75 / 131
王子と王女の訪問1
しおりを挟む
「解読中なのに、時間を取って貰ってすまない」
「申し訳ございません」
ヨルレアンと向き合ったローレルとメイランは謝罪をし、エルドールから預かった手紙とお菓子を渡した。ヨルレアンは笑顔で、ありがとうございますと受け取り、侍女のカレン渡した。
「いいえ、忙しいのはお互いさまでございましょう。何かありましたの?」
ローレルが聖女と呼ばれている男爵令嬢について、現在分かっていること全てをヨルレアンに説明をした。
ヨルレアンは時折頷き、真摯に聞いていた。
「それは素晴らしい能力ですわね」
「聖女というのはどう思う?」
「それはまるで、おとぎ話のようで…愛称のようなものでしょうか?」
「ああ、まさにそうだな」
「ご本人は喜んでいるのでしょうか?」
「始めは謙遜はしていたようだが、今では受け入れていると聞いている」
「そうですか…」
ヨルレアンの頭には二つの考えが浮かんではいたが、口にはしなかった。
「何か気になることはあるか?」
「いえ、その方を何も知らないのに、つい解読の際の癖で、どのような方かと考えていただけです」
ヨルレアンはつい解読をする際のように、どのような人物なのかを想像してしまっていた。
「どのような者だと思う?推測で構わない」
「私の作り上げた想像ですよ?」
ローレルは、深く頷いた。
「私も聞きたいです」
メイランも身を乗り出し、ヨルレアンに訴えた。
「一つは男爵令嬢ですから、おそらく周りは前とは違い、自分より身分の高い者で、否定したり、嫌だと言ったりすることは出来ず、言われるがまま過ごしている」
ローレルとメイランは聖女という言葉と、解読が出来るということばかり気にしていたので、どのような人間かなどとは考えることもなかった。
「もう一つは、元からなのか、周りが褒めることで、そう思ったかは分かりませんが、自分は天才なのだと思い、自らも望み、その場にいる」
「後者の方が厄介ですね」
「コーランド王国としてはそうですわね、でも精神的には前者の方が厄介ですよ」
「っあ、そうですわね。すみません」
メイランはトドック男爵令嬢のことで、すっかり悪しき者のように思ってしまっていたが、無理矢理に行わされているとしたら、アリナ・ハッソという男爵令嬢は苦しい立場なのかもしれない。
「謝ることではないわ、でも扱いやすいのは後者だわ」
「でも、この前の男爵令嬢のような者だったら」
「理解には苦しむけど、推察は出来るわ」
「推察ですか?」
「ええ、トドック男爵令嬢を勝手に推測してみたの」
ヨルレアンはトドック男爵令嬢と対峙して、つい癖で、どのような人間か想像し、その後で調査書も確認していた。
「どう推測されたのですか?」
「成績優秀者に入ったことで、高位貴族と結婚が現実味を帯びた。働くと言っていたのも、自立した女性だと思われたくて、口にした。そのためにエルドール殿下と親しいという立場も欲しいと思った」
「愚かにも最終的にはお兄様を狙っていたのかと、考えておりました」
メイランにとっては情けない兄でも、王子ということで、お近づきになりたかったのだと考えていた。
今はエルドールも改心していることから、口にすることにした。
「それもあったのかもしれませんね、私も最初に向き合った際には、思考能力が落ちていたのもありますが、そう感じておりました。でも本筋は一本ではなく、何か功績、寵愛を受けれればと思っていた」
「それで解読に?」
「手伝いを熱心に希望したが、叶わないことで、焦りもあったのでしょう。あの者の調査書も読みましたの。心の内までは分からないけれど、男爵令嬢という立場に不満を持っていたそうよ」
オマリーは誰かに心の内を話すことはなかったので、外部からの調査しかなかった。それでも男爵令嬢に不満を思っていることは、滲み出ていたそうだ。
「申し訳ございません」
ヨルレアンと向き合ったローレルとメイランは謝罪をし、エルドールから預かった手紙とお菓子を渡した。ヨルレアンは笑顔で、ありがとうございますと受け取り、侍女のカレン渡した。
「いいえ、忙しいのはお互いさまでございましょう。何かありましたの?」
ローレルが聖女と呼ばれている男爵令嬢について、現在分かっていること全てをヨルレアンに説明をした。
ヨルレアンは時折頷き、真摯に聞いていた。
「それは素晴らしい能力ですわね」
「聖女というのはどう思う?」
「それはまるで、おとぎ話のようで…愛称のようなものでしょうか?」
「ああ、まさにそうだな」
「ご本人は喜んでいるのでしょうか?」
「始めは謙遜はしていたようだが、今では受け入れていると聞いている」
「そうですか…」
ヨルレアンの頭には二つの考えが浮かんではいたが、口にはしなかった。
「何か気になることはあるか?」
「いえ、その方を何も知らないのに、つい解読の際の癖で、どのような方かと考えていただけです」
ヨルレアンはつい解読をする際のように、どのような人物なのかを想像してしまっていた。
「どのような者だと思う?推測で構わない」
「私の作り上げた想像ですよ?」
ローレルは、深く頷いた。
「私も聞きたいです」
メイランも身を乗り出し、ヨルレアンに訴えた。
「一つは男爵令嬢ですから、おそらく周りは前とは違い、自分より身分の高い者で、否定したり、嫌だと言ったりすることは出来ず、言われるがまま過ごしている」
ローレルとメイランは聖女という言葉と、解読が出来るということばかり気にしていたので、どのような人間かなどとは考えることもなかった。
「もう一つは、元からなのか、周りが褒めることで、そう思ったかは分かりませんが、自分は天才なのだと思い、自らも望み、その場にいる」
「後者の方が厄介ですね」
「コーランド王国としてはそうですわね、でも精神的には前者の方が厄介ですよ」
「っあ、そうですわね。すみません」
メイランはトドック男爵令嬢のことで、すっかり悪しき者のように思ってしまっていたが、無理矢理に行わされているとしたら、アリナ・ハッソという男爵令嬢は苦しい立場なのかもしれない。
「謝ることではないわ、でも扱いやすいのは後者だわ」
「でも、この前の男爵令嬢のような者だったら」
「理解には苦しむけど、推察は出来るわ」
「推察ですか?」
「ええ、トドック男爵令嬢を勝手に推測してみたの」
ヨルレアンはトドック男爵令嬢と対峙して、つい癖で、どのような人間か想像し、その後で調査書も確認していた。
「どう推測されたのですか?」
「成績優秀者に入ったことで、高位貴族と結婚が現実味を帯びた。働くと言っていたのも、自立した女性だと思われたくて、口にした。そのためにエルドール殿下と親しいという立場も欲しいと思った」
「愚かにも最終的にはお兄様を狙っていたのかと、考えておりました」
メイランにとっては情けない兄でも、王子ということで、お近づきになりたかったのだと考えていた。
今はエルドールも改心していることから、口にすることにした。
「それもあったのかもしれませんね、私も最初に向き合った際には、思考能力が落ちていたのもありますが、そう感じておりました。でも本筋は一本ではなく、何か功績、寵愛を受けれればと思っていた」
「それで解読に?」
「手伝いを熱心に希望したが、叶わないことで、焦りもあったのでしょう。あの者の調査書も読みましたの。心の内までは分からないけれど、男爵令嬢という立場に不満を持っていたそうよ」
オマリーは誰かに心の内を話すことはなかったので、外部からの調査しかなかった。それでも男爵令嬢に不満を思っていることは、滲み出ていたそうだ。
3,933
あなたにおすすめの小説
筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
天然と言えば何でも許されると思っていませんか
今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。
アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。
ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。
あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。
そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで
ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです!
読んでくださって、本当にありがとうございました😊
前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。
婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。
一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが……
ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。
★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。
★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。
2万字程度。なろう様にも投稿しています。
オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン)
レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友)
ティオラ (ヒロインの従姉妹)
メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人)
マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者)
ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
良いものは全部ヒトのもの
猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。
ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。
翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。
一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。
『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』
憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。
自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる