50 / 131
不可解1
しおりを挟む
「親しいのかと思っておりました」
トイランとしては王子殿下に頻繁に話し掛けている男爵令嬢であるオマリーは、親しくもなければ出来ないだろうと思ったからである。
「いや、親しいつもりはない」
「失礼しました、お考えには賛成です」
「私も賛成です。ですが、ロックス様だけでは大変なのでは?」
「ああ、もし大変な時はカイロスの妹であるリスカーダ嬢が、手伝いに来てくれることになっている」
「まあ!リスカーダ嬢は良い人選ですわね」
ジュニパーは朗らかに微笑んでいたが、トイランはまだ渋い顔をしていた。
「手伝いに執着しているようですから、別の方が手伝いに来たと分かれば、また面倒なことになるのではありませんか」
手伝いへの異常性に、エルドールとカイロスとローズマリーも、リスカーダに被害がないように考えた。
いくら年下だとは言え、公爵令嬢に男爵令嬢が敵意を向けることなどないとは思うが、気味の悪さから作戦は立てることにしたのである。
トイランも距離は取っているが、いなければ気にしなくていいと思ってしまってはいたが、面倒ごとになるのも嫌であった。
「ずっと生徒会室にいることはなくなるだろうから、リスカーダ嬢はカイロスを訪ねて来て、たまたま手伝うことになったことにするつもりだ。それも問われた場合のみとする」
「わざわざ言わないということですね」
わざわざ言わないのは、きちんと説明しても、湾曲される可能性を考えてのことだろうとトイランは思った。
「ああ、手伝いを希望していたのは本人で、蔑ろにされている、嫌がらせを受けているなどとは言わせないように、グイーズ先生には許可を得ている」
「それはよろしいですわね、嫌がらせとも取られ兼ねませんから」
皆が平等であれば、いくら自業自得とはいえ、一人だけを蔑ろにしている状況ではある。
だが、王侯貴族社会であるために、それ以上の付加がある。それをオマリーは男爵令嬢として理解しているはずなのに、行動が伴っていない。
「デーゼアのこともあるから、今一度、ボディタッチについてはグイーズ先生に話して置く」
「ありがとうございます」
皆が賛同してくれ、エルドールとカイロスは『振り返る女』の話題は出ず、トイランもジュニパーも耳にしていなかった、もしくは口にすることもないと考えたのかもしれないと思った。
ジュニパーは、オマリーの気味の悪さを初めて知った。
「そのようなご令嬢だったのね、殿下に優遇して貰いたいのかしら?王宮で働きたいとかかしら?」
ジュニパーは丁度二人きりになったローズマリーに問い掛けた。二人は親しいわけではなく、女性3人となるため、それぞれ親しくない相手が選ばれている。
「真意は分からないのですが、そういうことではないかと思っています」
「まあ、悪いことではないとは思うけど、だからと言って、ねえ、このようなことをしては意味がないわよね。すっかり嫌われてしまっているじゃない」
「はい、ですが、生徒会の誰かに好意があるようにも見えませんし」
「それはそうね、私も同意見だわ」
ローズマリーはジュニパーの言葉に、自分だけではなかったとホッとした。
「婚約者はいらっしゃらないのよね?」
「そのようです」
「男爵令嬢ですから、早い内に婚約ということはあまりないのかもしれないけど…」
いい条件の令息や令嬢は、早々に婚約を結んだり、爵位関係なく、事業の関係で政略結婚でもない限りは旨味がないと結ばれることはない。
「でも、行動からすると異性を意識しているのは事実よね?」
「そうですね…」
「もしかしたら、誰でもいいのではない?いえ、誰でもと言うのは違うわね。ボディタッチもひとをえらんでいるのではないかしら?その中で、自分を愛してくれる人なら誰でもいいのかしら?」
トイランとしては王子殿下に頻繁に話し掛けている男爵令嬢であるオマリーは、親しくもなければ出来ないだろうと思ったからである。
「いや、親しいつもりはない」
「失礼しました、お考えには賛成です」
「私も賛成です。ですが、ロックス様だけでは大変なのでは?」
「ああ、もし大変な時はカイロスの妹であるリスカーダ嬢が、手伝いに来てくれることになっている」
「まあ!リスカーダ嬢は良い人選ですわね」
ジュニパーは朗らかに微笑んでいたが、トイランはまだ渋い顔をしていた。
「手伝いに執着しているようですから、別の方が手伝いに来たと分かれば、また面倒なことになるのではありませんか」
手伝いへの異常性に、エルドールとカイロスとローズマリーも、リスカーダに被害がないように考えた。
いくら年下だとは言え、公爵令嬢に男爵令嬢が敵意を向けることなどないとは思うが、気味の悪さから作戦は立てることにしたのである。
トイランも距離は取っているが、いなければ気にしなくていいと思ってしまってはいたが、面倒ごとになるのも嫌であった。
「ずっと生徒会室にいることはなくなるだろうから、リスカーダ嬢はカイロスを訪ねて来て、たまたま手伝うことになったことにするつもりだ。それも問われた場合のみとする」
「わざわざ言わないということですね」
わざわざ言わないのは、きちんと説明しても、湾曲される可能性を考えてのことだろうとトイランは思った。
「ああ、手伝いを希望していたのは本人で、蔑ろにされている、嫌がらせを受けているなどとは言わせないように、グイーズ先生には許可を得ている」
「それはよろしいですわね、嫌がらせとも取られ兼ねませんから」
皆が平等であれば、いくら自業自得とはいえ、一人だけを蔑ろにしている状況ではある。
だが、王侯貴族社会であるために、それ以上の付加がある。それをオマリーは男爵令嬢として理解しているはずなのに、行動が伴っていない。
「デーゼアのこともあるから、今一度、ボディタッチについてはグイーズ先生に話して置く」
「ありがとうございます」
皆が賛同してくれ、エルドールとカイロスは『振り返る女』の話題は出ず、トイランもジュニパーも耳にしていなかった、もしくは口にすることもないと考えたのかもしれないと思った。
ジュニパーは、オマリーの気味の悪さを初めて知った。
「そのようなご令嬢だったのね、殿下に優遇して貰いたいのかしら?王宮で働きたいとかかしら?」
ジュニパーは丁度二人きりになったローズマリーに問い掛けた。二人は親しいわけではなく、女性3人となるため、それぞれ親しくない相手が選ばれている。
「真意は分からないのですが、そういうことではないかと思っています」
「まあ、悪いことではないとは思うけど、だからと言って、ねえ、このようなことをしては意味がないわよね。すっかり嫌われてしまっているじゃない」
「はい、ですが、生徒会の誰かに好意があるようにも見えませんし」
「それはそうね、私も同意見だわ」
ローズマリーはジュニパーの言葉に、自分だけではなかったとホッとした。
「婚約者はいらっしゃらないのよね?」
「そのようです」
「男爵令嬢ですから、早い内に婚約ということはあまりないのかもしれないけど…」
いい条件の令息や令嬢は、早々に婚約を結んだり、爵位関係なく、事業の関係で政略結婚でもない限りは旨味がないと結ばれることはない。
「でも、行動からすると異性を意識しているのは事実よね?」
「そうですね…」
「もしかしたら、誰でもいいのではない?いえ、誰でもと言うのは違うわね。ボディタッチもひとをえらんでいるのではないかしら?その中で、自分を愛してくれる人なら誰でもいいのかしら?」
4,293
あなたにおすすめの小説
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
天然と言えば何でも許されると思っていませんか
今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。
アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。
ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。
あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。
そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで
ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです!
読んでくださって、本当にありがとうございました😊
前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。
婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。
一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが……
ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。
★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。
★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。
2万字程度。なろう様にも投稿しています。
オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン)
レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友)
ティオラ (ヒロインの従姉妹)
メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人)
マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者)
ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる