【完結】ご期待に沿えず、誠に申し訳ございません

野村にれ

文字の大きさ
119 / 131

聖女の絶望2

しおりを挟む
 アリナは一人では何も出来ず、葬儀や墓の手配も手伝って貰い、本当に誰もいなくなったことを実感した。

 ハッソ男爵家は、親族の許可を得て、残していても危険だと廃家とした。

 学園に来たアリナに、フォローして欲しいと頼まれたファミラが声を掛けた。

「大変だったわね」
「ファミラ様…」
「話をしましょうか」

 ファミラはアリナを談話室に連れて行き、話をすることにした。

「あなたは間違えたのよ」
「結婚のことですか?」
「いいえ、王太子妃殿下と王子妃殿下に唆されたのでしょう?」

 ファミラは少なからず、関わった者として、事情を聞かされていた。

「でも、私も役立てるのならと思いました」
「それでも、二人に唆された男爵令嬢という立場でいれば良かったのよ。そうすれば、こんなことにはならなかったわ」
「…え」
「あなたは素直に信じて、そう思い込んでいたとすれば良かった。それなのに、言ったのでしょう?今でも王子殿下たちと結婚する気があると、女王陛下に」

 これはフォローの頼まれた際に、聞いたものであった。

「はい」
「それは唆された立場でなくなり、貴方は望んだとされたのよ。そのせいで、残念なことだけど、こんなことになったの」
「どうして…」
「企業が撤退したのは知っている?」
「撤退?」

 アリナは良くも悪くも、物を知らない令嬢であった。

 偉い人は嘘を言わない、きっとそうなると素直に思う反面、いくら王族でも、否定されると相手を考えずに意思を通そうとする。

 弁えているようで、弁えていない令嬢だった。

「ええ、ルエルフ王国、コーランド王国の方の資本の企業が撤退したわ。男爵家に火をつけた犯人もそこに勤めていた」
「でも、そんなこと私は関係ないわ!王族だからって横暴じゃない」
「王家が手を下したわけではないでしょう。ただ、そのような令嬢がいる国にわざわざ関わりたいと思う?工場だって、別のところに作ればいいわ」

 撤退したのは、企業が経営する工場であった。他の企業が借りてくれればいいが、そう簡単には見付からない。

「関わりたくないという意思表示なの」
「そんなの!」
「王太子妃殿下や王子妃殿下、そしてあなたのせいで、ルスデン王国は信用の出来ない国になったのよ」
「でも、私は本当に力になりたくて」
「相手を考えるべきでしょう?王太子妃殿下や王子妃殿下が嘘を言わないと思ったように、どうしてコーランド王国の王家の方や、女王陛下に立場を考えることが出来なかったの?」
「していました」

 アリナは聖女だから許されるだろうと、無意識に思っていた。

「いいえ、出来ていなかったわ。自分を特別だからと、錯覚していた?」
「そんなこと」
「自信がないと言っていたのは保険だったの?」
「違います」
「だったら、どうして出来ないことを認めなかったの?本当は出来るけど、自信がないと言った方がいいと思ったの?」

 馬鹿にしていたのでしょうと、問いただすことはするつもりはないが、ファミラはどういうつもりだったのか、聞いて置きたかった。

「翻訳と解読は出来ると思っていたんです…本当です」
「でも、出来なかったでしょう?」
「あれは、習っていなくて…」
「翻訳に関してはそう言えるかもしれなけれど、解読は答えがないとおっしゃっていたでしょう?解読の勉強はどうしていたの?」
「それは…色んな解読を見たり、言葉を覚えたり…」
「出来ないとは気付かなかったのね、そう言えば良かったのに」
「出来るんです…」

 ファミラは、アリナは自分で自分を追い込んだのだと思っており、家族も巻き込まれてしまったのことが、残念でならない。

「私はあなたの能力を、第一王女殿下が説明された方が納得したわ。同時に、別のことにその能力を使うことを考えれば良かった。それなのに、一度見た夢は忘れることが出来なかった?」
「活かせると思っていただけです」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した

基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。 その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。 王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

三年の想いは小瓶の中に

月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。 ※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

天然と言えば何でも許されると思っていませんか

今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。 アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。 ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。 あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。 そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します

hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。 キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。 その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。 ※ざまあの回には★がついています。

さよなら初恋。私をふったあなたが、後悔するまで

ミカン♬
恋愛
2025.10.11ホットランキング1位になりました。夢のようでとても嬉しいです! 読んでくださって、本当にありがとうございました😊 前世の記憶を持つオーレリアは可愛いものが大好き。 婚約者(内定)のメルキオは子供の頃結婚を約束した相手。彼は可愛い男の子でオーレリアの初恋の人だった。 一方メルキオの初恋の相手はオーレリアの従姉妹であるティオラ。ずっとオーレリアを悩ませる種だったのだが1年前に侯爵家の令息と婚約を果たし、オーレリアは安心していたのだが…… ティオラは婚約を解消されて、再びオーレリア達の仲に割り込んできた。 ★補足:ティオラは王都の学園に通うため、祖父が預かっている孫。養子ではありません。 ★補足:全ての嫡出子が爵位を受け継ぎ、次男でも爵位を名乗れる、緩い世界です。 2万字程度。なろう様にも投稿しています。 オーレリア・マイケント 伯爵令嬢(ヒロイン) レイン・ダーナン 男爵令嬢(親友) ティオラ (ヒロインの従姉妹) メルキオ・サーカズ 伯爵令息(ヒロインの恋人) マーキス・ガルシオ 侯爵令息(ティオラの元婚約者) ジークス・ガルシオ 侯爵令息(マーキスの兄)

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

良いものは全部ヒトのもの

猫枕
恋愛
会うたびにミリアム容姿のことを貶しまくる婚約者のクロード。 ある日我慢の限界に達したミリアムはクロードを顔面グーパンして婚約破棄となる。 翌日からは学園でブスゴリラと渾名されるようになる。 一人っ子のミリアムは婿養子を探さなければならない。 『またすぐ別の婚約者候補が現れて、私の顔を見た瞬間にがっかりされるんだろうな』 憂鬱な気分のミリアムに両親は無理に結婚しなくても好きに生きていい、と言う。 自分の望む人生のあり方を模索しはじめるミリアムであったが。

処理中です...