生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち

はるかず

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第二章

第27話 冷たい卵と運命の火

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 ぎょっとしているピヨの背で、ルヴナンが岸に上がっていた。
 慌ててピヨが羽をばたつかせながらルヴナンに説明する。
 ルヴナンは冷えた卵を触って確認すると、ピヨに提案した。
「羽で温めよう、ピヨ。 草木を持ってきてくれるかい?」
 ピヨはそこら中の草を抜いて卵にかぶせ、温める。
 ルヴナンはピヨを待つ間、羽でたまごを擦っていた。
 二人の懸命の救助活動が始まった。
 ピヨは何度も何度も羽をこすりつけ、たまごの生を願った。

ぽつ、ぽつ、ぽつ

 灰色の丸いシミが、小さく転々と小さなたまごの上に付着した。
「雨が……」
 ピヨは絶望したように空を見る。こんなにも雨を辛く思ったことはない。
 必死になってピヨは羽でこすり、負けないように願い続けた。
 しかし、外気と雨粒によって、どんどん熱が失われていく。
 怖くなっていくピヨに、ルヴナンは励ます。
「ピヨ、諦めちゃだめだ。」
 ルヴナンの震え声がピヨにも伝わってきた。そのうち、風が吹き始め、雨粒の量が増えていく。
 も、もうだめだ……!
 ピヨはそう思った。手が疲れ、雨が自分の羽にも付着し、風が打ってくる。
 このままでは、ルヴナンも自分も危ない。そして、このたまごも……!
「何やってるんだい?」
 しわがれた女性の声がした。後ろを見ると、一匹のカワウソの叔母さんが、葉っぱの傘を差しながらこっちを見ていた。
 ピヨは口から何を言ったか分からなかったが、確かにカワウソへ助けを求めた気がした。カワウソはウンと頷いて、すぐたまごとピヨたちを背に乗せた。そのまま岸の近くにある巣の洞窟に二人と一個を入れ、雨風をしのがせてくれた。
 ピヨは一息ついたが、たまごが冷たいままなのに愕然として、力が抜けてしまった。ルヴナンも何も言わない。ただ、カワウソの叔母さんが餌を分けてくれるのをただ見ていた。

 その時だった。稲光が落ちたのは。

 怖ろしい低音がビリビリ響き渡り、ピヨは一瞬固まった。すぐピヨが巣から顔を出してみると、先ほどの岸辺の草たちが赤い何かに覆われている。
 「火だ……!」
 ルヴナンが背の方から驚きの声を上げる。
 初めて見る火に、感動と畏れを抱くピヨ。
 火は黒く草を焦がしながら、煙を残して小さな雨の中を燃えていく。何か巨大な鳥が羽で薙ぎ払うかのようにピヨには見えていた。
 巣の周りが熱くなっていくのも分かる。ピヨはただ畏れ、ひたすら火が居なくなるのを待っていることしかできなかった。
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