60 / 127
二人の王子
7
しおりを挟む
***
エミールが二十歳を迎えることになったその年は、クラウスとマリウス、二人の王子にとって最も目まぐるしい一年だったに違いない。
王太子マリウスが二十七歳、第二王子クラウスは二十五歳であった。
年の初めにはまず、マリウスの妻アマーリエが待望の第一子を出産した。狼を引き継ぐ者と名付けられた御子の誕生に、国中が湧いた。
狼……。エミールは赤子の名を聞いたとき、しずかに息を呑んだ。
名付けたのはマリウスだという。敢えて『狼』の意味を潜ませたのか。それとも偶然なのか。
マリウスの思惑はどうあれ、革命派や穏健派の目には、人狼という二つ名を持つクラウスへの対立の表れとして映ったに違いない。
吉報で始まった新年であったが、次に待っていたのは疫病の蔓延だった。
王都近くの村が流行り病に侵されているという報告が上がり、国王シュラウドから任命を受けたマリウスの指揮で、医師団が速やかに派遣されることとなった。
村人の隔離には騎士団が当たった。
マリウス、クラウス、どちらの対応も迅速で的確であったと当該村の住民のみならず、諸外国からも称賛の声が届いた。
疫病がようやく落ち着いたかと思うと、夏には長雨が続き、あちこちでがけ崩れやら河川の氾濫などの被害が出た。
いち早く動いたのはクラウスだった。医師や薬師を織り交ぜた小隊をいくつも編成し、国中の村や町を回らせ、被害があれば住民と協力して復興を行った。
後から聞いた話だが、災害復興に騎士団を使うことに、革命派は反対したらしい。騎士は剣を振るってこそだ、崩れた道を補修するための人材ではない、として騎士団の派遣の是非で議会は荒れたという。
しかし、
「国の大事に揉めている場合ではない!」
という副団長クラウスの一喝と、騎士団長の、
「いざというときにこそ騎士は動かねばならぬ」
という信念の元、騎士団の動員は速やかに可決された。
クラウスを始めとした騎士たちが、甲冑ではなく機能性を重視した動きやすい救助服に身を包み、汗水たらして村々を回っていたのと時を同じくして、マリウスも貴族や議会を動かしていた。
長雨で農作物に重大な被害が出るだろうとの予測の上、国庫を開く準備をしていたのだ。
貴族らにも国民のために私財を投じるよう働きかけをし、これによってサーリーク王国は貴賤の別なく一丸となってこの危機を乗り越えることができた。
元々国民に慕われてきたミュラー王家だったが、今回の二人の王子の活躍でその人気を盤石のものとし、マリウスとクラウスの名は王都から遠く離れた小さな村にまで響き渡ったという。
王太子マリウスと、騎士団副団長クラウス。二人ともに次期国王として申し分なし、というのが王城内での評価だ。そこにマリウスに冠を与えたい穏健派と、クラウスを王座に据えたい革命派が水面下で火花を散らしている。
クラウスとマリウスは公務の傍ら、互いの派閥の動きも把握せねばならなかった。
革命派が特に重視しているのが、王立騎士団である。
クラウスを騎士団の長に据え、強き大国をよみがえらせる……つまり武力で他国を制圧する、というのが革命派の掲げる使命であるから、騎士団はその肝ともいえる。
しかしひと口に騎士団と言っても、全十三の部隊から成る騎士団は完全なる一枚岩ではなかった。
特に第十三部隊。これはいわゆる国王の近衛騎士らで編成された部隊だ。
第一から第十二までは騎士団長の管轄だが、第十三部隊だけは国王の直属となっている。
革命派がクラウスを王として擁立したいのも、この第十三部隊があるからだ。
クラウスが騎士団長となり、さらには国王となれば、騎士団の全兵力がクラウスの掌中に集うこととなる。クラウスの一存ですべての武力を動かせることになるのだ。
「国は強く在らねばならない。そのために私は騎士団長になる」
クラウスの言葉に、革命派の貴族らは奮い立った。ドナースマルクを筆頭に強き大国の復活を願う面々は、来るべきときのために準備を整えていった。
そしてついにこの年、クラウスの悲願を達成するための大きな出来事が起こった。
オシュトローク帝国がサーリークへと進軍してきたのだ。
長雨がもたらした災害の復興も粗方落ち着いてきた、冬の始めのことだった。
働き詰めだった騎士たちにも休暇が与えられ、クラウスも久々にまとまっと休みが取れたと言ってエミールとともに過ごしていたのだが、そこにオシュトロークが動き出したとの報せが入った。
クラウスは即座に動き、前線での指揮をとるべく側近のハルクらとともに出立していった。
