耐寒能力者〉である確証はない。もし違えば、命の保証はない。
これは、寒さに魅せられた超人・雪男に密着し、彼が本当に異能者なのか確かめたドキュメンタリーである。
〇
『雪男』こと氷川兵助は、北海道・小樽市で、妻・流花さんと娘・野々花ちゃん(8)、息子・勝喜くん(6)と暮らしている。
「俺が寒さや冷たさにハマったのは、14歳の時だ。ある冬の日、公園で氷が張っている池を眺めていたら、何故か無性に、その冷たさを感じたくなったんだ。俺は人目がない事を確認すると、全裸になって、氷が割れている所から、風呂のように浸かった……なんとも言えない気持ちよさだった。するといつから、寒さに耐えられるようになったんだ」
以来、寒さ・冷たさに晒される事が、雪男の日課となったのだという。
それから雪男は、とんでもない偉業を次々と成し遂げる。
雪と氷の敷き詰められた箱の中で2時間以上も浸かる。これは国内だけでなく、海外メディアからの取材も来たらしい。
さらに、どういうつもりか、パンツ一枚の姿で冬の富士山や、世界最高峰エベレスト、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロの登頂にも成功した。
その時の気持ちを尋ねると、彼は、
「俺はどんな寒さにも負けねー! って叫んだね」
と自慢げに語ってくれた。
そして雪男は、今回自分の限界に挑戦したいと言い出した。
「俺は裸で、北海道トライアスロンにチャレンジする!」
全く何を考えているのか、調査・検査チームはどよめいた。
北海道異能大学で人体生物学を教える湯浅作雄教授は言う。
「ピークが過ぎたとはいえ冬の北海道で裸でトライアスロンなんて、あまりにもバカすぎます。並みの〈耐寒能力者〉でも、時間がかかり過ぎたら重度の低体温症に陥るし、また、体を動かすの止めても、あっという間に体が冷えて、いずれにせよ、全ての臓器が機能停止し、死に至ります」
そもそも今回行う、標準規定であるスイム4km、バイク120km、ラン30kmのトライアスロンは、長年トレーニングを積んできたランナーにとっても、過酷なもの。
だが彼は――。
「大丈夫! 完走できるさ! 気合いさえあれば!」
〇
さっそく、その日の夜から雪男こと氷川のトレーニングが始まった。
やってきたのは、小樽市の自宅近くにある海岸。彼は海水パンツ一枚になると風呂のように浸かり始めた。
「おお~、いいなあ~。寒くていいな~」
言葉通りなんとも気持ちよさそうだ。しかし、この時の海水温は4度を下回っており、体感温度では氷点下以下となっていた。
「こんな事、人がいる昼間にやっていたら、近所に頭がおかしい奴だと思われちまうだろ? だから俺は、ひと気のない夜、ココでひっそりトレーニングしてるんだ。ん~あ~、寒いな~、気持ちいいなあ~」
彼はこれから毎晩、このトレーニングを行うと言う。
〇
そして翌日、雪男氷川がやってきたのは、近くにある食肉処理場だ。
「っかー! いい冷え具合だねえ!」
肉の腐食を抑える寒さに触れた途端、彼は歓喜の声を上げた。
「俺は今から、ここにある冷凍庫の中に閉じこもる。ドアが閉まると、自分では開ける事ができない。俺が凍死しないように神様仏様に祈っていてくれ!」
この冷凍庫はマイナス30度。これは海水で濡れた状態で自転車をこいだ時の体感気温とほぼ同じだ。
冷凍庫の扉を開くと雪男氷川は嬉しそうな声を漏らす。
「うお~、いいな~。寒いっていいな~。これは、今までに味わった事のない寒さだ」
一体、彼は本当に異能力を有しているのだろうか?
彼を看た〝N〟の医者に、彼の体について訊いてみた。
「彼の体・耐寒能力については異常な事ばかりです。現代の科学ではありえない・不明な点が多すぎます」との事だ。
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