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◆探索に出掛けました
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さて、上昇したはいいけど、どこに行こうかと考える。隣の席ではマサオがどこでもいいから早く行こうぜと急かしてくる。行き先を決めずに飛ぶのもいいけどどうせなら目的なり目標があった方が達成感があると思う。そしてふと思い付く。
「よし! 決めた」
『ん? やっと行き先が決まったのか? 長ぇよ』
俺が機体を止めたまま、しばらく行き先を考えていたのを黙って待っていたマサオが呆れた感じで言ってくる。
「まあまあ、そう言わずに。絶対に楽しくなるからさ」
『まあな。ケインといれば退屈しないのは確かだからな』
「そうでしょ、そうでしょ。じゃあ、行こうか!」
『おう! で、どこに行くんだ?』
「うん、それはね……」
『お前、それはそうとう危険な気がするんだけど……』
行き先をどこにしようかと考えていた時にふと思い付いたのは『探索』だった。単なる探索ではなく行方不明になったドローンを探そうというものだ。
地図の作成の為に四台のドローンをセットで飛ばしていたが、そのドローン全機がいきなり消息を絶った。一台、二台なら故障かなと思うが、『信号消失』すること自体が有り得ないことなので確実に何かがあったことは明白だ。そして、出来ればその信号消失地点で出来ればドローンの回収と原因を追及したいとマサオに話すと『危険な臭い』がすると言われてしまう。
「でも、それも含めての冒険じゃないの」
『まあ、そう言われるとな……』
「それにマサオがいれば無敵なんでしょ?」
『ふふふ、ケインのクセに分かっているじゃないか』
「そりゃあね、相棒だもの」
『うん、そうだな。確かに相棒だな。最近はその相棒感も薄れてきたから心配だったが』
「え? そうだっけ?」
『……自覚はないのか。まあいいそれもいつものことだからな』
「え? 何か言った?」
『そういうところなんだよなぁ~』
マサオが何を言っていたような気がするが、俺はタブレットに信号消失地点を表示させ、機首をゆっくりとその方向に合わせる。
「よし、方向はあった。じゃあ、行くよ」
『おう、ってか何回目の発信宣言だよ。いいから、出せよ』
「もう、ノリが悪いな」
『はいはい、いいから行こう』
「もう、じゃあ行くよ」
『おう!』
俺はスロットルをゆっくりと引き、徐々に加速させる。
「これくらいでいいかな」
『おいおい、もうちょっと出せるだろ! お前の本気はこんなもんじゃないだろ! もっと来いよ!』
「えっと、マサオどうしたの?」
『すまない……さっき里まで来たときの加速感が忘れられなくてな』
「もしかして……気持ちよかったの?」
『ああ、もしかしたらアレが俺の求める何かに一番近かったのかもしれないと思ってな』
「あ~まだ続いていたんだソレ」
『何言ってんだ。止める訳ないだろ。まだ、ソレがなんなのかも分かってないのによ!』
「分かってないんだ……」
『おう、まだな。でも、もう少しなんだよ。何が足りないんだろうな、ホントに』
「まあ、気長に頑張って。もし、行き詰まったのならとんでもない加速感と充足感と孤独感が味わえる物をプレゼントしてあげられるかもよ」
『ん? 加速感と充足感は分かる気がするが……孤独感ってのはなんなんだ?』
「ふふふ、それはその時のお楽しみにね」
『ケイン、また顔が悪いぞ?』
「……ふぅ~もういいよ。それで」
究極の加速感を味わいたいなら水平では限度があるから、垂直での重力からの脱出しかないよなと考える。でも、出来れば同行したくないからイク時はマサオ一人で行ってもらおうかなと考えている。とりあえずの安全対策は考えるとして、パラシュートは無理だろうな。それに真空状態での推進剤って何が使えるかも分からないし。そもそもこの世界での大気圏外ってどんなものなのかも分からない。だから、実現するにはまだまだ先のことだろう。
そんなことを考えている内に目的地付近に来たようで自機の位置と信号消失地点の座標が重なったので、ゆっくりとスロットルを戻しその場に留まる。
「ドローンが消えたのはこの辺りなんだけど……山ばかりだね」
『そうだな。俺もこの辺は知らないな。大体、どの辺りなんだ?』
「ちょっと待ってね」
俺はタブレットを操作して表示している地図を縮小させると大陸全体が表示された。
「ここがドワーフタウンで、ここが王都でしょ。それにここが竜人の里だよね」
『そうすると大分、上の方だな』
「う~ん、そうだね。大陸の中央辺りで極点に近い位置だね」
『また、来たのか』
「え? マサオ、何?」
『あ? 俺は何も言ってないぞ』
「あれ? でも、確かに聞こえたけど?」
『おいおい、しっかりしろよ。こんな空の上で、ここには俺とお前しかいないんだぞ。他の誰の声が聞こえるって言うんだよ』
「それもそうなんだけどさ……おかしいな」
さっき聞こえた声は俺の勘違いだったのかなと思っていたら、急に視界が暗くなる。
「あれ? 急に暗くなったと思ったら影の中か……え? 影? いやいやいや、おかしいって!」
『ケイン、どうした?』
「マサオ、どうしよう! 影だよ! 影!」
『影がどうした? そりゃ、影に隠れるくらいあるだろうよ』
「だから、それが変なんだって!」
『だから、何が変なんだよ! 影になることくらいいくらでもあるだろうが!』
「だから、ここは何も遮る物がない雲の上なんだよ! そんなところで何が影になるっていうのさ!」
『あ~だから、それは……え? マジか!』
「よし! 決めた」
『ん? やっと行き先が決まったのか? 長ぇよ』
俺が機体を止めたまま、しばらく行き先を考えていたのを黙って待っていたマサオが呆れた感じで言ってくる。
「まあまあ、そう言わずに。絶対に楽しくなるからさ」
『まあな。ケインといれば退屈しないのは確かだからな』
「そうでしょ、そうでしょ。じゃあ、行こうか!」
『おう! で、どこに行くんだ?』
「うん、それはね……」
『お前、それはそうとう危険な気がするんだけど……』
行き先をどこにしようかと考えていた時にふと思い付いたのは『探索』だった。単なる探索ではなく行方不明になったドローンを探そうというものだ。
地図の作成の為に四台のドローンをセットで飛ばしていたが、そのドローン全機がいきなり消息を絶った。一台、二台なら故障かなと思うが、『信号消失』すること自体が有り得ないことなので確実に何かがあったことは明白だ。そして、出来ればその信号消失地点で出来ればドローンの回収と原因を追及したいとマサオに話すと『危険な臭い』がすると言われてしまう。
「でも、それも含めての冒険じゃないの」
『まあ、そう言われるとな……』
「それにマサオがいれば無敵なんでしょ?」
『ふふふ、ケインのクセに分かっているじゃないか』
「そりゃあね、相棒だもの」
『うん、そうだな。確かに相棒だな。最近はその相棒感も薄れてきたから心配だったが』
「え? そうだっけ?」
『……自覚はないのか。まあいいそれもいつものことだからな』
「え? 何か言った?」
『そういうところなんだよなぁ~』
マサオが何を言っていたような気がするが、俺はタブレットに信号消失地点を表示させ、機首をゆっくりとその方向に合わせる。
「よし、方向はあった。じゃあ、行くよ」
『おう、ってか何回目の発信宣言だよ。いいから、出せよ』
「もう、ノリが悪いな」
『はいはい、いいから行こう』
「もう、じゃあ行くよ」
『おう!』
俺はスロットルをゆっくりと引き、徐々に加速させる。
「これくらいでいいかな」
『おいおい、もうちょっと出せるだろ! お前の本気はこんなもんじゃないだろ! もっと来いよ!』
「えっと、マサオどうしたの?」
『すまない……さっき里まで来たときの加速感が忘れられなくてな』
「もしかして……気持ちよかったの?」
『ああ、もしかしたらアレが俺の求める何かに一番近かったのかもしれないと思ってな』
「あ~まだ続いていたんだソレ」
『何言ってんだ。止める訳ないだろ。まだ、ソレがなんなのかも分かってないのによ!』
「分かってないんだ……」
『おう、まだな。でも、もう少しなんだよ。何が足りないんだろうな、ホントに』
「まあ、気長に頑張って。もし、行き詰まったのならとんでもない加速感と充足感と孤独感が味わえる物をプレゼントしてあげられるかもよ」
『ん? 加速感と充足感は分かる気がするが……孤独感ってのはなんなんだ?』
「ふふふ、それはその時のお楽しみにね」
『ケイン、また顔が悪いぞ?』
「……ふぅ~もういいよ。それで」
究極の加速感を味わいたいなら水平では限度があるから、垂直での重力からの脱出しかないよなと考える。でも、出来れば同行したくないからイク時はマサオ一人で行ってもらおうかなと考えている。とりあえずの安全対策は考えるとして、パラシュートは無理だろうな。それに真空状態での推進剤って何が使えるかも分からないし。そもそもこの世界での大気圏外ってどんなものなのかも分からない。だから、実現するにはまだまだ先のことだろう。
そんなことを考えている内に目的地付近に来たようで自機の位置と信号消失地点の座標が重なったので、ゆっくりとスロットルを戻しその場に留まる。
「ドローンが消えたのはこの辺りなんだけど……山ばかりだね」
『そうだな。俺もこの辺は知らないな。大体、どの辺りなんだ?』
「ちょっと待ってね」
俺はタブレットを操作して表示している地図を縮小させると大陸全体が表示された。
「ここがドワーフタウンで、ここが王都でしょ。それにここが竜人の里だよね」
『そうすると大分、上の方だな』
「う~ん、そうだね。大陸の中央辺りで極点に近い位置だね」
『また、来たのか』
「え? マサオ、何?」
『あ? 俺は何も言ってないぞ』
「あれ? でも、確かに聞こえたけど?」
『おいおい、しっかりしろよ。こんな空の上で、ここには俺とお前しかいないんだぞ。他の誰の声が聞こえるって言うんだよ』
「それもそうなんだけどさ……おかしいな」
さっき聞こえた声は俺の勘違いだったのかなと思っていたら、急に視界が暗くなる。
「あれ? 急に暗くなったと思ったら影の中か……え? 影? いやいやいや、おかしいって!」
『ケイン、どうした?』
「マサオ、どうしよう! 影だよ! 影!」
『影がどうした? そりゃ、影に隠れるくらいあるだろうよ』
「だから、それが変なんだって!」
『だから、何が変なんだよ! 影になることくらいいくらでもあるだろうが!』
「だから、ここは何も遮る物がない雲の上なんだよ! そんなところで何が影になるっていうのさ!」
『あ~だから、それは……え? マジか!』
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