【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

聖女来訪

「まともだといいですね」
「ああ、本当にな。問題事は勘弁してくれ…」

　ダズベルトはエルドールのせいで、トドック男爵令嬢に関わらなくてはならなくなり、ヨルレアンへも迷惑を掛けたことを、情けなく思っていた。

　そこへまた聖女などと、正直ふざけるなという思いではあったが、グルダイヤ侯爵のせいで、関わらなくてはならなくなり、うんざりしていた。

　もし、解読が出来るとなっても、飛びつくつもりもなかった。

「解読の勉強をさせるのですか？」
「いや、そんな義務はこちらにはないから、通常の短期留学と変わらない」
「グルダイヤ侯爵が手配するのでは？」
「学者ですら、手に負えなくてヨルレアンに押し付けていたくらいなのだから、手の空いている者がいると思うか？」

　ローレルも知らなかったとはいえ、ヨルレアンは３つの解読を日を変えて、順番に行っていたことを聞き、驚愕した。

「ですが、させるつもりではありませんか？」

　グルダイヤ侯爵は、息子の嫁に考えているほどだから、絶対に手に入れたい存在だろう。そのためには実力を示さなくてはならない。

「王家からの依頼されている者は断るだろうから、無理矢理ということでなければ、後はまあ本人に任せるしかないかのう」
「それはそうですね、でもどうやってするのでしょう？」
「さあ？聖女なのだから、何かやり方があるのではないか？私は解読は分からない」
「そうですね、私も分かりません」
「ええ、私も不勉強で申し訳ないけど、分かりませんわ。でも聖女ですものね」
「ええ、聖女ですからね」

　皆がなるべく解読については、本当に分からないこともあるが、関わらないでいようと決めた。

　その後、オーバンの姪であるルビー・アクスウェル公爵令嬢と、友人たちにも協力を得ることも出来たために、短期留学の準備は整った。

　王家に要請があれば、オーバンとメイランが窓口になる。

　寮に住まわせるのかと思ったが、グルダイヤ侯爵邸で面倒を看ることになったようで、３人は侯爵邸で過ごすことになった。

　その間に子息との縁を深めようということもあるのだろう。王家としては関わって来ないのであれば、有難いと思ったくらいである。

　そして、ルスデン王国のミソオ王子殿下と、外交大臣、聖女と呼ばれるアリナ・ハッソ、同い年である侯爵令嬢であるクリスティーナ・ペーラー、伯爵令嬢のファミラ・ノーリーがコーランド王国にやって来た。

　挨拶だけであったため、見た目しか分からなかったが、アリナは黒瞳で黒髪の清楚な女性で、クリスティーナは正反対のブラウン瞳でブロンド髪の派手な令嬢で、ファミラはその間のブラウン瞳、ブラウン髪の令嬢であった。

　あくまで短期留学なので、学園長が対応することになっており、ミソオ王子殿下と外交大臣には、今日だけはオーバンが王家を代表して、立ち会う形で同席した。

　ミソオ王子殿下は第三王子で、幼さの残るような顔立ちだが３０歳で、自国の令嬢を娶り、王女と王子の父親でもある。

　アリナ、クリスティーナ、ファミラは教師によって、学園を案内されている。

「アリナの留学をどうか、より良いものになるようにしていただきたい」
「カリキュラムには、ご納得いただけていないということでしょうか？」

　学園長はミソオの言葉に、短期留学のカリキュラムは通常通りとして、事前に説明し、王家とグルダイヤ侯爵からもサインを得ている。

　覆ることはないが、過剰な要求をされては堪らないと、牽制をすることにした。

「いや、そうではなく、そのアリナ・ハッソはルスデン王国が誇る聖女であり、優秀過ぎるために、通常よりは特別にして欲しいという意味であって、コーランド王国なら容易でありましょう？」
「それは学園が、行わなければならないことですか？」
「そのくらいのお力があると、評価しているということだ」