例によってエミールには一通の手紙も来なかった。しかし前回のオメガ解放運動のときとは違い、現在のエミールはクラウスのつがいだ。正式にそう認められているため、戦線の様子は大まかではあったが大臣らから伝え聞くことができた。
オメガ解放以降、オシュトロークとの国境に位置する元ヴローム村は、騎士団の駐屯地となっており、クラウスたち本隊が到着するまで小隊は目覚ましい活躍を見せたという。
そしてクラウス率いる本隊はまさに破竹の勢いでオシュトロークの軍を退けた。到着からわずか三日で勝敗は決し、オシュトローク帝国は速やかに兵を引いた。ひと月後に開かれた会談ではオシュトローク帝王がサーリーク王国シュラウド国王に膝をついて謝罪をしたという。
クラウスの凱旋は華やかに行われ、英雄としてその名は広く轟ぐこととなった。
クラウスの帰還後さほどの間を置かずに開催された議会では、クラウスを騎士団長へと推す声が次から次に上がり、クラウス・ツヴァイテ・ミュラーはついに、二十六歳の誕生日を迎えるとともに歴代最年少で騎士団長の座に就くこととなったのである。
「いよいよだ」
と、クラウスが言った。
エミールは無言で頷いた。
騎士団長の任命式という晴れ舞台。彼がこの日に懸けてきた思いを、エミールは知っている。
騎士の正装をしたクラウスは眩しいほどに男らしく、うつくしかった。徽章や腕章の間を縫うように金の飾り緒が垂れ下がり、その下には繊細な刺繍が広がっている。黒字に黒色の刺繍なので派手さはなかったが、上品な華やかさがあった。
「その格好、似合いますね」
エミールがそう囁くと、狼のような端整な顔に微笑が広がった。
「おまえはどんな格好をしていても似合うがな。今日もきれいだ」
「……あなたって本当に……オレのことが好きですねぇ」
「おまえを愛してるからな」
言葉が足りないと部下にいつも叱られているくせに、エミールを口説くときは饒舌になるのだから、話し下手なのか上手いのかよくわからない。
エミールは苦笑を返して、クラウスの右胸の上におのれのてのひらを当てた。
「ラス。あなたを見てます」
「エル……」
「オレも、あなたを愛してる。あなたが王様になっても、ならなくても」
だから思うままに動けばいいと、てのひらに念を込めて、男の胸を押した。
「行ってらっしゃい、オレのアルファ」
エミールの言葉に、クラウスが蒼い瞳を冴え冴えと輝かせた。
「ああ、行ってくる。私のオメガ」
挨拶の最後にキスが降ってきた。唇でそれを受け止めて、エミールはクラウスと別れた。
クラウスはいまから大広間の式典会場へと向かう。
エミールは会場内の、参列席だ。
クラウスが副団長になった際はまだつがいではなかったから、エミールに与えられたのは末席だったが、今回は王家の一員として席を用意されている。
侍従の案内でまずは控室に行くと、そこにはすでにアマーリエの姿があった。彼女は腕に一歳となった我が子を抱いていた。
エミールはどう声をかけて良いかわからず、無言で頭を下げた。
「エドゥルフよ」
ツンと澄ました話し方で、アマーリエが言った。
「もちろん、存じ上げてます」
「エディと呼んでちょうだい」
エミールは思わずふきだしてしまった。アマーリエと初めて会ったとき、彼女はいまのような口調で「アマルと呼んでちょうだい」と言っていた。それを思い出したのだ。
エミールは笑いながら、小さな王子様へと再び頭を下げた。
「エミールと申します、エディ様。よろしくお願いしますね」
エミールの差し出した指先を、エドゥルフが不思議そうに握って、きゃらきゃらと笑った。
子どもをあやしながら、アマーリエが長い睫毛をふさりと動かし、エミールをひたと見つめて口を開いた。
「わたくしたちで見届けますわよ。二人の王子の、決断を」
エミールが二十歳を迎えることになったその年は、クラウスとマリウス、二人の王子にとって最も目まぐるしい一年だったに違いない。
王太子マリウスが二十七歳、第二王子クラウスは二十五歳であった。
年の初めにはまず、マリウスの妻アマーリエが待望の第一子を出産した。狼を引き継ぐ者と名付けられた御子の誕生に、国中が湧いた。
狼……。エミールは赤子の名を聞いたとき、しずかに息を呑んだ。
名付けたのはマリウスだという。敢えて『狼』の意味を潜ませたのか。それとも偶然なのか。
マリウスの思惑はどうあれ、革命派や穏健派の目には、人狼という二つ名を持つクラウスへの対立の表れとして映ったに違いない。
吉報で始まった新年であったが、次に待っていたのは疫病の蔓延だった。
王都近くの村が流行り病に侵されているという報告が上がり、国王シュラウドから任命を受けたマリウスの指揮で、医師団が速やかに派遣されることとなった。
村人の隔離には騎士団が当たった。
マリウス、クラウス、どちらの対応も迅速で的確であったと当該村の住民のみならず、諸外国からも称賛の声が届いた。
疫病がようやく落ち着いたかと思うと、夏には長雨が続き、あちこちでがけ崩れやら河川の氾濫などの被害が出た。
いち早く動いたのはクラウスだった。医師や薬師を織り交ぜた小隊をいくつも編成し、国中の村や町を回らせ、被害があれば住民と協力して復興を行った。
後から聞いた話だが、災害復興に騎士団を使うことに、革命派は反対したらしい。騎士は剣を振るってこそだ、崩れた道を補修するための人材ではない、として騎士団の派遣の是非で議会は荒れたという。
しかし、
「国の大事に揉めている場合ではない!」
という副団長クラウスの一喝と、騎士団長の、
「いざというときにこそ騎士は動かねばならぬ」
という信念の元、騎士団の動員は速やかに可決された。
クラウスを始めとした騎士たちが、甲冑ではなく機能性を重視した動きやすい救助服に身を包み、汗水たらして村々を回っていたのと時を同じくして、マリウスも貴族や議会を動かしていた。
長雨で農作物に重大な被害が出るだろうとの予測の上、国庫を開く準備をしていたのだ。
貴族らにも国民のために私財を投じるよう働きかけをし、これによってサーリーク王国は貴賤の別なく一丸となってこの危機を乗り越えることができた。
元々国民に慕われてきたミュラー王家だったが、今回の二人の王子の活躍でその人気を盤石のものとし、マリウスとクラウスの名は王都から遠く離れた小さな村にまで響き渡ったという。
王太子マリウスと、騎士団副団長クラウス。二人ともに次期国王として申し分なし、というのが王城内での評価だ。そこにマリウスに冠を与えたい穏健派と、クラウスを王座に据えたい革命派が水面下で火花を散らしている。
クラウスとマリウスは公務の傍ら、互いの派閥の動きも把握せねばならなかった。
革命派が特に重視しているのが、王立騎士団である。
クラウスを騎士団の長に据え、強き大国をよみがえらせる……つまり武力で他国を制圧する、というのが革命派の掲げる使命であるから、騎士団はその肝ともいえる。
しかしひと口に騎士団と言っても、全十三の部隊から成る騎士団は完全なる一枚岩ではなかった。
特に第十三部隊。これはいわゆる国王の近衛騎士らで編成された部隊だ。
第一から第十二までは騎士団長の管轄だが、第十三部隊だけは国王の直属となっている。
革命派がクラウスを王として擁立したいのも、この第十三部隊があるからだ。
クラウスが騎士団長となり、さらには国王となれば、騎士団の全兵力がクラウスの掌中に集うこととなる。クラウスの一存ですべての武力を動かせることになるのだ。
「国は強く在らねばならない。そのために私は騎士団長になる」
クラウスの言葉に、革命派の貴族らは奮い立った。ドナースマルクを筆頭に強き大国の復活を願う面々は、来るべきときのために準備を整えていった。
そしてついにこの年、クラウスの悲願を達成するための大きな出来事が起こった。
オシュトローク帝国がサーリークへと進軍してきたのだ。
長雨がもたらした災害の復興も粗方落ち着いてきた、冬の始めのことだった。
働き詰めだった騎士たちにも休暇が与えられ、クラウスも久々にまとまっと休みが取れたと言ってエミールとともに過ごしていたのだが、そこにオシュトロークが動き出したとの報せが入った。
クラウスは即座に動き、前線での指揮をとるべく側近のハルクらとともに出立していった。
例によってエミールには一通の手紙も来なかった。しかし前回のオメガ解放運動のときとは違い、現在のエミールはクラウスのつがいだ。正式にそう認められているため、戦線の様子は大まかではあったが大臣らから伝え聞くことができた。
オメガ解放以降、オシュトロークとの国境に位置する元ヴローム村は、騎士団の駐屯地となっており、クラウスたち本隊が到着するまで小隊は目覚ましい活躍を見せたという。
そしてクラウス率いる本隊はまさに破竹の勢いでオシュトロークの軍を退けた。到着からわずか三日で勝敗は決し、オシュトローク帝国は速やかに兵を引いた。ひと月後に開かれた会談ではオシュトローク帝王がサーリーク王国シュラウド国王に膝をついて謝罪をしたという。
クラウスの凱旋は華やかに行われ、英雄としてその名は広く轟ぐこととなった。
クラウスの帰還後さほどの間を置かずに開催された議会では、クラウスを騎士団長へと推す声が次から次に上がり、クラウス・ツヴァイテ・ミュラーはついに、二十六歳の誕生日を迎えるとともに歴代最年少で騎士団長の座に就くこととなったのである。
「いよいよだ」
と、クラウスが言った。
エミールは無言で頷いた。
騎士団長の任命式という晴れ舞台。彼がこの日に懸けてきた思いを、エミールは知っている。
騎士の正装をしたクラウスは眩しいほどに男らしく、うつくしかった。徽章や腕章の間を縫うように金の飾り緒が垂れ下がり、その下には繊細な刺繍が広がっている。黒字に黒色の刺繍なので派手さはなかったが、上品な華やかさがあった。
「その格好、似合いますね」
エミールがそう囁くと、狼のような端整な顔に微笑が広がった。
「おまえはどんな格好をしていても似合うがな。今日もきれいだ」
「……あなたって本当に……オレのことが好きですねぇ」
「おまえを愛してるからな」
言葉が足りないと部下にいつも叱られているくせに、エミールを口説くときは饒舌になるのだから、話し下手なのか上手いのかよくわからない。
エミールは苦笑を返して、クラウスの右胸の上におのれのてのひらを当てた。
「ラス。あなたを見てます」
「エル……」
「オレも、あなたを愛してる。あなたが王様になっても、ならなくても」
だから思うままに動けばいいと、てのひらに念を込めて、男の胸を押した。
「行ってらっしゃい、オレのアルファ」
エミールの言葉に、クラウスが蒼い瞳を冴え冴えと輝かせた。
「ああ、行ってくる。私のオメガ」
挨拶の最後にキスが降ってきた。唇でそれを受け止めて、エミールはクラウスと別れた。
クラウスはいまから大広間の式典会場へと向かう。
エミールは会場内の、参列席だ。
クラウスが副団長になった際はまだつがいではなかったから、エミールに与えられたのは末席だったが、今回は王家の一員として席を用意されている。
侍従の案内でまずは控室に行くと、そこにはすでにアマーリエの姿があった。彼女は腕に一歳となった我が子を抱いていた。
エミールはどう声をかけて良いかわからず、無言で頭を下げた。
「エドゥルフよ」
ツンと澄ました話し方で、アマーリエが言った。
「もちろん、存じ上げてます」
「エディと呼んでちょうだい」
エミールは思わずふきだしてしまった。アマーリエと初めて会ったとき、彼女はいまのような口調で「アマルと呼んでちょうだい」と言っていた。それを思い出したのだ。
エミールは笑いながら、小さな王子様へと再び頭を下げた。
「エミールと申します、エディ様。よろしくお願いしますね」
エミールの差し出した指先を、エドゥルフが不思議そうに握って、きゃらきゃらと笑った。
子どもをあやしながら、アマーリエが長い睫毛をふさりと動かし、エミールをひたと見つめて口を開いた。
「わたくしたちで見届けますわよ。二人の王子の、決断を」
370
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?
krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」
突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。
なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!?
全力すれ違いラブコメファンタジーBL!
支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
【完結済】極上アルファを嵌めた俺の話
降魔 鬼灯
BL
ピアニスト志望の悠理は子供の頃、仲の良かったアルファの東郷司にコンクールで敗北した。
両親を早くに亡くしその借金の返済が迫っている悠理にとって未成年最後のこのコンクールの賞金を得る事がラストチャンスだった。
しかし、司に敗北した悠理ははオメガ専用の娼館にいくより他なくなってしまう。
コンサート入賞者を招いたパーティーで司に想い人がいることを知った悠理は地味な自分がオメガだとバレていない事を利用して司を嵌めて慰謝料を奪おうと計画するが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる