病める時も、健やかではない時も

野村にれ

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王太子2

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「レルスのことも考えるが、オルトもなりたいのなら、二人ともに婚約者がいない状態の今なら考えるが、どうだ?」
「えっ」
「どうなんだ?自分の口でちゃんと言わなくていいのか?」

 ファリスも王太子に選ばれたではなく、責任を持たせるためにも、オルトの口からちゃんと言わせようと問い掛けた。

「あっ、はい、選んでいただけるのなら、なりたいです」
「そうか、分かった。その前に、話し合いは必要だからな。お前の希望通りになるかは分からないが、まだ誰にも口にしたりはするな」
「分かりました」

 オルトもこんな話になるとは思っていなかったが、初めて口にしたことで、現実になるかもしれない喜びで、高揚感がでいっぱいであった。

 レルスが嫌いなわけではないが、年上ということだけで、どこか下に見られていること、馬鹿にしているのではないかと、考えることが多くなっていた。

 上に立つには王太子、国王になるしかない。

 年齢もあるために超えることはできないが、父上が認めてくれたのなら、関係ない。一番いい形で、手にできるかもしれない。

 オルトが退室すると、ケリーは突っ伏した。

「本当に思っていたのね……我が国は王位について関係ないと思っていたわ」
「選ばれてなるのも、なりたいという者がなるのも悪いことではない」
「でも、レルスの方が相応しいという者の方が多いんじゃないの?」
「ケリー」
「ごめんなさい、それも私の思い込みかもしれないわね」

 王太子はレルスであり、変わることなどないと疑って来なかったケリーには、まだ現実を受け止め切れないでいた。

「ああ、競い合わすことはしないが、様子を見るのもいいだろう」
「競い合わすなんて」
「競い合いって、残った者が相応しいという国もあるんだ。だからこそ、下手に憎しみを生むようなことは避けられたとも言える。燻り続けられるよりいいだろう?」

 ファリスはオルトの顔を見て、自分の方が優位に立ちたいという気持ちが見受けられ、国王としては悪い感情ではないと考えた。

「このままだったら、そうなっていたってこと?」
「オルトは自分では出していないと思っていても、レルスも感じていたのだから、あり得るだろう」
「そんな……」

 ケリーは妃との人の考えに疎いわけではないが、こうだと思うと拭えないことを自分でも短所だと思っているために、すっかり落ち込んでしまっている。

「だからと言って、オルトが相応しくなければ納得させるしかない。そのためにも、我々も今一度考えなくてはならないということだ」

 ケリーはこんなことならば、引っ掛かる部分はのみ込んで、婚約者を決めていたら、こんなことにはならなかったのではないかと考えた。

「婚約者を決めてしまった方が良かったのかしら」
「レルスは王女、オルトには国内の貴族令嬢と考えていたのだろう?」
「ええ」
「それも不満に思ったかもしれない。だから、その前に冷静に考えることができて、よかったのではないか?」
「そう、ですわね」

 王家だけでは決められないために、家庭教師や主要貴族を呼んで話し合いをすることになった。

 モリーの元へもレオーラから心配する内容と、イルメザ王国の婚約についての話の書かれた手紙が届いた。

 レオーラはまさか魔術師の鑑定でバレることになったことに、それではどうにもならなかっただろうと驚きながらも、モリーの意向に反することになってしまわないか、できることがあれば何でもすると書かれていた。

 両親も同じように思っているので、何かあればすぐに言って欲しいともあった。

 モリーはもしかしたら国王夫妻にも、ご迷惑を掛けるかもしれないとも考えられたために、レオーラを通して、すぐにという話ではないが、お耳に入れておいた方がいいだろうという思惑もあった。
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