【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜

文字の大きさ
134 / 290
第2章 亜麻色の光

60 氷の城

しおりを挟む
「それで、ナギサのお気に入りの場所っていうのは海上のこと?」
「ちょっと違うかなー。その前にアリス、君もここに立ってみなよ。俺の祝福があるから大丈夫」
「わか……った」

 そっと降ろしてあげると、俺に掴まったまま恐る恐る海面に足をついた。普通はこの時点で沈むから、本当に立っていられるのだと分かると満面の笑みを浮かべた。
 急に嬉しそうな笑顔を向けられ、心臓の音が大きく響いた。一拍遅れて顔に熱が集まるのを感じる。

 ねぇアリス、その顔は反則じゃない? そんな顔するとは思わなかったんだけど……!

「ナギサ?」
「アリスは浮いていたいかもしれないけど俺は沈みたい」
「何言ってるの?」
「なんでもない」

 情けないし恥ずかしいからこんな顔見せられない。そう思ってアリスに背を向けたのに、わざわざ俺の顔を覗き込んできた。アリスって俺をからかうの好きだよね。今のはただ純粋に疑問に思っての行動なんだろうけどさぁ……

「お気に入りの場所っていうのはこれだよ」
「ん?」

 手を置き、扉をノックするように海面を二回叩くと、一瞬で大きな氷の城が表れた。アリスの手を引いて中に入り、そのままバルコニーへ向かう。

「氷のお城。普段は宮のように隠しているんだけどね」
「色々とすごすぎて、何から驚くべきか分からないんだけど……」
「このお城は大したものではないよ。ここが一番景色が良くて、特に朝日と夕日は本当に綺麗に見えるんだよ。だから今日は早起きって言ったの。ほら、そろそろじゃない?」

 まだ朝日が昇る前の時間。ここのバルコニーからの景色は信じられないくらい綺麗に見えるから、いつかアリスに見せてあげたいと思っていたんだよね。

 そろそろ朝日が昇る。今日は天気が良さそうだから特に綺麗に見えるかもしれない。俺が氷の城にしたのは太陽の光が反射してあらゆる景色が光り輝いて見えるから。どうせなら最大限に美しさを引き出したい。アリスは綺麗な景色が好きだから絶対に喜ぶと思う。

「───わああ……!」
「ふふ」
「ナギサ! すごい! 綺麗!」
「でしょ?」

 本気で喜んでくれているのが分かる。想像以上の反応だねー。

 氷でできた城に朝日が反射し、光の当たる角度によってはピンクや紫、青色にも輝いて見える。俺はここから見る景色が本当に大好きなんだよね。春夏秋冬、時間帯によっても見えるものが違って飽きない。景色を見るためだけに城を造ったくらいだからね。
 今日ここにアリスを連れてきたのはただ一緒に見たかったから……ではない。それも嘘じゃないけど、他にも理由はある。

「アリス、遅くなったけどお誕生日おめでとう。今年も君にとって素敵な一年になりますように」
「……え?」
「今世のアリスの誕生日も七月二十八日ってエリオットくんから聞いたよ。もっと早くアリスを見つけられていたら当日にお祝いできたんだけど……」

 サプライズ、と言ってプレゼントを渡す。今世のアリスの誕生日は最近知ったばかりでお祝いするタイミングもなかった。だから今日のように何でもない日になってしまったけど、この景色も一緒にプレゼントってことで、遅れた分は許してほしい。

「あ……ありがとう。開けてみても良い?」
「ん」
「……これ、もしかして」

 手渡した箱を開けたアリスは中身を見て目を見開き、中に入っていたものと俺の顔を何度も見比べる。嫌がっている様子はなく、むしろ喜びが前面に出ているのを見て口角が上がるのが分かった。気に入ってもらえなかったらどうしようかと思ったけど良かった。プレゼントを渡す時はいつも反応が楽しみであると同時に少しだけ怖い。だから喜んでもらえたようで安心したよ。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

「元」面倒くさがりの異世界無双

空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。 「カイ=マールス」と。 よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。

神様の人選ミスで死んじゃった!? 異世界で授けられた万能ボックスでいざスローライフ冒険!

さかき原枝都は
ファンタジー
光と影が交錯する世界で、希望と調和を求めて進む冒険者たちの物語 会社員として平凡な日々を送っていた七樹陽介は、神様のミスによって突然の死を迎える。そして異世界で新たな人生を送ることを提案された彼は、万能アイテムボックスという特別な力を手に冒険を始める。 平穏な村で新たな絆を築きながら、自分の居場所を見つける陽介。しかし、彼の前には隠された力や使命、そして未知なる冒険が待ち受ける! 「万能ボックス」の謎と仲間たちとの絆が交差するこの物語は、笑いあり、感動ありの異世界スローライフファンタジー。陽介が紡ぐ第二の人生、その行く先には何が待っているのか——?

異世界魔物大図鑑 転生したら魔物使いとかいう職業になった俺は、とりあえず魔物を育てながら図鑑的なモノを作る事にしました

おーるぼん
ファンタジー
主人公は俺、43歳独身久保田トシオだ。 人生に疲れて自ら命を絶とうとしていた所、それに失敗(というか妨害された)して異世界に辿り着いた。 最初は夢かと思っていたこの世界だが、どうやらそうではなかったらしい、しかも俺は魔物使いとか言う就いた覚えもない職業になっていた。 おまけにそれが判明したと同時に雑魚魔物使いだと罵倒される始末……随分とふざけた世界である。 だが……ここは現実の世界なんかよりもずっと面白い。 俺はこの世界で仲間たちと共に生きていこうと思う。 これは、そんなしがない中年である俺が四苦八苦しながらもセカンドライフを楽しんでいるだけの物語である。 ……分かっている、『図鑑要素が全くないじゃないか!』と言いたいんだろう? そこは勘弁してほしい、だってこれから俺が作り始めるんだから。 ※他サイト様にも同時掲載しています。

神の手違い転生。悪と理不尽と運命を無双します!

yoshikazu
ファンタジー
橘 涼太。高校1年生。突然の交通事故で命を落としてしまう。 しかしそれは神のミスによるものだった。 神は橘 涼太の魂を神界に呼び謝罪する。その時、神は橘 涼太を気に入ってしまう。 そして橘 涼太に提案をする。 『魔法と剣の世界に転生してみないか?』と。 橘 涼太は快く承諾して記憶を消されて転生先へと旅立ちミハエルとなる。 しかし神は転生先のステータスの平均設定を勘違いして気付いた時には100倍の設定になっていた。 さらにミハエルは〈光の加護〉を受けておりステータスが合わせて1000倍になりスキルも数と質がパワーアップしていたのだ。 これは神の手違いでミハエルがとてつもないステータスとスキルを提げて世の中の悪と理不尽と運命に立ち向かう物語である。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄
ファンタジー
女神に頼まれ魔王を討ち倒したご褒美に、当人の希望通りの人生に転生させてもらった主人公。 赤ん坊から転生スタートします。 コメディ要素あり、ほのぼの系のお話です。 参考図書 復刻版鶴の折り紙・ブティック社

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

転生魔竜~異世界ライフを謳歌してたら世界最強最悪の覇者となってた?~

アズドラ
ファンタジー
主人公タカトはテンプレ通り事故で死亡、運よく異世界転生できることになり神様にドラゴンになりたいとお願いした。 夢にまで見た異世界生活をドラゴンパワーと現代地球の知識で全力満喫! 仲間を増やして夢を叶える王道、テンプレ、モリモリファンタジー。

処理中です...