18 / 131
馬鹿息子の反省
しおりを挟む
ヨルレアンがなぜ休んでいるのかは、担任からは当分休まれるとだけ説明がされただけであった。
だが、ジャスミン・シックス侯爵令嬢がオーバン王妃陛下に許可を得て、さりげなく、お具合が悪かったそうで、念のために大事を取られている。あの日も具合が悪かったと話したことで、皆、納得して、早く良くなるといいと思われているそうだ。
オマリー嬢も、再三、『私のせいでしょうか』『オズラール公爵令嬢は大丈夫でしょうか』『まだいらっしゃらないのでしょうか』と聞いて来ていたが、距離を取ったせいか、その話を耳にしたのか、言って来なくなっていた。
「ああ、大丈夫だ」
「お会いになっているのですか」
「オマリー嬢、私的なことを聞くものではない。失礼だ」
斜め前に座っている、カイロスがさすがに口を挟んだ。
「っあ、申し訳ございません。帰ります。すみませんでした」
オマリーは慌てて鞄を抱えて、頭を下げて出て行った。
「カイロス、ありがとう。どう答えようかと思っていたところだった」
カイロスにはヨルレアンに会えていないこと、解読とは話していないが、会う前にやらなくてはならないことがあると、話してあった。
「いいえ、彼女が口を出すことではありませんから」
慌てて頭を下げて出て行ったオマリーだったが、エルドールとカイロスは単なる質問だったとしても、立場を考えるべきではないかと思うようになっていた。
「私たちに絡んで、何かあったらと思わないのか?」
「親近感を持ち過ぎてしまったのかもしれませんね」
「そうだな…」
「やはり私が話すべきでした」
「それでも、同じことになっていたかもしれないがな。頭は良いのだから、感じ取ってくれることを期待するしかないな」
「そうですね…」
カイロスはジャスミンに話をして、教師に注意して貰い、距離を取ったこともきちんと話すようにしていた。
「彼女には婚約者はいないんだったな?」
「ええ、働きに出るつもりなのかもしれませんね」
「ああ、ならば特に弁えた方がいいな」
「そうですね」
学園よりも、働きに出る様になれば、男爵令嬢という立場は弁えなくてはならない。そのためにも、これからはきちんと注意をするべきだと思うようになった。
ある日、オマリーは鼻を啜っていた。前に目が赤いことに気付いたのは、実はエルドールでも、カイロスでもなく、同じく書記のサージ・ロックス子爵令息であった。今回も気付いたのは、サージであった。
「風邪かい?」
「い、いえ」
「何かあったのかい?」
「いえ、何でもないんです」
「そうかい?何かあるなら先生に相談した方がいいよ」
「はい、ありがとうございます」
そのやり取りが聞こえて、エルドールは前回と似ているなと思った。
前回はそこでエルドールがどうしたんだと声を掛けて、実はクラスでジャスミン・シックスに咎められたことを聞き、カイロスは責任を感じた。
さらに彼女はヨルレアンにもうるさいと怒られてしまったと聞いて、エルドールもカッとなってしまった。
まさかヨルレアンが内容を聞いていないとは思わなかったが、今となっては解読をしている頭で、会話を聞くことは困難だったことは身を持って実感した。
ただの雑音で、同じクラスでも公爵令嬢と男爵令嬢に接点はなく、生徒会のメンバーも、忙しかったヨルレアンは把握する余裕はなかったのかもしれない。
最初から教師に相談させれば良かった、先にヨルレアンに話を聞くべきだったと改めて反省した。
カイロスもまたジャスミンが関わっているとしても、今回は関わりを持つ気はないようで、顔を上げることもなかった。エルドールも、自分の作業をそのまま続けた。
その後も、オマリーの鼻を啜る音はしていたが、誰も聞くことはなかった。
だが、ジャスミン・シックス侯爵令嬢がオーバン王妃陛下に許可を得て、さりげなく、お具合が悪かったそうで、念のために大事を取られている。あの日も具合が悪かったと話したことで、皆、納得して、早く良くなるといいと思われているそうだ。
オマリー嬢も、再三、『私のせいでしょうか』『オズラール公爵令嬢は大丈夫でしょうか』『まだいらっしゃらないのでしょうか』と聞いて来ていたが、距離を取ったせいか、その話を耳にしたのか、言って来なくなっていた。
「ああ、大丈夫だ」
「お会いになっているのですか」
「オマリー嬢、私的なことを聞くものではない。失礼だ」
斜め前に座っている、カイロスがさすがに口を挟んだ。
「っあ、申し訳ございません。帰ります。すみませんでした」
オマリーは慌てて鞄を抱えて、頭を下げて出て行った。
「カイロス、ありがとう。どう答えようかと思っていたところだった」
カイロスにはヨルレアンに会えていないこと、解読とは話していないが、会う前にやらなくてはならないことがあると、話してあった。
「いいえ、彼女が口を出すことではありませんから」
慌てて頭を下げて出て行ったオマリーだったが、エルドールとカイロスは単なる質問だったとしても、立場を考えるべきではないかと思うようになっていた。
「私たちに絡んで、何かあったらと思わないのか?」
「親近感を持ち過ぎてしまったのかもしれませんね」
「そうだな…」
「やはり私が話すべきでした」
「それでも、同じことになっていたかもしれないがな。頭は良いのだから、感じ取ってくれることを期待するしかないな」
「そうですね…」
カイロスはジャスミンに話をして、教師に注意して貰い、距離を取ったこともきちんと話すようにしていた。
「彼女には婚約者はいないんだったな?」
「ええ、働きに出るつもりなのかもしれませんね」
「ああ、ならば特に弁えた方がいいな」
「そうですね」
学園よりも、働きに出る様になれば、男爵令嬢という立場は弁えなくてはならない。そのためにも、これからはきちんと注意をするべきだと思うようになった。
ある日、オマリーは鼻を啜っていた。前に目が赤いことに気付いたのは、実はエルドールでも、カイロスでもなく、同じく書記のサージ・ロックス子爵令息であった。今回も気付いたのは、サージであった。
「風邪かい?」
「い、いえ」
「何かあったのかい?」
「いえ、何でもないんです」
「そうかい?何かあるなら先生に相談した方がいいよ」
「はい、ありがとうございます」
そのやり取りが聞こえて、エルドールは前回と似ているなと思った。
前回はそこでエルドールがどうしたんだと声を掛けて、実はクラスでジャスミン・シックスに咎められたことを聞き、カイロスは責任を感じた。
さらに彼女はヨルレアンにもうるさいと怒られてしまったと聞いて、エルドールもカッとなってしまった。
まさかヨルレアンが内容を聞いていないとは思わなかったが、今となっては解読をしている頭で、会話を聞くことは困難だったことは身を持って実感した。
ただの雑音で、同じクラスでも公爵令嬢と男爵令嬢に接点はなく、生徒会のメンバーも、忙しかったヨルレアンは把握する余裕はなかったのかもしれない。
最初から教師に相談させれば良かった、先にヨルレアンに話を聞くべきだったと改めて反省した。
カイロスもまたジャスミンが関わっているとしても、今回は関わりを持つ気はないようで、顔を上げることもなかった。エルドールも、自分の作業をそのまま続けた。
その後も、オマリーの鼻を啜る音はしていたが、誰も聞くことはなかった。
5,178
あなたにおすすめの小説
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
さようなら、わたくしの騎士様
夜桜
恋愛
騎士様からの突然の『さようなら』(婚約破棄)に辺境伯令嬢クリスは微笑んだ。
その時を待っていたのだ。
クリスは知っていた。
騎士ローウェルは裏切ると。
だから逆に『さようなら』を言い渡した。倍返しで。
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
婚約者を借りパクされました
朝山みどり
恋愛
「今晩の夜会はマイケルにクリスティーンのエスコートを頼んだから、レイは一人で行ってね」とお母様がわたしに言った。
わたしは、レイチャル・ブラウン。ブラウン伯爵の次女。わたしの家族は父のウィリアム。母のマーガレット。
兄、ギルバード。姉、クリスティーン。弟、バージルの六人家族。
わたしは家族のなかで一番影が薄い。我慢するのはわたし。わたしが我慢すればうまくいく。だけど家族はわたしが我慢していることも気付かない。そんな存在だ。
家族も婚約者も大事にするのはクリスティーン。わたしの一つ上の姉だ。
そのうえ、わたしは、さえない留学生のお世話を押し付けられてしまった。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
完結 この手からこぼれ落ちるもの
ポチ
恋愛
やっと、本当のことが言えるよ。。。
長かった。。
君は、この家の第一夫人として
最高の女性だよ
全て君に任せるよ
僕は、ベリンダの事で忙しいからね?
全て君の思う通りやってくれれば良いからね?頼んだよ
僕が君に触れる事は無いけれど
この家の跡継ぎは、心配要らないよ?
君の父上の姪であるベリンダが
産んでくれるから
心配しないでね
そう、優しく微笑んだオリバー様
今まで優しかったのは?
願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
*らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる