生まれることも飛ぶこともできない殻の中の僕たち

はるかず

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第二章

第31話 一方そのころ

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 一方そのころ、たまごより背の高い、草原の中をかき分けた二個のたまごがあった。
「はぁ、はぁ、逃げ延びた!」
「ほ~ん~と~?」
 のんびりと返すポポに、レアールはすかさず怒った。
「本当だよ。 這い寄るあの怖いズズズって感じがしないよね?」
 レアールは周囲の気配と音を敏感に感じ取り、いつか見た大きな影が襲い来る恐怖を押さえながら、いないことを確信し始めていた。
「じゃなきゃ、僕たちはあそこで食べられていただろうし。それに……!」
 レアールの長い説教が始まりそうな、そんな声の勢いが、突如の彼自身のめまいで止まった。くらくらと頭を回しながら、レアールはあれ? あれ? と疑問を浮かべて、へなへなとその場に転がった。
「な、なぜか力が出ないぞ」
 たまごを動かす力が湧かないレアール。そんなレアールに寸胴そうな声でポポが話す。
「食べてないからじゃな~い?」
「馬鹿言わないでよ。食べるって、蛇みたいなやつがする恐ろしい事なんだ……ぞ!」
 いつもだったら、怒りで卵が大きくなりそうなレアールだったが、力が抜けて逆に小さくなった気分になっていた。声も心なしか、小さくなっていっている気がしていた。
「どうしたら~……いい?」
 ポポは判断に困ってそうな声で、レアールに聞く。
「自分で考えて欲しいけど。そうだね、どこか……安全そうな場所を」
 命の危機を感じ、いないはずのあの蛇の影という死の気配をレアールは感じている。震えと、恐怖が意識の上に上ってくるのを感じる。だが動けない。
 ポポがこつんとレアールを押した。少しずつ、レアールを転がしていた。
「なにを、しているの…??」
 レアールが徐々に動いているのにびっくりして、ポポに聞いた。
「安全な場所まで、うごかすよ~」
 ポポはどこか気楽そうな声で、ゆったりと軽くぶつけて動かしてくる。
 少し動くたびに、レアールは自身の力で動かなくていい安堵を覚え始め、次第にポポに任せて動く事にした。力が抜けて、ただポポに指示を出すだけで動くので、行きたい方向さえ示せばいいということを理解したのだ。
 ポポはこつんと押しながら、ウキウキした声でレアールの指示通りに動いてくれていた。そして、ポポは愚直なくらい素直にレアールへ聞いても来た。
「キミって不思議だね~。生まれたくはないけど、死にたくないんだ」
「そうさ。どうせ、僕はなんでも怖いのさ……」
 レアールは自分の弱さを吐露しながら、今はこのポポに頼ることしかないと思い始めていたのであった。
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