24 / 131
馬鹿息子の謝罪3
しおりを挟む
「ええ、何も解読出来ていないことは確かですね」
「見てすぐ分かるのか?」
「いいえ、そんなわけないではありませんか。これは私が既に解読をしていたものです。突き返した中に入っていたものでしょう」
「そうなのか」
ヨルレアンの力であれば、見ただけで分かるのかと思い、驚きはしなかった。
「これは…また駄目であった、何がいけないのか、薬液が違うのか、他の方法も試すべきか、もう一度行うべきか、悩むところだ、だったはずです」
「っな」
一度解読しているとはいえ、そんなに見ただけで分かるのかと、まじまじと実力を見せられるのはエルドールは実は初めてであった。
「おそらく、何かの研究の一部なのでしょうね」
「どれがどういう意味なんだ?」
「説明は簡単には出来ませんので、省きますが、まずどこで切るかを考えて、解読していくのです。意味は一つだけではないものもありますから、それは後の記述を参考にして充てていくのです」
「…では、このUは」
エルドールは、最初のUを指さした。
「ええ、このUはUUで、また、再度と言う意味です」
「私は何を見て、明日だと思ったのだろうか?」
もはや、エルドールはどの辞書で見つけたのかすら覚えていなかった。
「ああ、あったかもしれません、Uで今日、UUで明日というのが、他国の言語に…確か、クデリュース語だったかしら?」
「っな…」
確かにエルドールは、クデリュース語の辞書を見た覚えがあった。
「私でも行ったり来たり、訂正をしながら解読していくのです。一部でも解読が出来たら、才能があるかもしれません」
解読したのに、一気にすべて間違っていたということも多々ある。
「改めて申し訳なかった、何か力になりたいと思いはしたが、解読では力になれそうもない」
「そうですか」
「それで、婚約を解消と言ったことは撤回させては貰えないだろうか」
ヨルレアンは隠す気もないようで、怪訝な顔を見せた。
「勿論、私が努力すべきことであるのは理解している。視野が狭かった、目の前にあることしか理解していなかった。重々分かっている」
「一度、口にした言葉を取り消すのですか?」
それは王族が簡単に意見を変えるのかと言う意味であった。エルドールも理解はしていたが、恥を忍んで素直な気持ちを吐露するしかなかった。
「取り消したい…駄目なら、このまま保留のままでもいいから、解消は…解消だけは…」
素直な性格であるエルドールは、解読を見てから、ヨルレアンをすっかり尊敬する気持ちになっており、解消と言われてしまえば、それが通ってしまうと危機感で一杯であった。
それとは逆に自分が言い出したくせにエルドールの必死な姿に、ヨルレアンは自分のためにも、当面は保留でいいかと思った。
「保留のままでしたら」
「本当か?」
「ええ、陛下も王妃陛下も、王太子殿下も、王女殿下も謝罪に来てくださいましからね。良いご家族をお持ちですわね」
「そ、そうだったのか…」
エルドールには知らされていなかったが、ヨルレアンの体調が戻ってから、それぞれが時間を作ってはエルドールのことを謝罪するために、オズラール公爵家にお忍びで謝罪に来ていた。
張本人が一番に謝罪をするべきだったが、最後だったのは、何も見えておらず、反省していなかったからである。
「きちんとお礼を言った方がよろしいですわよ?それで、今日はこの辺でよろしいかしら?」
「ああ、時間を取って貰ってありがとう。手紙を書くから、時間のある時でいいから、返事を書いてくれると嬉しい」
「ええ、分かりましたわ」
エルドールは解消されなくて良かったという気持ちで帰って行き、ヨルレアンはデザール・ザッハンデルの元へ戻って行き、いつも通りに解読に取り掛かった。
「見てすぐ分かるのか?」
「いいえ、そんなわけないではありませんか。これは私が既に解読をしていたものです。突き返した中に入っていたものでしょう」
「そうなのか」
ヨルレアンの力であれば、見ただけで分かるのかと思い、驚きはしなかった。
「これは…また駄目であった、何がいけないのか、薬液が違うのか、他の方法も試すべきか、もう一度行うべきか、悩むところだ、だったはずです」
「っな」
一度解読しているとはいえ、そんなに見ただけで分かるのかと、まじまじと実力を見せられるのはエルドールは実は初めてであった。
「おそらく、何かの研究の一部なのでしょうね」
「どれがどういう意味なんだ?」
「説明は簡単には出来ませんので、省きますが、まずどこで切るかを考えて、解読していくのです。意味は一つだけではないものもありますから、それは後の記述を参考にして充てていくのです」
「…では、このUは」
エルドールは、最初のUを指さした。
「ええ、このUはUUで、また、再度と言う意味です」
「私は何を見て、明日だと思ったのだろうか?」
もはや、エルドールはどの辞書で見つけたのかすら覚えていなかった。
「ああ、あったかもしれません、Uで今日、UUで明日というのが、他国の言語に…確か、クデリュース語だったかしら?」
「っな…」
確かにエルドールは、クデリュース語の辞書を見た覚えがあった。
「私でも行ったり来たり、訂正をしながら解読していくのです。一部でも解読が出来たら、才能があるかもしれません」
解読したのに、一気にすべて間違っていたということも多々ある。
「改めて申し訳なかった、何か力になりたいと思いはしたが、解読では力になれそうもない」
「そうですか」
「それで、婚約を解消と言ったことは撤回させては貰えないだろうか」
ヨルレアンは隠す気もないようで、怪訝な顔を見せた。
「勿論、私が努力すべきことであるのは理解している。視野が狭かった、目の前にあることしか理解していなかった。重々分かっている」
「一度、口にした言葉を取り消すのですか?」
それは王族が簡単に意見を変えるのかと言う意味であった。エルドールも理解はしていたが、恥を忍んで素直な気持ちを吐露するしかなかった。
「取り消したい…駄目なら、このまま保留のままでもいいから、解消は…解消だけは…」
素直な性格であるエルドールは、解読を見てから、ヨルレアンをすっかり尊敬する気持ちになっており、解消と言われてしまえば、それが通ってしまうと危機感で一杯であった。
それとは逆に自分が言い出したくせにエルドールの必死な姿に、ヨルレアンは自分のためにも、当面は保留でいいかと思った。
「保留のままでしたら」
「本当か?」
「ええ、陛下も王妃陛下も、王太子殿下も、王女殿下も謝罪に来てくださいましからね。良いご家族をお持ちですわね」
「そ、そうだったのか…」
エルドールには知らされていなかったが、ヨルレアンの体調が戻ってから、それぞれが時間を作ってはエルドールのことを謝罪するために、オズラール公爵家にお忍びで謝罪に来ていた。
張本人が一番に謝罪をするべきだったが、最後だったのは、何も見えておらず、反省していなかったからである。
「きちんとお礼を言った方がよろしいですわよ?それで、今日はこの辺でよろしいかしら?」
「ああ、時間を取って貰ってありがとう。手紙を書くから、時間のある時でいいから、返事を書いてくれると嬉しい」
「ええ、分かりましたわ」
エルドールは解消されなくて良かったという気持ちで帰って行き、ヨルレアンはデザール・ザッハンデルの元へ戻って行き、いつも通りに解読に取り掛かった。
4,941
あなたにおすすめの小説
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
【完結】離縁したいのなら、もっと穏便な方法もありましたのに。では、徹底的にやらせて頂きますね
との
恋愛
離婚したいのですか? 喜んでお受けします。
でも、本当に大丈夫なんでしょうか?
伯爵様・・自滅の道を行ってません?
まあ、徹底的にやらせて頂くだけですが。
収納スキル持ちの主人公と、錬金術師と異名をとる父親が爆走します。
(父さんの今の顔を見たらフリーカンパニーの団長も怯えるわ。ちっちゃい頃の私だったら確実に泣いてる)
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
32話、完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
婚約者を借りパクされました
朝山みどり
恋愛
「今晩の夜会はマイケルにクリスティーンのエスコートを頼んだから、レイは一人で行ってね」とお母様がわたしに言った。
わたしは、レイチャル・ブラウン。ブラウン伯爵の次女。わたしの家族は父のウィリアム。母のマーガレット。
兄、ギルバード。姉、クリスティーン。弟、バージルの六人家族。
わたしは家族のなかで一番影が薄い。我慢するのはわたし。わたしが我慢すればうまくいく。だけど家族はわたしが我慢していることも気付かない。そんな存在だ。
家族も婚約者も大事にするのはクリスティーン。わたしの一つ上の姉だ。
そのうえ、わたしは、さえない留学生のお世話を押し付けられてしまった。
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
※表紙 AIアプリ作成
願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
*らがまふぃん活動三周年周年記念として、R7.11/4に一話お届けいたします。楽しく活動させていただき、ありがとうございます。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ】悪妃は余暇を楽しむ
ごろごろみかん。
恋愛
「こちら、離縁届です。私と、離縁してくださいませ、陛下」
ある日、悪妃と名高いクレメンティーナが夫に渡したのは、離縁届だった。彼女はにっこりと笑って言う。
「先日、あなた方の真実の愛を拝見させていただきまして……有難いことに目が覚めましたわ。ですので、王妃、やめさせていただこうかと」
何せ、あれだけ見せつけてくれたのである。ショックついでに前世の記憶を取り戻して、千年の恋も瞬間冷凍された。
都合のいい女は本日で卒業。
今後は、余暇を楽しむとしましょう。
吹っ切れた悪妃は身辺整理を終えると早々に城を出て行ってしまった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる