【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
39 / 131

トドック男爵令嬢3

しおりを挟む
『本当かい?凄いじゃないか』
『でも内容までは知らなかったから、驚いたわ』
『歴史的なことに関わったんだね』
『ええ、そうみたい…』

 そう言われるだけで、オマリーの気持ちはさらに高揚した。

 否定する理由もなく、生徒会でエルドールと関わりのあるオマリーの言葉は、信用されることになった。

 クラスメイトの高位貴族の令息は、なかなか気軽に話せる相手はおらず、生徒会の方たちはエルドールやカイロスに伝わって、図々しいと思われたくないので、話すことはなかった。

 とは言っても、聞いた者も生徒会というのは成績優秀者の集まりであり、オマリーだけでなく、皆で手伝ったのかなという程度であった。

 それでも、オマリーは可愛らしい顔立ちに、成績優秀者ということもあり、婚約者を探していた子爵家の縁談に繋がったのである。

 子爵家も実際に会ってみてからくらいであったが、男爵令嬢であることから、働きに出たいという言葉は、成績優秀者に入っているのならば、そういった将来もあるだろうと納得するものであった。

 オマリーに思い入れもなく、まだ会ってもいなかった子爵家はトドック男爵夫妻の言葉にあっさりと、縁談をなかったことにした。

 それでも、オマリーを浮かれさせるには充分であった。

 エルドールは、オーバンに言われた通りに、自分から否定することもなく、過ごしていた。解読をしたザッハンデル前伯爵とヨルレアンが公にする気がないことを、尊重したい気持ちもあった。

 だが、ついにお訊ねしたいことがあるという人物が現れた。

「オマリー・トドック男爵令嬢が『振り返る女』の解読を手伝ったというのは、事実ですか?」
「事実ではない」

 エルドールはしっかり、きっぱりと否定した。カイロスもその場にいたが、小さく頷いた。

 カイロスも公爵令息ということもあり、親からヨルレアンのことを聞かされ、同じ年なのに凄いという言葉しかなかった。

 ジャスミンはヨルレアンは、不用意に話し掛けられない、独自の世界観を持っており、恐れ多い存在ではあった。

 一目置いていたが、解読のことまでは知らない。だが、自分の浅墓な行動で、ヨルレアンに迷惑を掛けてしまったことは責任を感じていた。

 だが元々は、カイロスがジャスミンを誤解させ、あのような事態になったことに、カイロスは酷く責任を感じていた。

 両親にもこれ以上迷惑を掛けるなと叱られ、自分がどうにか出来る話ではなかったために、エルドールをサポートする形でどうにか責任を取ろうと考えていた。

「私も聞く方が失礼かと思ったのですが、申し訳ございません」
「いや、構わない。噂になっているのか?」
「いえ、噂ほどではないと思うのです」
「私は聞いたことがない」

 未だにエルドールやカイロスの耳に、そのような噂は届くことはなかった。

「私もそうでした、どうやら下位貴族の令息の間で、広まっているのではないかと考えています」
「下位貴族の、令息?」
「はい、私も急に執事の子息から訪ねられたのです。今、一年生です」
「そうか」
「どうやら、また聞きのようですが、そのような話を耳にしたようです。ですので、関わっているのならば、口に出すのも恐れ多いので、控えさせていただきますが、かの方ではないかと伝えたのです」

 訊ねて来たのは、ジーオ・ルジカータ侯爵令息。

 父親であるルジカータ侯爵は、財務大臣を務めており、真面目で融通が利かないほど、厳しい人物である。

 かの方というのは、正しくヨルレアン・オズラールを指していると思った。

「詳細をお訊ねする立場にございませんので、お答えにならなくて結構です」
「ああ、そうして貰えると助かる」
「私が耳にすることがあれば、きちんと事実ではないと否定しておきます」
「そうして貰えると助かる」
「は!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

天然と言えば何でも許されると思っていませんか

今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。 アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。 ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。 あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。 そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで

ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです! 読んでくださって、本当にありがとうございました😊 前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。 婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。 一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが…… ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。 ★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。 ★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。 2万字程度。なろう様にも投稿しています。 オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン) レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友) ティオラ (ヒロインの従姉妹) メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人) マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者) ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

良いものは全部ヒトのもの

猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。 ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。 翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。 一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。 『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』 憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。 自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。

処理中です...