異世界に転生して婚約破棄を目指していましたが記憶を失って王子に溺愛されています。

みさちぃ

文字の大きさ
15 / 83

第5話-2 記憶喪失でもがんばりましょうか。

しおりを挟む
「今日は忙しくてすまなかった。」

また今日もエディシスフォード殿下と夕飯だ。
ちなみに昨日より料理が少なくなっていた。
よかった。まあ、それでも多い。
昨日はあの後ジェイデン殿下特性の変な色の薬を飲まされた。しかしよく効いた。おかげでよく眠れた。
さっきお礼を言うのを忘れた。
今日もお世話になりそうだ。

「大丈夫です。一日楽しかったです。」
「何をしていた?」
「ジェイデン殿下の魔法実験小屋で本の整理をしていました。
とても感謝されました。ありがとうって言ってもらえてうれしかったです。」

「そうか、よかったな。」
「ジェイデン殿下は話しやすくていい方ですね。」

少しエディシスフォード殿下が無口になった。
何やら考えこんでいるようだ。

「エディシスフォード殿下。一つお願いがあるのですが。」
「ん?」
「図書館にいきたいんですが、王宮の中にありますか?」
「図書館?」

ひとまず泣いていてもわめいていても何もない。
まずはこの5年間のことを知らないといけない。
勉強はなんとかなりそうだがどこまで覚えているか不安だ。
ジェイデン殿下には魔法を教えてもらおう。

「ここ5年間のことが忘れてしまって全くわかりません。ですので本を読みたいと思います。」
「図書館なら王宮にある。私がついて行ってやりたいが仕事がある。すまない。私が仕事の時にいけばいい。手配しておく。」
「ありがとうございます。記憶を無くしてしまったのは仕方がありませんが嘆いていても何にもならにので自分にできることをしたいと思います。」
「昨日の教科書といい何だ?やはり別人のようだ。」

ん?何か言いましたか?
私は首を傾げた。
エディシスフォード殿下は少し下を向いていた。
何かを考え込んでいるようだった。私変なこと言った?

「何も思い出さないか?」
「はい・・、すみません。」
何回も聞かれても困ります。
こっちが悪いような気分になります・・・。
「謝ることはない。元はと言えばジェイデンのせいだから。謝るのはこちらだ。何か不自由があれば言ってくれ。」
「ありがとうございます。」

殿下と夕飯も食べ終わった。

お風呂も入りゆっくり髪を梳かしていたらドアがノックされた。
「私だ。」
エディシスフォード殿下の声だ。
私は寝着に着替えてしまっていたので近くにあるガウンを羽織ってドアを開けた。
「どうしましたか?」
殿下は昼間と違いラフな格好だった。
それにいつもは分けている前髪も降ろされている。
さすが王太子。どんな姿でもキラキラとしていてカッコいいです。

「図書館の件だが話は通した。明日からでも行けるようにしておいた。
一応ハーデスにすべての手続きをお願いしてあるから明日の午前中に一緒に行ってくれないか?
ああ、あと午後からはハーデスに少し勉強をみてくれるようにお願いしてある。
少し口の悪い奴だけどできるやつだから大丈夫だ。」
わざわざこれを言いに来てくれたんだ。
「ありがとうございます。」
頭をあげると目の前の優しそうに笑う殿下の顔があった。
その顔をみたら何だか泣けてきた。
入学式に私の名前を読んで笑っていた顔を思い出した。
前髪が降りているだからだろうか。
確かにあの時はこんな髪型だった。
あの時の笑顔より大人になっている。
5年分・・・。やはり私は五年間の記憶が無いんだと痛感させられた。

どうしてだろう。
私は何故無くしてしまったんだろう。
この五年間何を考えていた?何を感じていた?
私のこの5年間は必要ないわけではない。
私が16歳まで生きてきた軌跡だ。
一つの感情として忘れしまっていいわけはないはずだ。

私はこの人と婚約した時どんな気持ちだった?
嬉しかった?嫌だったの?

私はわがままだったの?
彼が他の人を好きになってしまうくらい嫌な子だったの?
あんな顔をさせてしまうくらい嫌われていたの?

自分の知らない自分。
思い出したらどうなってしまうのだろう。
何か自分とは全然違う人だったように思える。
ジェイデン殿下が言ったように何か他の人だったのかもしれない。
自分の姿を思い出すのが怖い。

「え?どうした?」
殿下はあわてて一歩私の部屋に入りドアを閉めた。
「申し訳ありません・・・。大丈夫です。」

「そんなに不安そうな顔して大丈夫なわけないだろ。
我慢しなくていい。私しか見てない。」

嫌だわ。割と私って繊細だったんだ。
恥ずかしながら殿下に抱きついて泣いてしまった。

私が落ち着くまで頭を優しく叩いてくれていた。

「いろいろわからないから不安だと思うが私がいるから大丈夫だ。だからなんでも話してくれないか?私を頼ってくれないか?ラティディア…」

そんな優しい言葉をかけないでください。
また泣けてしまう。

あんなに嫌な顔をされていたのに全くの別人みたいに優しい言葉をかけてくれる。

しかし・・・記憶が戻ったら彼にはその必要がなくなるのだろうか?
そして私はいつ婚約破棄されるのだろうか・・・。
その日が少し怖く思えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~

降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。

編み物好き地味令嬢はお荷物として幼女化されましたが、えっ?これ魔法陣なんですか?

灯息めてら
恋愛
編み物しか芸がないと言われた地味令嬢ニニィアネは、家族から冷遇された挙句、幼女化されて魔族の公爵に売り飛ばされてしまう。 しかし、彼女の編み物が複雑な魔法陣だと発見した公爵によって、ニニィアネの生活は一変する。しかもなんだか……溺愛されてる!?

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

竜王の「運命の花嫁」に選ばれましたが、殺されたくないので必死に隠そうと思います! 〜平凡な私に待っていたのは、可愛い竜の子と甘い溺愛でした〜

四葉美名
恋愛
「危険です! 突然現れたそんな女など処刑して下さい!」 ある日突然、そんな怒号が飛び交う異世界に迷い込んでしまった橘莉子(たちばなりこ)。 竜王が統べるその世界では「迷い人」という、国に恩恵を与える異世界人がいたというが、莉子には全くそんな能力はなく平凡そのもの。 そのうえ莉子が現れたのは、竜王が初めて開いた「婚約者候補」を集めた夜会。しかも口に怪我をした治療として竜王にキスをされてしまい、一気に莉子は竜人女性の目の敵にされてしまう。 それでもひっそりと真面目に生きていこうと気を取り直すが、今度は竜王の子供を産む「運命の花嫁」に選ばれていた。 その「運命の花嫁」とはお腹に「竜王の子供の魂が宿る」というもので、なんと朝起きたらお腹から勝手に子供が話しかけてきた! 『ママ! 早く僕を産んでよ!』 「私に竜王様のお妃様は無理だよ!」 お腹に入ってしまった子供の魂は私をせっつくけど、「運命の花嫁」だとバレないように必死に隠さなきゃ命がない! それでも少しずつ「お腹にいる未来の息子」にほだされ、竜王とも心を通わせていくのだが、次々と嫌がらせや命の危険が襲ってきて――! これはちょっと不遇な育ちの平凡ヒロインが、知らなかった能力を開花させ竜王様に溺愛されるお話。 設定はゆるゆるです。他サイトでも重複投稿しています。

婚約者は冷酷宰相様。地味令嬢の私が政略結婚で嫁いだら、なぜか激甘溺愛が待っていました

春夜夢
恋愛
私はずっと「誰にも注目されない地味令嬢」だった。 名門とはいえ没落しかけの伯爵家の次女。 姉は美貌と才覚に恵まれ、私はただの飾り物のような存在。 ――そんな私に突然、王宮から「婚約命令」が下った。 相手は、王の右腕にして恐れられる冷酷宰相・ルシアス=ディエンツ公爵。 40を目前にしながら独身を貫き、感情を一切表に出さない男。 (……なぜ私が?) けれど、その婚約は国を揺るがす「ある計画」の始まりだった。

公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧
恋愛
お気に入り小説の世界で名前すら出てこないモブキャラに転生してしまった! 『推しのバッドエンドを阻止したい』 そう思っただけなのに、悪女からは脅されるし、小説の展開はどんどん変わっていっちゃうし……。 推しキャラである公爵様の反逆を防いで、見事バッドエンドを回避できるのか……?! ゆるくて、甘くて、ふわっとした溺愛ストーリーです➴⡱ ◇2025.3 日間・週間1位いただきました!HOTランキングは最高3位いただきました!  皆様のおかげです、本当にありがとうございました(ˊᗜˋ*) (外部URLで登録していたものを改めて登録しました! ◇他サイト様でも公開中です)

処理中です...