【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜

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第2章 亜麻色の光

10 亜麻色の光

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「……で、エリオットくん。話を戻すけど、聞き出したいことってなに?」
「お前、前世では彼女とかいなかったのか? 恋人がいたなら妹と会わせても好きになられたりしないだろ? 絶対ではないが」
「まだその心配をしてたの? んー……個人情報だから黙秘します」

 同じような質問を一体何回されたことか……そんなに会わせたくなかったのなら、俺にその話を持ってくる前に断っておけば良かったんじゃないのー?

「じゃあやっぱり会わせるのはやめ、」
「───それは困るな、お兄ちゃん。私、春からずっと会いたいって言ってたよね?」
「……っ!」
「……アリス。遅かったな」
「先生に呼び出されちゃって。そちらはお友達?」
「はじめまして、セイン・シュリーです」
「ランスロット・リーメントだ。よろしく」
「アリスと申します。いつも兄がお世話になっております」

 ベンチに座る俺達に話しかけてきたのは亜麻色の長い髪と、同じ色の宝石のように綺麗な瞳を持つ一人の少女だった。
 ガラス細工のように透明感があって綺麗な声も、明るさと落ち着いた印象を受ける話し方も、普通の人には届かないであろう、優しい春の花のような香りも全部───

「あり、す………なんで……」
「久しぶりだね、渚。元気にしてた? あ、もしかして私のこと忘れちゃってたりする?」
有栖ありす……?」
「ちゃんと覚えてくれていて良かった。そう、深真有栖みさなありすだよ」
「………」

 ───俺の、たった一人の……愛しい女の子のものだった。

 深真有栖は深真財閥のご令嬢。俺の幼馴染で家族のような存在だったけど、恋愛感情も抱いていたから中学の卒業式の日に俺が告白し、彼女と付き合うことになった。お互いの立場的にもちょうど良かったからそのまま婚約者になったんだけど、夏のあの日に死別した。

 なのに、どうして……どうして有栖がここにいるの?

「なんで、なんで!? どうして有栖がここにいるの……?」
「渚が亡くなって、本当にたくさんの人が悲しんでいたよ。桜井家の皆様も渚の友人も、仕事上のライバルだった方もね。世界中が大騒ぎ……なんてものじゃなかった。もちろん私もその一人。どれだけ泣いても涙が止まらなかった。だけどね、いつまでも俯いてはいられないし渚だってそんなの望まないでしょう? 私は渚以外に考えられなかったから恋人を作らず結婚もせず、一人で生きていこうと思っていたのだけど……」
「……だけど、なに?」
「二十三歳で死んじゃった。女の子を庇って轢かれちゃって……ふふ、渚と同じように誰かを庇って死ぬなんて、不謹慎だけどさすがは幼馴染だなって思ったよ。もちろん後悔はしてない。その子の無事は確認したし、やっぱり渚がいない世界で生きるのは辛いもの。でも気付いたら見知らぬ場所にいて、こんな状況になってるってわけ。色々あって私の家族は転生のことを知ってるよ」
「……………」

 やっぱり大騒ぎだったんだね。それは仕方ないけど、でも……

「なんか色々混乱してるけど……俺はずっと有栖の傍にいるよって、約束したのに。なのに俺の方から離れて、ごめん……ごめんね、有栖」
「渚が亡くなって辛かったのは本当。でもそのことで責めるつもりは一切ないよ。それとね? 渚に話しておきたいことがあるの。嬉しいお話と悲しいお話、どっちから聞きたい?」
「悲しい方」
「分かった。渚が死んだ後、直人くんはすごく自分を責めてたよ。育ちが良いからグレるとは違うけどすごく荒れてて……日に日に衰弱していって、本当に見ていられなかった。お兄ちゃんもすごく心配してた」

 やっぱり……思った通りだった。直人くんには本当に申し訳ない。助けるために動いたことは全く後悔してないけど、俺が生きていればあの子の人生はもっと違っただろうね。悲しませている時点で、俺はあの子の人生を変えてしまっている。

「それから嬉しいお話。限界まで荒れて、その後はちゃんと立ち直ってたよ。渚の分まで頑張るって。それからの直人くんは本当にすごくて、十八歳でご当主様の跡を継ぎ、少しずつではあるけど桜井を良い意味で変えた。目に見えるくらいの変化だよ。それからのことは死んじゃったから分からないけど、直人くんのことはもう心配いらないよ」
「ん……年齢が合わなくない?」
「時間の流れが違うみたい」
「そう……」

 そっかぁ……直人くん、良い当主になれたかな? きっと俺より立派な跡継ぎだったと思うよ。直人くんは俺のことで少し劣等感があるようだったけど、ああいうタイプこそ伸びると、兄として長年見守り続けてきた俺が一番良く知ってる。あの子の人生は俺のせいで歪んでしまった部分もあるだろうけど、それでも前を向けたのなら強くなるだろうね。いつまでも、君とは違う世界から応援しているよ、直人くん。
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