173 / 206
王太子2
しおりを挟む
「レルスのことも考えるが、オルトもなりたいのなら、二人ともに婚約者がいない状態の今なら考えるが、どうだ?」
「えっ」
「どうなんだ?自分の口でちゃんと言わなくていいのか?」
ファリスも王太子に選ばれたではなく、責任を持たせるためにも、オルトの口からちゃんと言わせようと問い掛けた。
「あっ、はい、選んでいただけるのなら、なりたいです」
「そうか、分かった。その前に、話し合いは必要だからな。お前の希望通りになるかは分からないが、まだ誰にも口にしたりはするな」
「分かりました」
オルトもこんな話になるとは思っていなかったが、初めて口にしたことで、現実になるかもしれない喜びで、高揚感がでいっぱいであった。
レルスが嫌いなわけではないが、年上ということだけで、どこか下に見られていること、馬鹿にしているのではないかと、考えることが多くなっていた。
上に立つには王太子、国王になるしかない。
年齢もあるために超えることはできないが、父上が認めてくれたのなら、関係ない。一番いい形で、手にできるかもしれない。
オルトが退室すると、ケリーは突っ伏した。
「本当に思っていたのね……我が国は王位について関係ないと思っていたわ」
「選ばれてなるのも、なりたいという者がなるのも悪いことではない」
「でも、レルスの方が相応しいという者の方が多いんじゃないの?」
「ケリー」
「ごめんなさい、それも私の思い込みかもしれないわね」
王太子はレルスであり、変わることなどないと疑って来なかったケリーには、まだ現実を受け止め切れないでいた。
「ああ、競い合わすことはしないが、様子を見るのもいいだろう」
「競い合わすなんて」
「競い合いって、残った者が相応しいという国もあるんだ。だからこそ、下手に憎しみを生むようなことは避けられたとも言える。燻り続けられるよりいいだろう?」
ファリスはオルトの顔を見て、自分の方が優位に立ちたいという気持ちが見受けられ、国王としては悪い感情ではないと考えた。
「このままだったら、そうなっていたってこと?」
「オルトは自分では出していないと思っていても、レルスも感じていたのだから、あり得るだろう」
「そんな……」
ケリーは妃との人の考えに疎いわけではないが、こうだと思うと拭えないことを自分でも短所だと思っているために、すっかり落ち込んでしまっている。
「だからと言って、オルトが相応しくなければ納得させるしかない。そのためにも、我々も今一度考えなくてはならないということだ」
ケリーはこんなことならば、引っ掛かる部分はのみ込んで、婚約者を決めていたら、こんなことにはならなかったのではないかと考えた。
「婚約者を決めてしまった方が良かったのかしら」
「レルスは王女、オルトには国内の貴族令嬢と考えていたのだろう?」
「ええ」
「それも不満に思ったかもしれない。だから、その前に冷静に考えることができて、よかったのではないか?」
「そう、ですわね」
王家だけでは決められないために、家庭教師や主要貴族を呼んで話し合いをすることになった。
モリーの元へもレオーラから心配する内容と、イルメザ王国の婚約についての話の書かれた手紙が届いた。
レオーラはまさか魔術師の鑑定でバレることになったことに、それではどうにもならなかっただろうと驚きながらも、モリーの意向に反することになってしまわないか、できることがあれば何でもすると書かれていた。
両親も同じように思っているので、何かあればすぐに言って欲しいともあった。
モリーはもしかしたら国王夫妻にも、ご迷惑を掛けるかもしれないとも考えられたために、レオーラを通して、すぐにという話ではないが、お耳に入れておいた方がいいだろうという思惑もあった。
「えっ」
「どうなんだ?自分の口でちゃんと言わなくていいのか?」
ファリスも王太子に選ばれたではなく、責任を持たせるためにも、オルトの口からちゃんと言わせようと問い掛けた。
「あっ、はい、選んでいただけるのなら、なりたいです」
「そうか、分かった。その前に、話し合いは必要だからな。お前の希望通りになるかは分からないが、まだ誰にも口にしたりはするな」
「分かりました」
オルトもこんな話になるとは思っていなかったが、初めて口にしたことで、現実になるかもしれない喜びで、高揚感がでいっぱいであった。
レルスが嫌いなわけではないが、年上ということだけで、どこか下に見られていること、馬鹿にしているのではないかと、考えることが多くなっていた。
上に立つには王太子、国王になるしかない。
年齢もあるために超えることはできないが、父上が認めてくれたのなら、関係ない。一番いい形で、手にできるかもしれない。
オルトが退室すると、ケリーは突っ伏した。
「本当に思っていたのね……我が国は王位について関係ないと思っていたわ」
「選ばれてなるのも、なりたいという者がなるのも悪いことではない」
「でも、レルスの方が相応しいという者の方が多いんじゃないの?」
「ケリー」
「ごめんなさい、それも私の思い込みかもしれないわね」
王太子はレルスであり、変わることなどないと疑って来なかったケリーには、まだ現実を受け止め切れないでいた。
「ああ、競い合わすことはしないが、様子を見るのもいいだろう」
「競い合わすなんて」
「競い合いって、残った者が相応しいという国もあるんだ。だからこそ、下手に憎しみを生むようなことは避けられたとも言える。燻り続けられるよりいいだろう?」
ファリスはオルトの顔を見て、自分の方が優位に立ちたいという気持ちが見受けられ、国王としては悪い感情ではないと考えた。
「このままだったら、そうなっていたってこと?」
「オルトは自分では出していないと思っていても、レルスも感じていたのだから、あり得るだろう」
「そんな……」
ケリーは妃との人の考えに疎いわけではないが、こうだと思うと拭えないことを自分でも短所だと思っているために、すっかり落ち込んでしまっている。
「だからと言って、オルトが相応しくなければ納得させるしかない。そのためにも、我々も今一度考えなくてはならないということだ」
ケリーはこんなことならば、引っ掛かる部分はのみ込んで、婚約者を決めていたら、こんなことにはならなかったのではないかと考えた。
「婚約者を決めてしまった方が良かったのかしら」
「レルスは王女、オルトには国内の貴族令嬢と考えていたのだろう?」
「ええ」
「それも不満に思ったかもしれない。だから、その前に冷静に考えることができて、よかったのではないか?」
「そう、ですわね」
王家だけでは決められないために、家庭教師や主要貴族を呼んで話し合いをすることになった。
モリーの元へもレオーラから心配する内容と、イルメザ王国の婚約についての話の書かれた手紙が届いた。
レオーラはまさか魔術師の鑑定でバレることになったことに、それではどうにもならなかっただろうと驚きながらも、モリーの意向に反することになってしまわないか、できることがあれば何でもすると書かれていた。
両親も同じように思っているので、何かあればすぐに言って欲しいともあった。
モリーはもしかしたら国王夫妻にも、ご迷惑を掛けるかもしれないとも考えられたために、レオーラを通して、すぐにという話ではないが、お耳に入れておいた方がいいだろうという思惑もあった。
2,134
あなたにおすすめの小説
顔がタイプじゃないからと、結婚を引き延ばされた本当の理由
翠月るるな
恋愛
「顔が……好みじゃないんだ!!」
婚約して早一年が経とうとしている。いい加減、周りからの期待もあって結婚式はいつにするのかと聞いたら、この回答。
セシリアは唖然としてしまう。
トドメのように彼は続けた。
「結婚はもう少し考えさせてくれないかな? ほら、まだ他の選択肢が出てくるかもしれないし」
この上なく失礼なその言葉に彼女はその場から身を翻し、駆け出した。
そのまま婚約解消になるものと覚悟し、新しい相手を探すために舞踏会に行くことに。
しかし、そこでの出会いから思いもよらない方向へ進み────。
顔が気に入らないのに、無為に結婚を引き延ばした本当の理由を知ることになる。
執着のなさそうだった男と別れて、よりを戻すだけの話。
椎茸
恋愛
伯爵ユリアナは、学園イチ人気の侯爵令息レオポルドとお付き合いをしていた。しかし、次第に、レオポルドが周囲に平等に優しいところに思うことができて、別れを決断する。
ユリアナはあっさりと別れが成立するものと思っていたが、どうやらレオポルドの様子が変で…?
結婚式をボイコットした王女
椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。
しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。
※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※
1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。
1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)
待ってください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ルチアは、誰もいなくなった家の中を見回した。
毎日家族の為に食事を作り、毎日家を清潔に保つ為に掃除をする。
だけど、ルチアを置いて夫は出て行ってしまった。
一枚の離婚届を机の上に置いて。
ルチアの流した涙が床にポタリと落ちた。
※短編連作
※この話はフィクションです。事実や現実とは異なります。
七光りのわがまま聖女を支えるのは疲れました。私はやめさせていただきます。
木山楽斗
恋愛
幼少期から魔法使いとしての才覚を見せていたラムーナは、王国における魔法使い最高峰の役職である聖女に就任するはずだった。
しかし、王国が聖女に選んだのは第一王女であるロメリアであった。彼女は父親である国王から溺愛されており、親の七光りで聖女に就任したのである。
ラムーナは、そんなロメリアを支える聖女補佐を任せられた。それは実質的に聖女としての役割を彼女が担うということだった。ロメリアには魔法使いの才能などまったくなかったのである。
色々と腑に落ちないラムーナだったが、それでも好待遇ではあったためその話を受け入れた。補佐として聖女を支えていこう。彼女はそのように考えていたのだ。
だが、彼女はその考えをすぐに改めることになった。なぜなら、聖女となったロメリアはとてもわがままな女性だったからである。
彼女は、才覚がまったくないにも関わらず上から目線でラムーナに命令してきた。ラムーナに支えられなければ何もできないはずなのに、ロメリアはとても偉そうだったのだ。
そんな彼女の態度に辟易としたラムーナは、聖女補佐の役目を下りることにした。王国側は特に彼女を止めることもなかった。ラムーナの代わりはいくらでもいると考えていたからである。
しかし彼女が去ったことによって、王国は未曽有の危機に晒されることになった。聖女補佐としてのラムーナは、とても有能な人間だったのだ。
一番悪いのは誰
jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。
ようやく帰れたのは三か月後。
愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。
出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、
「ローラ様は先日亡くなられました」と。
何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・
虐げられてる私のざまあ記録、ご覧になりますか?
リオール
恋愛
両親に虐げられ
姉に虐げられ
妹に虐げられ
そして婚約者にも虐げられ
公爵家が次女、ミレナは何をされてもいつも微笑んでいた。
虐げられてるのに、ひたすら耐えて笑みを絶やさない。
それをいいことに、彼女に近しい者は彼女を虐げ続けていた。
けれど彼らは知らない、誰も知らない。
彼女の笑顔の裏に隠された、彼女が抱える闇を──
そして今日も、彼女はひっそりと。
ざまあするのです。
そんな彼女の虐げざまあ記録……お読みになりますか?
=====
シリアスダークかと思わせて、そうではありません。虐げシーンはダークですが、ざまあシーンは……まあハチャメチャです。軽いのから重いのまで、スッキリ(?)ざまあ。
細かいことはあまり気にせずお読み下さい。
多分ハッピーエンド。
多分主人公だけはハッピーエンド。
あとは……
妹が私の婚約者と結婚しちゃったもんだから、懲らしめたいの。いいでしょ?
百谷シカ
恋愛
「すまない、シビル。お前が目覚めるとは思わなかったんだ」
あのあと私は、一命を取り留めてから3週間寝ていたらしいのよ。
で、起きたらびっくり。妹のマーシアが私の婚約者と結婚してたの。
そんな話ある?
「我がフォレット家はもう結婚しかないんだ。わかってくれ、シビル」
たしかにうちは没落間近の田舎貴族よ。
あなたもウェイン伯爵令嬢だって打ち明けたら微妙な顔したわよね?
でも、だからって、国のために頑張った私を死んだ事にして結婚する?
「君の妹と、君の婚約者がね」
「そう。薄情でしょう?」
「ああ、由々しき事態だ。私になにをしてほしい?」
「ソーンダイク伯領を落として欲しいの」
イヴォン伯爵令息モーリス・ヨーク。
あのとき私が助けてあげたその命、ぜひ私のために燃やしてちょうだい。
====================
(他「エブリスタ」様に投稿)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる