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中等部一年生
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オブレオサジュール家では、ブレフォスは魔力があるが、カリーナはない。モリーはなかったが、ロレインにはあった。
迫害されることはないと言っても、持っている者が持っていない者を馬鹿にすることは、ある。
一度目の時は、『公爵令嬢の癖に持っていないんて』と何度も言われたことがあった。血筋は関係あるとしても、こういった場合は持っている高位貴族の方が、持っていないことを責められ易かった。
以前は人口の2割と言われていたことから、いずれ魔力を持つ子が増えたら、さらにパワーバランスは変わるかもしれない。
モリーは一度目も二度目も魔力はなかった、何もしないを誓ったのだから三度目もないことにした。
おかげで魔術の授業を受けなくても良いために、ラッキーくらいにしか思っていない。
モリーは学園でも何もしなかった。積極的に友人を作ることもなければ、話し掛けることもない。公爵令嬢に気軽に話し掛けて来ることもない。
必要な会話は行い、微笑みで返すだけであった。
そして、中等部一年生にとって初めての試験が行われた。貴族も平民も忖度なく、実力で望み、好成績者の順位が張り出される。
高位貴族と、勉強の出来る貴族が名前を連ね、幼少期から家庭教師の付いている貴族が、ひしめき合うのは当然である。
勿論だが、モリーの名前はない。
誰もわざわざ、名前がないなどとは言わないが、当然のように入っていると思っていた。
試験の結果は、毎回保護者にも通達されるために、モリーは久し振りにブレフォスに呼び出されることになった。
「試験が振るわなかったようだが?」
「申し訳ありません。授業を聞いている時は分かるのですが、試験になると分からなくなってしまいました」
ブレフォスにも、モリーは学園での授業と、元々の家庭教師も付いている。
きちんと家庭教師の授業を受けていると、報告が来ていた。モリーが家庭教師を見送っているのを見たこともあるために、授業を受けていないということはない。
学園にも、きちんと通っている。
「せめて、二桁に入りなさい」
モリーの順位は、ちょうど中間より下の三桁の100番台であった。公爵令嬢としてはあり得ない順位である。
「努力いたします、申し訳ございませんでした…」
試験勉強は勿論しておらず、試験もパッと見て分かるところだけを埋めただけである。
手は抜いているが、モリーは二度と目の時、中等部に通っていない。ゆえに、二度目分のブランクがあるのも事実だった。
モリーが落ち込むように下を向き、反省している態度を見せると、ブレフォスに行っていいと声を掛けられた。ブレフォスは無口であるために、グチグチ説教をされることはないと思ったが、あっさり終わって拍子抜けした。
それよりも、モリーは成績が振るわない方が呼び出されるのだと、初めて知ることになった。
「おっかしい」
一度目の時は、試験の内容は覚えていないが、最初の試験は3位だった。だが、ブレフォスに呼び出されることはなかった。
気に掛けてくれたことが嬉しいなどという感情は、一切ないが、三度目にして新たな発見であった。
「モリー様、大丈夫でしたか?」
部屋に戻ると、ペイリーが心配そうに待っていた。
「二桁に入るように言われてしまったわ」
「そうですか…」
ペイリーもモリーから事前に試験が難しかった、出来なかったと聞かせられていた。謙遜されているのだろうと、大丈夫ですよと励ましたが、本当にあまり良くなかったことに驚いた。
「仕える私が頭が悪くて、ごめんなさいね」
馬鹿に仕えるなと言われて、ペイリーが離れていくことになっても、モリーは誓いを変える気はなかった。また、会うことが出来たことで既に満たされ、いつ離れてもいいように、覚悟をしていた。
迫害されることはないと言っても、持っている者が持っていない者を馬鹿にすることは、ある。
一度目の時は、『公爵令嬢の癖に持っていないんて』と何度も言われたことがあった。血筋は関係あるとしても、こういった場合は持っている高位貴族の方が、持っていないことを責められ易かった。
以前は人口の2割と言われていたことから、いずれ魔力を持つ子が増えたら、さらにパワーバランスは変わるかもしれない。
モリーは一度目も二度目も魔力はなかった、何もしないを誓ったのだから三度目もないことにした。
おかげで魔術の授業を受けなくても良いために、ラッキーくらいにしか思っていない。
モリーは学園でも何もしなかった。積極的に友人を作ることもなければ、話し掛けることもない。公爵令嬢に気軽に話し掛けて来ることもない。
必要な会話は行い、微笑みで返すだけであった。
そして、中等部一年生にとって初めての試験が行われた。貴族も平民も忖度なく、実力で望み、好成績者の順位が張り出される。
高位貴族と、勉強の出来る貴族が名前を連ね、幼少期から家庭教師の付いている貴族が、ひしめき合うのは当然である。
勿論だが、モリーの名前はない。
誰もわざわざ、名前がないなどとは言わないが、当然のように入っていると思っていた。
試験の結果は、毎回保護者にも通達されるために、モリーは久し振りにブレフォスに呼び出されることになった。
「試験が振るわなかったようだが?」
「申し訳ありません。授業を聞いている時は分かるのですが、試験になると分からなくなってしまいました」
ブレフォスにも、モリーは学園での授業と、元々の家庭教師も付いている。
きちんと家庭教師の授業を受けていると、報告が来ていた。モリーが家庭教師を見送っているのを見たこともあるために、授業を受けていないということはない。
学園にも、きちんと通っている。
「せめて、二桁に入りなさい」
モリーの順位は、ちょうど中間より下の三桁の100番台であった。公爵令嬢としてはあり得ない順位である。
「努力いたします、申し訳ございませんでした…」
試験勉強は勿論しておらず、試験もパッと見て分かるところだけを埋めただけである。
手は抜いているが、モリーは二度と目の時、中等部に通っていない。ゆえに、二度目分のブランクがあるのも事実だった。
モリーが落ち込むように下を向き、反省している態度を見せると、ブレフォスに行っていいと声を掛けられた。ブレフォスは無口であるために、グチグチ説教をされることはないと思ったが、あっさり終わって拍子抜けした。
それよりも、モリーは成績が振るわない方が呼び出されるのだと、初めて知ることになった。
「おっかしい」
一度目の時は、試験の内容は覚えていないが、最初の試験は3位だった。だが、ブレフォスに呼び出されることはなかった。
気に掛けてくれたことが嬉しいなどという感情は、一切ないが、三度目にして新たな発見であった。
「モリー様、大丈夫でしたか?」
部屋に戻ると、ペイリーが心配そうに待っていた。
「二桁に入るように言われてしまったわ」
「そうですか…」
ペイリーもモリーから事前に試験が難しかった、出来なかったと聞かせられていた。謙遜されているのだろうと、大丈夫ですよと励ましたが、本当にあまり良くなかったことに驚いた。
「仕える私が頭が悪くて、ごめんなさいね」
馬鹿に仕えるなと言われて、ペイリーが離れていくことになっても、モリーは誓いを変える気はなかった。また、会うことが出来たことで既に満たされ、いつ離れてもいいように、覚悟をしていた。
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