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乱暴にして
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えーここでお笑いを一席。
江戸隅田川近くの長屋に太郎丸という浪人が住んでおりまして、ある日近所のご隠居に悩みがあるとやってきた。
太郎丸のいうことにゃ、
最近うちのかみさんが夜に乱暴されたいっていいましてね。
あたしゃかみさんを、ええ、惚れぬいてますもんでこいつがなかなか難儀なわけだ。
とはいえ恋女房の願いは叶えてやるのも男の甲斐性てえもんで、そいじゃあひとつやってやるかと腰を上げた。いや、上がったのは腰じゃなくて腰のもんの首だろうってそんなこたあいいんだよ。
さて、早速乱暴に事を始めてみたものの、いやんいやんといわれると本気でやめてほしいのかと思ってつい手が止まってしまう。
なあご隠居、こいつはどうしたもんか。ひとつ知恵を貸してくんねえかい。
ご隠居ぽーんと膝を打ちまして、こう言った。
西洋にはな、せぇふわぁどというものがあるそうだ。
まぐわいの最中に絶対に口にしねえ言葉をいったら止める。それ以外のいやいやばかばかだめだめは、もっともっとといっしょだってえことにするんだとよ。
太郎丸、あいわかったとうちにかえってかみさんにこれこれかくかくしかじか。あたしらもそのせぇふわぁどを使ってみようということになったが、ここでまた問題が起きた。
ねぇ旦那さん、そのせぇふわぁどってぇのはどういうのを使えばいいんだい。
そうさな…普段使わねえ言葉てえんだから、例えば…たぬきのきんたま!ってのはどうかね。
いやだねあんた、閨事の最中にたぬきとはいえ他のきんたまのこと口走れとはどういう了見だい。
そんじゃあたしのきんたまにしようかえ。試しに言ってごらん。
太郎丸のきんたま!太郎丸のきんたま!
あいやこいつはだめだ、余計にむっくりしちまわア。
だろうねえ。なんか他のにしておくれ。他のはないのかい。
そいじゃこれはどうだ、どっとはらい!こいつでしめえだってことで解りやすかろ。
おやいいんじゃないか。それでいこうか。どっとはらい!
…ああいややめたやめた。ここでしめえだってお客さんが帰り始めた。こいつはいけねえ。どっとはらわねえからほらそこの人戻ってらっしゃい。…ああそうそう、そこに座ってね。
ちょいとあんた誰と話してるんだい?
ああこっちの話だ。すまないね。まあ結局こいつはおまえさんが言うもんだから、おまえさん自分で考えてごらんなさいよ。
仕方ないね。それじゃあ「こちら終点でござい、気を付けてお帰りください」これにしましょう。
よしよしそれでいこうと決めて早速布団に転がり込んだ。えいえいやあやあと乱暴にしてみると、かみさん大喜び。調子に乗った太郎丸、少々力が入ってきた。
えいえいやあやあ、えいえいやあやあ。
ああちょっと、おまえさん、もう堪忍、もう堪忍。
なるほどなるほど、それはもっとという意味だな。もっとしてくれよう、えいえい、えいえい。
ああそうだった、しゅうて~ん、もうしゅうて~ん。
なになに昇天?昇天はなんべんでもするがいいさ。そーれそれ。
ああまいったまいった、降参だよう。こ、こちら…ひいひい、こっち、こっち…
なんだこっちかい?えいえい。
ちがうちがう、そうじゃねえってば。おいら本当に昇天しちまうよう。
…ってなもんで、結局せぇふわぁどを言えないままかみさん気を飛ばしちまったそうな。
はてどうしてこうなったと首を傾げる太郎丸。
そこで目を覚ましたかみさんが一言。
やれやれ、暴れ馬に終点もなにもありゃしませんね。
到着したのは終点じゃなく盲点だったか。
お後がよろしいようで…。
江戸隅田川近くの長屋に太郎丸という浪人が住んでおりまして、ある日近所のご隠居に悩みがあるとやってきた。
太郎丸のいうことにゃ、
最近うちのかみさんが夜に乱暴されたいっていいましてね。
あたしゃかみさんを、ええ、惚れぬいてますもんでこいつがなかなか難儀なわけだ。
とはいえ恋女房の願いは叶えてやるのも男の甲斐性てえもんで、そいじゃあひとつやってやるかと腰を上げた。いや、上がったのは腰じゃなくて腰のもんの首だろうってそんなこたあいいんだよ。
さて、早速乱暴に事を始めてみたものの、いやんいやんといわれると本気でやめてほしいのかと思ってつい手が止まってしまう。
なあご隠居、こいつはどうしたもんか。ひとつ知恵を貸してくんねえかい。
ご隠居ぽーんと膝を打ちまして、こう言った。
西洋にはな、せぇふわぁどというものがあるそうだ。
まぐわいの最中に絶対に口にしねえ言葉をいったら止める。それ以外のいやいやばかばかだめだめは、もっともっとといっしょだってえことにするんだとよ。
太郎丸、あいわかったとうちにかえってかみさんにこれこれかくかくしかじか。あたしらもそのせぇふわぁどを使ってみようということになったが、ここでまた問題が起きた。
ねぇ旦那さん、そのせぇふわぁどってぇのはどういうのを使えばいいんだい。
そうさな…普段使わねえ言葉てえんだから、例えば…たぬきのきんたま!ってのはどうかね。
いやだねあんた、閨事の最中にたぬきとはいえ他のきんたまのこと口走れとはどういう了見だい。
そんじゃあたしのきんたまにしようかえ。試しに言ってごらん。
太郎丸のきんたま!太郎丸のきんたま!
あいやこいつはだめだ、余計にむっくりしちまわア。
だろうねえ。なんか他のにしておくれ。他のはないのかい。
そいじゃこれはどうだ、どっとはらい!こいつでしめえだってことで解りやすかろ。
おやいいんじゃないか。それでいこうか。どっとはらい!
…ああいややめたやめた。ここでしめえだってお客さんが帰り始めた。こいつはいけねえ。どっとはらわねえからほらそこの人戻ってらっしゃい。…ああそうそう、そこに座ってね。
ちょいとあんた誰と話してるんだい?
ああこっちの話だ。すまないね。まあ結局こいつはおまえさんが言うもんだから、おまえさん自分で考えてごらんなさいよ。
仕方ないね。それじゃあ「こちら終点でござい、気を付けてお帰りください」これにしましょう。
よしよしそれでいこうと決めて早速布団に転がり込んだ。えいえいやあやあと乱暴にしてみると、かみさん大喜び。調子に乗った太郎丸、少々力が入ってきた。
えいえいやあやあ、えいえいやあやあ。
ああちょっと、おまえさん、もう堪忍、もう堪忍。
なるほどなるほど、それはもっとという意味だな。もっとしてくれよう、えいえい、えいえい。
ああそうだった、しゅうて~ん、もうしゅうて~ん。
なになに昇天?昇天はなんべんでもするがいいさ。そーれそれ。
ああまいったまいった、降参だよう。こ、こちら…ひいひい、こっち、こっち…
なんだこっちかい?えいえい。
ちがうちがう、そうじゃねえってば。おいら本当に昇天しちまうよう。
…ってなもんで、結局せぇふわぁどを言えないままかみさん気を飛ばしちまったそうな。
はてどうしてこうなったと首を傾げる太郎丸。
そこで目を覚ましたかみさんが一言。
やれやれ、暴れ馬に終点もなにもありゃしませんね。
到着したのは終点じゃなく盲点だったか。
お後がよろしいようで…。
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