十年越しの幼馴染は今や冷徹な国王でした

柴田はつみ

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第十三章 交わる想い

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アレンが去った後、森の中には、エラナとレオだけが残された。エラナは、まだ震えが止まらなかった。アレンの最後の言葉が、エラナの心に、深く突き刺さっていた。



「エラナ様…」


レオは、エラナの肩に、そっと手を置いた。



「大丈夫ですか?」


「ええ…」



エラナは、そう言って、レオを見た。



レオの顔には、安堵と、そして、かすかな悲しみが浮かんでいた。



「…ありがとう、レオ」



「いいえ。…それにしても、まさか陛下が…」



レオは、そこまで言って、言葉を止めた。


「…アレン様は、嘘を言っているわ。わたくしを愛しているなんて、嘘よ…」



エラナは、そう言って、首を振った。



「本当に、そう思われますか?」



レオの言葉に、エラナは、ハッとした。



「…だって、あの方は、ずっと、わたくしに冷たかったわ…」



「ですが、先ほどの陛下は…本当に、あなたを、心から愛しておられるように見えました。…まるで、私が、あなたのことを愛しているように…」



レオは、そう言って、悲しげに微笑んだ。



「レオ…」



エラナは、レオの悲しげな表情に、胸が締め付けられるような痛みを感じた。レオは、この間、ずっと、自分を支えてくれた。



アレンからの冷たい仕打ちに耐えられなかった自分を、優しく、温かく、包んでくれた。


「…レオ。わたくし、あなたと、共に…」



エラナは、そう言いかけたが、レオは、それを遮った。



「…いいえ、エラナ様」



レオは、エラナの手を握り、真剣な眼差しで、エラナを見た。



「…私は、あなたに、嘘をついていました」



レオの言葉に、エラナは、驚きに目を見開いた。




「…どういうこと?」



「私は…本当は、あなたと共に、この王宮を出るつもりはありませんでした。…ただ、あなたを、陛下から、引き離したかったのです」



レオの告白に、エラナは、言葉を失った。



「私は…幼い頃から、ずっと、あなたのことを、見ていました。…そして、陛下が、あなたに冷たくするのを見るのが、耐えられなかった。…だから、私は、あなたを、陛下から、奪い去りたかったのです」




レオは、そう言って、深く頭を垂れた。


「…レオ…」



「ですが、もう、やめます。…陛下は、あなたを愛している。…そして、あなたも…」



レオは、そこで言葉を止めた。



「…わたくしも、どういうこと?」



エラナは、震える声で尋ねた。



「…あなたも、本当は、陛下を、愛しておられるのでしょう?」




レオの言葉に、エラナは、何も言い返すことができなかった。




アレンは、本当に自分を愛してくれていたのか。そして、自分は、本当に、アレンを愛していたのか。




エラナの心の中で、二つの想いが、激しくぶつかり合っていた。
レオは、静かに立ち上がると、エラナに背を向けた。




「…私は、もう、行きます。…王宮に戻ってください、エラナ様。…そして、陛下と、お話になってください」



レオは、そう言って、森の奥へと、消えていった。



エラナは、その場に立ち尽くし、ただ、レオの遠ざかる後ろ姿を、見つめていた。その背中は、どこか、とても寂しげだった。だが、エラナの心には、もう、迷いはなかった。




「…アレン様…」



エラナは、そう言って、踵を返し、来た道を、走り出した。アレンの元へ、真実を確かめに、そして、自分の本当の気持ちを、伝えに。



夜の闇の中、二人の心は、今、ようやく、交わろうとしていた。
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