22 / 31
第二章
第22話 いなくなったレアール
しおりを挟む
「大変だ! レアールがいない」
飛び起きたルヴナンが聞いた第一声は、ピヨの驚いた声だった。
ひよこのピヨはそこらじゅうを走り回って、木の影や草はの影を探している。
「ま、まさか、蛇に……!」
走り回るピヨを捕まえて、そっと自身の羽の中にルヴナンはピヨを入れる。
「落ち着いて、落ち着いて」
羽の温かさを伝えるように、ピヨの背を撫でた。
ピヨは息を整えて、嘴をぴよぴよ言わせながら、ルヴナンに訴え掛けた。
「もう一度目を覚ましたら、あの断崖にはいなくて……いつも朝になったら、先に起きて夢をからかってくるのに」
ルヴナンはピヨを庇う様に傍に寄せると、周囲を見渡した。
昨日はピヨと二人で初めて見る森の木々や、山の大きさに感動してレアールの事を見てやれなかった。そもそも、レアールの存在が、外からからかってくる第三者として居座っていたのもある。彼は、ルヴナンにとってお客さんだった。
「本当にいない。あの朝の後、出かけたんだ」
ピヨがハッとしてルヴナンの方を見る。
「もしかして、僕が朝日を見ていたのを、気にして……!」
ピヨが気が付いたのに、ルヴナンも察し始めていた。生まれ出でた二人とは違って、レアールはたまごのままだ。彼は劣等感を抱えて出て行ってしまったのだ。
「しまった。追いかけるか、どうしようか……」
「追いかけよう! ルヴナン!」
しっかり大地に脚をつけて、ピヨはルヴナンに言った。
ピヨのはっきりした言葉に、ルヴナンは頷いた。ピヨは今までのピヨじゃない。あの殻を破り、勇気をもったピヨ。もう、ルヴナンが心配する気弱なピヨではなかった。
「知恵を貸すよ、ピヨ。レアールの場所を突き止めるんだ」
ピヨの決心に、ルヴナンはサポートに回ることに決めた。あの誕生日から、ピヨを追いかけるのはルヴナンの方になったのだ。
ピヨはたまごの転がった痕跡を探しに走り出した。その後ろをルヴナンが追う。
勇ましい二人の、4つの足跡が後ろに続いていくのであった。
飛び起きたルヴナンが聞いた第一声は、ピヨの驚いた声だった。
ひよこのピヨはそこらじゅうを走り回って、木の影や草はの影を探している。
「ま、まさか、蛇に……!」
走り回るピヨを捕まえて、そっと自身の羽の中にルヴナンはピヨを入れる。
「落ち着いて、落ち着いて」
羽の温かさを伝えるように、ピヨの背を撫でた。
ピヨは息を整えて、嘴をぴよぴよ言わせながら、ルヴナンに訴え掛けた。
「もう一度目を覚ましたら、あの断崖にはいなくて……いつも朝になったら、先に起きて夢をからかってくるのに」
ルヴナンはピヨを庇う様に傍に寄せると、周囲を見渡した。
昨日はピヨと二人で初めて見る森の木々や、山の大きさに感動してレアールの事を見てやれなかった。そもそも、レアールの存在が、外からからかってくる第三者として居座っていたのもある。彼は、ルヴナンにとってお客さんだった。
「本当にいない。あの朝の後、出かけたんだ」
ピヨがハッとしてルヴナンの方を見る。
「もしかして、僕が朝日を見ていたのを、気にして……!」
ピヨが気が付いたのに、ルヴナンも察し始めていた。生まれ出でた二人とは違って、レアールはたまごのままだ。彼は劣等感を抱えて出て行ってしまったのだ。
「しまった。追いかけるか、どうしようか……」
「追いかけよう! ルヴナン!」
しっかり大地に脚をつけて、ピヨはルヴナンに言った。
ピヨのはっきりした言葉に、ルヴナンは頷いた。ピヨは今までのピヨじゃない。あの殻を破り、勇気をもったピヨ。もう、ルヴナンが心配する気弱なピヨではなかった。
「知恵を貸すよ、ピヨ。レアールの場所を突き止めるんだ」
ピヨの決心に、ルヴナンはサポートに回ることに決めた。あの誕生日から、ピヨを追いかけるのはルヴナンの方になったのだ。
ピヨはたまごの転がった痕跡を探しに走り出した。その後ろをルヴナンが追う。
勇ましい二人の、4つの足跡が後ろに続いていくのであった。
0
あなたにおすすめの小説
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
「いっすん坊」てなんなんだ
こいちろう
児童書・童話
ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。
自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる